《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》52.石化解除薬を作ろう③
いつもの倍です(;´Д`A
コイルが完したので、私は実験を再開することにした。
まずは、マンドラゴラのをみじん切りにして、大きめのビーカーの中にれた蒸留水にれる。
そして、強力解毒ポーションを作った時の要領で、魔道の加熱で水を沸騰させて、十分にからエキスを出す。
【マンドラゴラのエキス】
分類:薬品のもと
品質:高品質
詳細:分は十分出されている。
氷魔法を使ってボウルに氷水を出し、ビーカーをしっかり冷やす。
さて、これに石化の袋とコイルをれるんだけれど……。
魔力注ぐのに失敗して発したら、私は大変なことになるよね。
なんて言うか、ガラスの強度じゃ怖い。
まず、ビーカーより一回り大きい、金のバケツの中にビーカーをれてみた。
そして、マンドラゴラのエキスの中に石化の袋を抜きでそっとれると、袋が溶けて、マンドラゴラのエキスと石化が混ざりあった。
【石化解除薬???】
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分類:薬品というより毒
品質:低品質ーーー
詳細:薬の作に必要な原料が混じりあっているだけの。るな危険!
これから反応させるなら、蓋がないと怖いなあと思って、実験室という名の元離れ兼置小屋の隅っこに積まれている雑多なものを漁った。
すると、綺麗に半分に割れた小さな木のれの蓋が見つかった。蓋はしっかりとい木で出來ていて、厚みも充分にあった。サイズも、バケツの上部を塞ぎきるのに丁度よい。
割れた部分でコイルのくるくるとした部分が顔を出すようにして挾み込み、蓋の下のワイヤーのコの字型にかたどったふたつの先端部分をぽちゃんとエキスの中にれながら、割れた木の蓋で封をした。
念のために持ってきた布の手袋をはめてから、磁鉄鉱を手に取ってコイルの片側から近づけたり遠ざけたりしてみる。こうすることで、ワイヤーの中に『目に見えない何か』が流れるはずなのだ。
私は、磁鉄鉱の『引き寄せる力』を魔力でゆっくり増幅させながら、その作業をそーっとそーっと続けてみた。
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……正直、すごく怖い。心臓の鼓がバクバクしてうるさい。
発する気配はなかったので、蓋を開けてそっと中を覗く。
【石化解除薬?】
分類:薬品を含む毒
品質:低品質ーー
詳細:原料の質がし反応を起こし、僅かながら薬の分に変化している。でもまだるな危険!
「……あ、し出來てる」
私のがほうっと安堵で満たされる。正直、怖くて怖くて仕方がなかったのだ。
まずは、『安全に』を優先して、ゆっくり慎重にやろう。だって、ちゃんと質の反応はできているんだから大丈夫だもの!
私はその日、午後いっぱいを、磁鉄鉱に魔力を注ぎながらかす作業に費やした。
そして、実験室の口のドアの隙間から、オレンジのが差し込む頃、私はもう回數も忘れてしまうほど行った確認作業をした。
【石化解除薬】
分類:薬品
品質:高品質
詳細:石化を解除する効果がある。石化した部分に満遍なく塗布すること。
「できたぁぁ!」
私は、その場で両手でバンザイする。そして、くてっとおんぼろな天井を仰ぎ見る。
「……怖、かったー」
しばらくそのままぼーっとしていると、ふっと思った。
「私が危険な思いをする分、料金上乗せすればよかった。契約金決める見積もりって、もっとちゃんと考えなくちゃいけなかったんだなぁ」
ふう、とため息をついてから、姿勢を正して出來上がった薬を布で濾して、大きめの瓶の中に詰めて栓をした。
「さあ、オリバーさんとお嬢さんをお呼びしなきゃ!」
実験室の片付けをして、私は出來上がった大切な薬瓶を両手で抱き抱えて屋敷に帰った。
その日のお夕飯の後、私はお父様に手ほどきをけながら、自分の手で、オリバーさんとお嬢さんをお招きする手紙をしたためたのだった。
◆
三日後、オリバーさんとお嬢さんのカチュアさんは、我が家へ馬車でやってきた。
「本日は、娘の足を治療する薬を完させてくださったそうで……!」
父親であるオリバーさんは、既に無量といったじだ。ちょっと気が早いんじゃないだろうか。
そして、カチュアさんはオリバーさんに両手を取ってもらい、馬車の階段を降りるのを支えてもらいながら、ゆっくり降りてくる。彼は地上まで降りてくると、使用人から杖をけ取る。左足首以下がかない不自由さを杖で補いながら、オリバーさんの隣に並んだ。
「カチュアと申します。私の足の治療のために薬を調合してくださったとか。本日はよろしくお願い致します」
そう言って頭を下げると、ツインテールにした水の髪がサラリと肩をり降ちる。長は私より頭半分高く、スレンダーな型をしている。気の強そうなしキツめの目つきのだ。
