《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》11.『かな土』を作ろう
栄養剤はできた。大きめの瓶に一本分ある。
そうすると、あとは、やし(うええ……)と、腐葉土を混ぜ混ぜする段階なのである。
私は庭師のダンの所へ行く。
「こんにちは、ダン」
にっこり笑って挨拶する。
「はい、こんにちは。今日は何か用で?」
頭に被っていた麥わら帽子を一度いで挨拶してくれる。
「畑のための良い土を作りたいんだけれど、やしと、腐葉土が必要なの。これってすぐ手にるのかしら?」
私は相変わらず、やし、の所で顔を顰めてしまう。
「ああ、そういえば奧様に、お嬢様の畑作りを手伝うように言われてましたね。そのふたつは簡単に手にりますよ。取りに行きましょうか」
そう言って、ダンは庭道の中から空いた木のバケツをふたつと、シャベルを手に取る。
「じゃあ、まず腐葉土を取りに行きましょう」
私達は、家の裏の森に行くことにした。
森の中。
普段踏みしめている土と違って、足元がらかい。
「こういうのを腐葉土って言うんですよ」
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そう言って、「ほら、ふんわりしてる」と言ってダンは土を何度か踏む。
私も真似て、そのらかいを確かめる。
「腐葉土とは、秋や冬に枯れて落ちた樹木の葉っぱや枝が長い年月をかけて、土狀になったものをいうんです」
そう言って、ダンはしゃがみこみ、足元の葉っぱや小枝を退かした後の、黒くらかい土を手に取って見せてくれる。そこに、ピンクのうねうねく細長い蟲がいて、私は、きゃっ!と聲を上げてもちをついてしまった。
その様子に、ダンは、カッカと笑ってその蟲を摘んで遠くへ放ってくれた。
「お嬢様には気持ち悪く見えるかもしれませんが、こいつらが、この良い土を作ってくれるんですよ」
私は、おしりと手を叩きながら、うん、と頷いた。
「じゃあ、このふんわりした土をバケツにれて帰りましょう」
【腐葉土】
分類:土
品質:良質
詳細:栄養に富んだ良い土。んな生きがイキイキしている。
うん、これなら大丈夫そうね!
五歳のの子には重いだろうと言うことで、作業や搬送はダンがやってくれた。
次にやし……馬糞だ。
廄へ行くと二頭の馬がいて、したばかりの馬糞が何箇所かにこんもりしていた。
臭いのを我慢して馬糞をいくつか見比べてみると、ちょっと様子が違うことに気がついた。
違う品質のものがあるのだ。
【やし】
分類:料のもと
品質:良質
詳細:健康な馬のフン。新鮮。
【やし】
分類:料のもと
品質:低品質
詳細:腹を壊した馬のフン。
【馬】
分類:
品質:良質
詳細:健康な馬。
【馬】
分類:
品質:低品質
詳細:腹を壊している。元気がない。
「ねえ、ダン。この子お腹壊してなぁい?」
馬糞をすくおうとしていたダンが手を止めて、その馬の元へやってくる。
「私は馬は素人ですが……確かに元気がないし、落ち著きもないですね。馬丁へ聲をかけてきますね」
……合が悪いんだったら、馬もポーションで治りそうよね?
私は実験室によって、保管してある『ポーション(普通)』をポケットにひと瓶しまった。
そして、ちょうどテラスにいたお母様に聲をかける。
「お母様、馬が一頭お腹壊しているみたいなの。ポーションあげてもいいかしら?」
あらら、とお母様は頬に手を添える。
「そうね、馬丁に聞いてからにしてちょうだい。それから苦いのはダメよ。多分飲まないわ」
「はい!」
私は、母の言葉に頷くと、そのまま廄にかけていった。
私が廄へ到著すると、ダンと馬丁のアランがいた。
「お嬢様が気づいてくださったんですって?馬の世話を任されていながら、気づくのが遅れてすみません」
お腹の痛い馬の腹をさすってやりながら、アランが私に頭を下げた。
「ううん、いいの。ところで、馬にもポーションって効くのかしら?」
そう言って私はポケットからポーションを取り出してみせる。
「効くには効きますが、腹痛の馬にポーションなんて贅沢じゃないですか?」
アランが思案げに首をかしげて、私の顔と馬を見比べる。
そりゃあ、普段から面倒を見ている馬が苦しいのなら、治してやりたいのだ。
「お母様には、許可を貰っているわ。これを使ってみてちょうだい」
そう言って、ポーション瓶をアランに手渡す。
「ありがとうございます!早速飲ませてみます!」
そう言ってアランは、にポーションを空けて、合の悪い馬へ與えてみた。すると、本能でわかるのか、馬はし匂いを嗅いで確認すると素直にポーションを飲み干した。
ややもすると、耳をプルプル振り、その耳がピンと立ち、機嫌良さそうにアランに顔をり付け始めた。
「おや、効いたのかな。機嫌が良さそうだ!」
アランがにこにこして馬をで返してやっている。
【馬】
分類:
品質:良質
詳細:健康な馬。腹痛が治ってとても機嫌がいい。
うん、治ったみたい。良かったわ!
私とダンは、最初から元気な馬がした馬糞だけを貰って、実験室前まで移した。
……さすがにこの材料は実験室にれないことにしました。
◆
さて、ものは揃って、実験の時間である。今日の実験は実験室の外でやる。
そしていつも通りケイトがいる。……いるのだが。
「それはさすがに発させないでくださいね!」
やっぱり警戒して距離をとっていたらしい。
「私だって馬糞浴びるのは嫌よ!」
失禮な!と思いながら、私は空の大きな木桶の前に立った。
木桶の中に腐葉土をれ、それに馬糞を足す。そして栄養剤を一瓶満遍なく振りかけた。
……良い土になりますように、優しく、丁寧に……
私はの丈くらいある木の棒で、魔力を込めてひと回しする。
【かな土?】
分類:土
品質:低品質
詳細:発酵が足りない。ほとんど材料を混ぜただけの代。
二回三回と混ぜても、結果は似たようなものだった。
ぐるぐると五歳のに鞭打って十回回した時だった。
木桶の中がキラキラる。
【かな土】
分類:土
品質:良質
詳細:発酵は十分。これを畑に混ぜれば、良い作が育つだろう。
やった!完したわ!
その後、お母様にポーションで馬の調が治ったことを伝えると、「じゃあポーション代ね」と言って銅貨十枚をまた頂いた。
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