《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》62.初めての金屬調合

「じゃあ、銀とこの寶石で金屬の調合をしてみようかね。錬金釜がいるから、デイジーの工房に行こうかね」

そう言うと、アナさんは口の扉に『アトリエ・デイジーに居ます。用の際は、そちらにお聲がけ下さい』と書かれた、案プレートを吊り下げて、銀のインゴットを持って、戸締りをしてから場所を移することにした。

……このプレート、準備いいなあ。

でも、弟子としてれてもらえてるようで、何となく心がほっこりした。

そして、道路向かいの反対側にある私のアトリエに帰ってきた。

パン工房は、お晝時ということもあって、品定めをしているお客さんで賑わっている。そして、し日差しの強い日なので、アイスティーとともにパンを店で食べている客もいる。

「「デイジー様、アナさんおかえりなさい」」

パン工房のほうで仕事をしていた、ミィナとマーカスが聲をかけてくれる。

「「お、デイジーじゃん!久しぶり!」」

お客さんの中に、王都がベヒーモスに襲われた時に戦した二人組の冒険者、レティアとマルクが居た。

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マルクが想良く、よっと手を掲げて挨拶してくる。レティアは相変わらずしぶっきらぼうで、を振りまく用さはないみたい。しかも、再會よりもパン選びに忙しいみたい。

「お久しぶりです、レティアさん、マルクさん」

私が挨拶を掛けると、アナさんも會話にじってきた。

「レティアにマルク。仕事は順調かい?」

あ、アナさんとも知り合いだったのかあ。王都って広いようで狹いのね。

「……んー。けたい依頼があるんだけど、ちょっとばかし厄介な狀態異常攻撃持ってるやつの討伐でさー。手が出せないんだよね」

頭をポリポリと掻きながら、マルクが答える。

「だったら、もうし待てば、このデイジーと鍛冶師の『あの子』がいいもん作れるかもね」

そう言って、アナさんがマルクに茶目っ気のあるウインクをした。

……ん?また『あの子』?

「おっと、マジ?じゃあ、しばらくはここを拠點にしとくかな。あ、アナさん、俺らの宿屋ココね。なんか朗報あったら連絡ちょうだい。今、金は余裕あるから、いいもんだったら真っ先に聲掛けて!」

そう言って、マルクがアナさんに紙切れを手渡すと、レティアの買いも済んだようで、二人は街の雑踏の中へ消えていった。

「デイジー、待たせたね。じゃあ、調合をしようか」

私は「はい」と答えて錬金工房の口の鍵を開け、扉を開く。そして、そのままアナさんとふたりで錬金釜の置いてある作業場まで歩いていく。

「デイジーは錬金釜は扱ったことはあるかい?」

アナさんに問いかけられて、私は首を橫に振って「ううん」と答えた。

「まず基本的な合金の作り方はね、混ぜる素材を錬金釜の中にれて、そこにある攪拌用の棒に魔力をうんと注ぎ込むんだ。そうすると、金屬が溶けるくらいものすごく熱くなる。そうしたら、違う質が均等に混ざって、強く結合するように念じるんだよ」

あとこれっと……と言いながら、アナさんが、部屋に無造作に置かれていた分厚い生地で出來たエプロンと分厚い手袋を渡してきた。私はそれらをにつけて、撹拌棒を握りしめて錬金釜の前に立つ。

「じゃあ、霊王の守護石と銀を釜の中にれて」

指示されたとおり、そのふたつを錬金釜の中にそっとれる。

魔力を込めて、うんとうんと熱く……!

そう念じながら暫く攪拌棒を握っていると、釜の中が熱くなって銀が溶け始め、作業室の部屋の空気も暑くなってくる。暑さと張でじんわりと私の額が汗ばんでくる。

一緒になあれ、一緒になあれ……。

攪拌棒を掻き回すけれど、【鑑定】の目で見ると、結合度が足りないようだ。

【ガーディニウム】

分類:合金・材料

品質:低品質

詳細:あらゆる守護の力をめた合金。守護の力は分量によっての変化はない。だが結合度が低く、守護の力を発揮しきれないだろう。

気持ち:もっとぎゅっと抱きしめあいたい!

……私の仲人してるのかな……。

ん?でも、『ぎゅっと抱きしめる』なんだよね?そんなイメージで想像したら上手くいくかしら?

……ぎゅっと抱きしめられる……。

殘念ながら私は子供で男とのそんな経験は無いので、お父様にぎゅっとされるイメージを思い出しながら撹拌棒を丁寧に回し続けた。

すると、錬金釜の底の方から強いが溢れてきた。

「よし、一度で覚を理解できるなんて、上出來だよ!」

アナさんが、私の背中を労わるようにぽんと叩いた。完のようだ!

あとは、錬金釜の底の方に栓があるから、インゴット用の型を下に置いてから栓を開ける。すると、銀よりも一段階明るいでキラキラ輝く狀の金屬が型に流れ出てきた。

「あとは、これをゆっくりと冷やすだけだね!」

アナさんも、できたものの質が長年の経験でわかるようで、満足そうに頷いている。

【ガーディニウム】

分類:合金・材料

品質:最高級

詳細:あらゆる守護の力をめた合金。合金化したことで耐腐蝕を得た。守護の力は合金の使用量によって変化はしない。

気持ち:もうずっと離れない♡

……でもさあ、合金作りって縁結びとかそういうものなの?

初めて合金の調合に功した私は嬉しかったが、【鑑定】で謎の乙心だか心を見守り続けた私の心は複雑だった。

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