ゆっくりとした足取りのカチュアに歩調をあわせて、私とケイトのふたりで狹い方の客間へと案した。そちらの客間には、一人がけ用のソファの前に、治療用の薬瓶と、タライやタオルを用意してある。そこにカチュアさんに腰かけてもらった。
ちなみに、のカチュアさんには靴下をいでもらうので、父親とはいえ男がいるのもどうかと思い、オリバーさんには別の客間で待っていてもらうことにする。その案は、エリーに頼んである。
「カチュア様、左の靴と靴下をおがせしますね」
そう言って、ケイトが床に屈んで靴をがせ、見た目にも繊細な靴下をスルスルとがす。そして、用意しておいたタライの中に足をおさめる。
さすがに貴族の子の私が、治療のためとはいえ平民のの足にれるのは裁が悪いので、ケイトに手伝ってもらうことにしたのだ。
「カチュアさん、今からしずつお薬を馴染ませていくので、痛いとか何か嫌なじがあったら言ってくださいね」
私がそう伝えると、カチュアさんは、期待からなのか不安からなのか、の前で拳をぎゅっと握りしめながら、こくんと頷いた。
私がお願いすると、ケイトが薬瓶の蓋を開け、とぷとぷと石化している足首から下に薬をかけて行く。乾いた石に薬が染み込んで、黒っぽくが変わる。
タライに流れ落ちた薬を掬っては足にかける作業を繰り返して、石になった部分に満遍なく薬を染み込ませる。
「よく馴染むように、しさすりましょうか」
そう言ってケイトは、薬を掬っては石になっている足にすり込んでいく。徐々に、濃いねずみだった足が薄いねずみに変わっていく。
「し足の表面に弾力が出てきましたね」
れているケイトにはわかるのだろう、表が明るくなった。
「足のも変わってきました!」
カチュアさんの表にも期待で喜が浮かぶ。
ケイトが、足の指先を丁寧にでていき、次第にらかさを取り戻すその指と指の間に、ケイトの指先が挾まるようになった。
「……二年近くかなかった足の指がきましたわ!」
カチュアさんの目が潤んでいる。二年もの間全くかなかった足指がいたのだ。嬉しいに違いない。足指ののは、青白いにまで回復している。
徐々に、徐々に、り込む部位を上げていく。それにつれて、足指の次に足の甲がくようになり、その次には足首がくようになった。ケイトの丁寧な薬のり込みを兼ねたマッサージによって、その可域は徐々に拡がっていき、左足全の足も、を取り戻し始めた。
「足首が……固くてかなかった足首も足の甲もきます!」
カチュアさんは手のひらで口元を抑えている。頬を一筋涙がつたい落ちたのを見て、私はカチュアさんに自分のハンカチを差し出した。彼はそれを頭を下げてけ取って、濡れた頬と目元を抑える。
やがて、左足は、白いにが浮かぶ健康なを取り戻した。
ケイトは、一本一本の指をかし、足の甲をつま先を上に下にかし、足首をゆっくり左回り、右回りと回して確認していく。
「どこか違和ございますか?」
ケイトがカチュアさんの顔を仰ぎ見て確認する。
「ううん、何も無いわ……!何も無いの!私、立ってみたいです!」
カチュアさんがケイトに訴えると、ケイトはにっこり笑ってから、カチュアさんの足を持ち上げてタライをどかし、タオルで足を拭う。
「私がお支えしますから、立ってみましょうか」
ケイトが差し出す両手を、カチュアさんは自分の両手で摑み、ゆっくりとソファから立ち上がる。
そして、一歩、二歩と歩みを進める。足の細々とした関節は適切にき、その歩行を妨げず、作を支えている。
「歩ける……!足がく……!デイジー様!」
カチュアさんが急に私の方に顔を向けて、笑顔全開の顔を見せる。
「……ありがとうございますっ!」
突然カチュアさんがケイトの手を離して、両手を広げて私の方へ歩み寄ってくる。案の定、まだ二本の足でバランスを取る事に慣れない彼は、倒れ込むようにして私に抱きつく。
「危ないですから、ちゃんと歩く練習をしてからにしてくださいね」
私の腕に支えられながら、うんうんと頷くカチュアさんを抱きしめ返す私は、不自由を抱えた人を元に戻してあげられたことに、幸せと達でがいっぱいになった。
その後、一度カチュアさんに座ってもらい、靴下と靴をケイトに履かせてもらう。そして、もうひとつの客間で待っているオリバーさんの元へ向かう。
部屋の側まで來ると、ケイトが先回りして扉を開ける。
「お父様!足が治りました!歩く練習をすれば杖も要らなくなりますわ!」
まだ杖が必要ではあるが、前よりもスムーズに自分の足で歩くカチュアさんが、オリバーさんに歩み寄って石化が治ったことを伝えた。
オリバーさんは、涙を流しながら、その大きなで娘を抱きしめるのだった。
コイルの中に生まれる『何か』は電気です。コイルに磁石を近づけたりするのは『電磁導』です。電気の力を魔力で増幅させて化學反応、の回でした。
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