とある晩。

私は、『錬金で味しい食卓』を居間に持ち込んで、お父様とお母様に相談をしていた。

「陛下に頂いた本なんですけど……お願いした本に加えて、この本がっていて。口にするのは慎まれていても、もしかして陛下はご興味やご期待があって私にこの本をくださったのかなあ、と、思っているんです」

私は前々から気になっていたことを口にする。

「うーん、そうねえ。目新しく味しいものに興味のある人は多いかも知れないわね」

母様も頬に手を添えて一緒に考えてくださる。

「でもなあ、デイジーの『ふんわりパン』はとても味しいけれど、あまりに日常用すぎて陛下に獻上と言うとちょっと違う気もするね」

父様も一緒にうーんと唸って考えてくださる。

「お酒とかはどうかしら？」

ぽんとの前で両手を叩いてお母様が、思いついた！という顔をする。

「ああ、それはいいかもしれないね。陛下もお酒は嗜まれる方だし。確か葡萄酒をお好きだったはずだね」

お父様も、うんうんと頷く。

……うーん、それだと未年の私は楽しめないよ？

「私は未年ですから、味見はできません。なので、お父様とお母様が味見をしていただけますか？」

「「勿論だよ！」」

両親の顔は何故か嬉しそうに見えた。

◆

ワイン用の木樽などを取寄せたりした後のある朝、私はケイトとマーカスを伴って朝市に出かけた。全員大きなかごバッグを持ってきている。々な品種のぶどうを買う予定だからだ。

私とマーカスの朝の予定はずらしてある。畑の水やりはダンにお願いをしてきた。

街の大通りまで來ると、中央の広場を中心に、即席の店が沢山連なっていて賑やかで、私の心も弾む。

「ケイト、マーカス、凄いわ！あんなに賑わって！」

私ははしゃいで広場の中央でくるりとまわる。そして、果を扱う店が集まっているエリアに向かう。

「おや、お嬢さん、なにか探しかい？」

果を持ち込んできたおばさんに聲をかけられた。

「ワインを作りたくて、ぶどうを買いに來たの。なにか向いてるぶどうは置いてある？」

私はおばさんに聞いてみながら、並べられたとりどりの果を見回す。

「だったら、ここの並びの一番奧にいるバッソ爺さんに聞くのが一番いいね」

そう言って、おばさんは、店の並びの奧の方を指さす。確かに、一人のおじいさんがいた。

「ありがとうございます！」

私は教えてもらったお店に移した。

「こんにちは。ワイン造りに向いたぶどうってあるかしら？」

バッソ爺さんと呼ばれた男に聲をかける。

聲をかけられて、おや？と言った顔でおじいさんは顔を上げた。

「……嬢ちゃんが作るのかい？」

不思議そうな顔をしておじいさんは私の顔を覗き込む。

「はい、とても大切な方への贈りにワインを作りたいんです」

私は素直に目的を答えた。

「じゃあ、上等なワインが作れる品種を選んであげよう」

よっこらしょ、とおじいさんが腰を上げて、私がいる店の表側までやってきた。

「カゴを三つ持ってきたから、三種類あると嬉しいわ」

「これは、ペノ・ロワールと言って、ここらの代表的な品種だね。繊細で上品なワインができるよ」

【ぶどう（ペノ・ロワール）】

分類：食材・食べ

品質：高品質

詳細：まさにワイン造りに適したタイミングで収穫された逸品。ワインにすれば、によってスミレのような芳香を放つ上品なワインに仕上がるだろう。開栓は余裕を持って早めにすると良い。

「あとはこれかな……。メロローだ。果や果実味をじるワインができるだろうね」

【ぶどう（メロロー）】

分類：食材・食べ

品質：高品質

詳細：まさにワイン造りに適したタイミングで収穫された逸品。ワインにすれば、らかくなめらかな丸みのある味わいで、ブラックカラントやプラムのような味わいを持つだろう。

「あとは、ワインの王様、ブローロの元になるこのぶどうかな。これは今日特別に取り寄せたものだよ」

【ぶどう（ネッテオーロ）】

分類：食材・食べ

品質：高品質

詳細：まさにワイン造りに適したタイミングで収穫された逸品。ワインにすれば、重厚で王者の風格を持った味わいになるだろう。開栓は余裕を持って早めにすると良い。

うーん、素敵。ワインと言っても、々あるみたい。個的なこの子達でワインを作ってみたくなった。

「おじいさん、そのオススメのぶどうを三種類いただくわ！」

私たちはかごいっぱいになったぶどうを持って、家路についたのだった。……重くって、私はマーカスにし手伝ってもらいながら……。

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