《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》37.デニッシュを作ろう

ミィナと『デニッシュ』を作ろうと約束した翌日、廚房のボブとマリアに確認をとったところ、早速明日にでもという話になり、夕食時に約束をした日の翌々日から『デニッシュ』作りを行うことになった。

參加者は、私デイジーと、ミィナにボブにマリアだ。

まず、バターをのし棒でばさないといけないので、その臺にするツルリとした石の板は冷蔵庫で冷やしておく。パン生地に挾み込むためのバターも一緒に冷蔵庫で冷やしておく。

パン生地と混ぜるバターは室溫に溫めておく。

マリアに足臺を用意してもらって、私がその上に立った。

冷蔵庫で冷やした臺を取りだす。打ちをして、バターは冷蔵庫から出したての冷たいものを使いますっと……。薄く長く叩いて、三つ折りにしてから四角に形します。……って、ちょっと待って、い!無理!そもそも薄く長くなんかならないじゃない!

「ボブぅ。バターばすの、くてできない……」

私は眉を八の字に下げながらボブに早々にヘルプを出す。

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「ハイハイ、お嬢様のお力ではこれは無理ですね。私が代わりましょう」

にっこり笑ってボブが代わってバターをばしてくれた。

……なんかミィナがじぃっとボブの手作業を見ていたけれど、お料理上手なミィナだったらできるの?いや、の子には辛いよね?

ボブは手際よくバターの冷たさを維持しながら形してくれた。

「じゃあこれは、冷蔵庫にれておきますね」

ボブが冷蔵庫まで臺ごとバターをれに行った。

「次からは私がやるわ!」

今度こそ、と鼻息荒く私は臺の上に乗る。

ボウルに小麥と砂糖、塩をれてよく混ぜる。で、バターをれてまたよく混ぜる。で、そこにしの牛とお水、卵、酵母水をよく混ぜたものをれて、今度は手早く混ぜます……と。

そこで、初めて參加のミィナに説明を。

「これが錬金で作った酵母って言って、パンがふっくらするもとなのよ」

そう言って瓶を手渡すと、ミィナは興味深そうに泡立つを覗き込んでいた。

けがなくなるまで混ぜて、臺の上において丸くまとめる。

表面がかわかないように濡れたふきんを置いたら、室溫で一時間くらい発酵させる。

……パン生地作りってこの待つ時間がいっぱいかかるのよねえ。

やっと発酵が終わったら、ガス抜きしてし平らにして、った布地でくるんで冷蔵庫で一晩休ませる。

……長いわ!

次の日はみんな早起きした。太もまだ昇っていない。

デニッシュパンを朝食に出したかったからだ!

まずはいつでも焼けるようにオーブンの準備。

「今日は私がねてみてもいいですか?」

そういうミィナの白いしっぽは好奇心でゆらゆら揺れている。……んー!可い!

と、言うことで、ミィナがやってみたいと言うので、今朝の生地作りはミィナに任せることにした。

ボブとマリアは、こちらの様子を見ながら朝食の用意をする。

昨日ボブにばしてもらったバターと同じ大きさに生地をばしていく。そして、生地の上にずらして、ひし形にバターを置く。

生地でしっかりバターを包んで、長さを三倍にばす。

三つ折りで折りたたんで、角度を変えてまたばす……を繰り返して、生地はやっと完

……って、形を整えたりするのは綺麗だし(私は大雑把)、そもそもなんて言うか作業の手際がいい。料理スキルってこういうところにも差が出るのかなあ。の子らしくて羨ましい。

「結構大変ですねえ」

と言いながらも、ミィナは目新しい調理法?に興味津々なのか、しっぽはご機嫌なじだ。揺れるしっぽを見ているだけでつられて楽しくなってくる。

折り込んだ生地を休ませてあげてから、それを左右がおなじ長めの三角形の形に切っていく。

その生地を、三角形の広い側からクルクルと丸める。

ぜーんぶオーブンの天板に並べたら、またしばらく常溫で休ませる。

った布地をかけるのを忘れずに。

「それにしても不思議な形ですし、薄い生地をクルクル丸めるのになにか意味があるんでしょうかね?」

ミィナが、洗った手を拭きながら、みなが休んでいる廚房のテーブルに戻ってくる。

「せっかくの貴重なバターを大量に練り込んでしまって、どうなるんでしょうねえ」

ボブがし心配そうに呟く。

うーん、ほんとにできるのかな、デニッシュ。

そんなこんなで雑談をしていると、オーブンにれる時間になる。

溶き卵を刷で表面に塗って、やっとオーブンに投だ!

「うわあ!」

焼けるのは、生地の待ち時間に比べたらあっという間だった。

ふんわりと菱形に膨らむ生地。つやつやとしたきつねづいていく表面。漂うバターの香り。

オーブンを覗き込むミィナのしっぽのきが止まらない。

オーブンから出して、一人半分こで味見する。

「うわあ、サクサクです」

味しそうに満面の笑顔になるミィナ。

「でも、中はとってもしっとり」

もっちりとびる中の生地にする私。

「でも生地の表面が手に付いちゃいますね」

そう評価するのはボブ。

「フィンガーボウルをご用意すればよろしいかと。侍長にお願いしてきますね」

マリアはそう言って、エプロンで手を拭って廚房を出ていく。

その頃ようやく起きてきた家族のみなが、廚房から漂う香りに興味を示す。

「今日は朝から隨分といい香りがするね」

とお父様。

「ふんわりパンの香りとも違うわ」

首を傾げるお母様。

「そうです!今日は新作のパンをご披します!」

私の言葉にすぐに反応したのがお姉様。

「『デニッシュ』ね!私楽しみにしていたのよ!」

家族の皆がテーブルの各自の席に腰を下ろす中、私とミィナもエプロンを外して席に座る。

そして、テーブルに並べられた食に、フィンガーボウルが追加される。

「あれ、フィンガーボウルが必要になるようなパンってことかな。初めてだね」

お兄様も興味をそそられているようだ。

そして、焼きたての『デニッシュ』が各自に配られる。

「錬金の本によると、正確には『ペイストリー』というらしいです」

そう言って私は新作パンを紹介する。

「じゃあ、デイジー達の新作を頂こうか」

お父様の一聲で、みなの手がペイストリーにびる。

「おお、サックリと口の中で崩れるな」

かぶりついて一口食べて想を述べるお父様。

「でも、中の生地はこんなにびますわ」

手でちぎって食べるお母様は、その中のもっちりとした生地が目につくらしい。

「バターの香りが口の中に充満するわ!そしてサクサクとした食が素晴らしいわ」

お姉様は、かなりお気にりなようだ。

「生地がこんなに何層にも重なっててすごいな。でも、表面の生地の欠片が手にくっつくから、フィンガーボウルを用意してくれたんだね」

お兄様は、そのパンの幾重にも重なる構造が気になるようだ。

結果、概ね『デニッシュ』は家族に好評なようだ。みなが味しそうに完食してくれた。

私とミィナは、顔を見合わせて、にっこりと笑顔になるのだった。

正確にはクロワッサンですね。

名前をどうしようかと思ったのですが、今後このお菓子パンとかも出したいなあと考えているので、『正確にはペイストリーです』という所を落とし所にしました。

……次回は錬金話を書きたい。

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