《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》61.私の【鑑定】はオプション付き!

アナさんは、「師匠なんて呼ぶのはなしだよ!」と條件をつけて笑いながら、それでも私にアナさんの得意分野を教えてくれることになった。

食事會の翌日、店の落ち著く夕方になってからマーカスがアナさんに呼び出され、荷車に乗せて錬金の古い本を何冊かと、錬金釜などの道を持ち帰って來て、まだスペースに余裕のある作業場にそれらを並べてくれた。

その日の夜の事だった。眠ろうと思って、ベッドに腰を下ろし、上掛けをかけようとしていた時のことだ。私の部屋が緑に照らされた。

「久しぶり、デイジー」

私と一緒に眠ろうと、上掛けの中に潛っていたリーフがゴソゴソ出てきて、ピシッとおすわりの姿勢になる。そこにいらっしゃったのは、緑の霊王様だったからだ。

「良い師匠にめぐりあえたようだね、デイジー」

そう言って、優しく私の頬を手のひらででてくださる。私はその手のが心地よく、しばし目を細める。

「はい。アナスタシアさんという方に、まずは金屬の調合を學ぶことになりました」

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ゆっくりとまぶたを開けると、おしげに霊王様が私を見下ろしている。

「君の人生のひとつの節目に、私から祝福として贈りをしよう。デイジー、両手を出して」

促されるままに私は両方の手のひらを差し出す。

霊王様の手から私の手に乗せられたのは、優しいを放つ丸い玉が三つ。

「それから、これからの君の役に立つように、【鑑定】の力をし改良してあげよう」

そう言って私のまぶたを霊王様の大きな手が覆う。

「ではね」

そう言って、霊王様は消えてしまった。

なにかしら、これ。

私は【鑑定】を使ってみる……と、あれれれ。

霊王の守護石】

分類:寶石・材料

品質:最高級

詳細:あらゆる守護の力をめた寶石。そのままでは力は発揮できない。金屬に混ぜると耐腐食が向上する。

気持ち:金屬と混ざって、アクセサリーになりたいな。

……え?の気持ちって何!

私の【鑑定】スキルにおかしなオプションがついた。

「……アナさん、居ますか?」

次の日、私はアナさんのお店に顔を出した。

「おやおや、デイジーから來てくれるなんて珍しいね。何かあったのかい?」

店の奧から、接客カウンターまで顔を出してくれた。

……何かあったかって、そりゃありましたよ。

「ちょっと、多分貴重なものを手にれてしまって……使い方を相談したいんです」

アナさんは、うんうん、と頷くと「じゃあ奧に行こうかね」と言って、私を店の奧にある休憩部屋に案してくれた。

「これなんですけど……」

そう言って私は『霊王の守護石』をポシェットから取り出してアナさんに見せた。

「おやまあ。初めて見る寶石だけれど、実に優しい、だけど強いオーラを持った品だね」

「その寶石は、『霊王の守護石』といって、かなり凄い守護の力をめているらしいんですけど、そのままじゃ力は発揮できないそうです。しかも、金屬と混ざってアクセサリーになりたがっているようで……」

そこまで私が説明したところで、アナさんが理解が追いつかないと言った様子で私の言葉を止めた。

「いやいや、待ちなさいデイジー。あなたは何故この寶石の名前と質を理解していて、しかも、アクセサリーになりたがっているなんて気持ちでもわかっているような言いをするんだい?」

……あ、しまった。アナさんに【鑑定】持っていること説明していなかった。

流石に、師匠にあたる人に教えを乞うのに、私の持っている能力は説明しておく必要があるわよね。そのため、私は【鑑定】のスキルを持っていることと、おまけでの気持ちまで見えるようになったのだということを説明した。

「【鑑定】ってそれだけでも國に仕えることができるようなスキルだし、持っている者は國でも片手の指が余る程度だろう。挙句に、『錬金師』で【鑑定】を持っているなんてとんでもない逸材じゃないか!しかも、気持ちとやらで、素材がどう加工されたがってるかがわかるなんて……いやいや、これはたまげたよ」

あまりに驚きすぎたようで、水を飲みたいと言って、水差しとコップを持ってきて、水を注いで一口飲んだ。

「こりゃあいい、『あの子』と組ませたら面白いものを作ってくれそうだ」

なにかブツブツ言っているけれど、『あの子』って誰の事かしら?

「……アナさん?」

私はそっとアナさんに聲をかけてみる。

「いや、すまないね。こっちのことだから気にしないでいいよ。ところで、その寶石の気持ちとやらは、見ると必ず同じことを言っているのかい?」

「いえ、そこまではまだ分かりません」

「じゃあちょっと試してみるかねえ」

フーム、と呟くと、「ちょっとこっちおいで」と、作業場まで導された。

アナさんは、足元にある戸棚の鍵を開けて、ゴトゴトといくつか金屬のインゴットを取り出して並べた。

「ダメ元だけど、金屬に近づけたら気持ちとやらのメッセージが変わるんじゃないかな、と思ってね。見てもらえるかい?なんて言うかね、私の場合は相のいいもの同士を近づけると、オーラが強くなるとかってじで見えるんだけどね。デイジーの【鑑定】だったらもっとよくわかるんじゃないかと思ってさ」

……【鑑定】以外にもわかる才能を持った人っているんだ。凄いなあ。

「まずは金だね」

「これもいいけど、コレジャナイがある……と言っています」

……コレジャナイって何。

「ふむ。いけそうだね。じゃあ、次は銀」

「私を優しく抱きしめてくれる気がする。好き♡……だそうです」

……いや、する乙なの!?

「おや、だいぶ相が良さそうだね。じゃあ次は白金」

「クールビューティーって好みじゃない」

……好みの問題なの?

「おや、好みじゃないのかい」

アナさんは、なんだか吹っ切れたように、『気持ち』とやらをれてしまったようだ。順応が高いなあ。

「じゃあ次は裝飾品用の金屬じゃないけど……鉄」

「ありえないわっ!」

「ミスリル」

「だから私はアクセサリーになりたいのっ!」

「アダマンタイト」

「違うってばー!」

「オリハルコン」

「……私を何にしようとしているの?(涙)」

……寶石を泣かせてしまった……。

「ふむ、守護系の石だから、破魔の守りの力がある銀が相がいいのかねえ」

一通り確認して、この寶石と銀を混合させることに決まったのだった。

いつも、誤字訂正や想、ポイントをくださったりと、応援ありがとうございます(。ᵕᴗᵕ。)

読者様からのご意見により、語のいちばん頭に登場人一覧を追加しました。

皆様のご參考になればと思います。

ネタバレも含みますので、読む際にはご注意ください。

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