《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》63.天才鍛治リィンと、高貴な方々の低レベルな爭い

「じゃあ、これ持って鍛冶師の所に行こうかね」

初めて作った『ガーディニウム』は、すっかり熱も冷めて落ち著いている。

それを見計らったように、アナさんが私のアトリエにやってきた。

「うーん、もしかして前からアナさんが言っていた、『あの子』ですか?」

私は何となくそんな予がして、アナさんに聞いてみた。

「ああ、そうそう!ドワーフの鍛冶師の知り合いの孫娘なんだけどね、デイジーみたいにまだ若いのにいいものを作るんだよ!」

なんて言うか、子供のようにワクワクしているといった気持ちが伝わってくるくらい、アナさんのテンションは高い。

「ミィナ、マーカス!デイジーをちょっと借りてくよ!」

……行くのは決定事項なのね。いや、いいんだけど。

「はーい!行ってらっしゃい!」

二人に見送られて、私たちは「ガーディニウム」を持って、鍛治職人地區まで足を運ぶことになったのだった。勿論、リーフも一緒に。

鍛治職人地區は、とても活気に溢れた街だった。

Advertisement

カンカンとあちこちから響く金屬を鍛える音。男たちの掛け聲に、気な鍛治職人達の歌も聞こえる。

パッと見、人種的には人間とドワーフ半々といったじである。

ちなみにドワーフというのは、一般的に背が低く筋質な、鍛冶や戦闘を得意とする種族である。職業柄、鍛冶神や火の神、大地の神を信仰する。そして、世に生み出された名品、伝説的な寶剣、寶飾品などは、彼らの手で生み出されたものが多いのである。

そんな鍛治職人地區の中の端の一軒の鍛治工房の口で、アナさんは足を止めた。

「ドラグかリィンはいるかい?」

扉の向こうに聲をかけながら扉を叩く。すると、側から扉が開いて、中から私と同じぐらいの背丈のが姿を現した。真っ赤な髪のをポニーテールにまとめていて、瞳も同じガーネットの子だからか、あんまりドワーフの『ガタイの良さ』はじない。そしてなぜ同じ背丈なのに、かながそこにあるのか……。私はほぼつるっぺたなのに!

「あ、アナばあちゃんか。じーさんは出かけてるよ。なんか用事かい?」

「いや、ちょっといい素材ができてね。この子、デイジーっていう錬金師なんだけど、この子がいい仕事をするのさ。だから、品見せがてら、二人を會わせようと思ってね」

そう言って、アナさんが私の背を押して押し出す。

「錬金師のデイジーって言います。最近アナさんに合金の作り方を教わってます」

私はペコッと頭を下げて挨拶をした。

「アタシはリィン。ドワーフで鍛治職人してる。背はほとんど同じっぽいけどこれは種族のせいね、もう十八歳の人だから!アクセサリーなんかの細かいもんでも、剣や鎧でもどっちもいけるぜ。よろしくな!」

リィンは快活に自己紹介して握手を求めて、手を差し出してきた。手を差し出すと、力強く握り返されてブンブンと手を振った。

「ちょっと特殊な素材だから、中にらせてもらうよ」

そう言うと、アナさんはさっさと慣れた様子で工房っていく。私もアナさんを追いかけるようにして中へお邪魔した。

……が、工房にみんなって扉を閉めたと思ったその時、リィンのが黃金に、私のが緑に輝き出した。

「これは一何事だい」

間に挾まれた形のアナさんが驚いて私たちを互に見る。

私の背後には、いつも見なれた優しげな長髪の男の姿の緑の霊王様が。そして、リィンの背後には黃金に輝く筋質で短髪の格のいい男が姿を現した。

「よう、緑の。相変わらずお前はその子供にくっついて歩いてんのか」

黃金の人が緑の霊王様に話しかける。

「土の霊王……あなたも相変わらずそのドワーフの娘にご執心だとか?」

なんと、リィンには土の霊王様が付いている……というか、し子なのかな?

「えっと、デイジー、アンタも霊王のし子なのか?」

『アンタも』ということは、リィンもなのだろう。し子同士、正直に打ち明けることにした。

「……うん、緑の霊王様にご加護をいただいてるわ」

っていうか、霊王様が出てきちゃってたら隠しようもないじゃない!というか、アナさんが腰を抜かして床にお付いちゃってるし!ってことは、アナさんにもバレちゃうよ!

ところがそんな心配を他所に、高貴な方々は勝手に舌戦を始めている。

「ドワーフの娘とか言うな、リィンと言うらしい名前があるんだ!それにただのドワーフじゃない!今は亡きドワーフ王國の王族の筋なんだ!」

土の霊王様が拳を握って呼び方の訂正を求める。あとは、リィンは亡國の王様かもしれないのかな?

「私のし子だって、デイジーという可憐な花の名前を持つ優秀かつ伝統ある貴族家の娘だ。賢く研究熱心で、我らの眷屬のものを慈しむ優しさも持ち合わせているんだぞ」

緑の霊王様に至っては、なんだか私の自慢を始めている。

「リィンだってうちの眷屬に優しいぞ!それにな、真剣に金屬を鍛えている時の額が汗ばんだ橫顔は神々しいくらいだ!」

「だったらうちのデイジーだって、調合する時の悩み抜いた末に出來上がった瞬間のあの笑顔……とても可らしいんだ!」

そして、リーフも、おそらくリィンの守護獣なのだろう、明るい茶の子ライオンと、「ウーッ!」「ギャーウ!」と睨み合っている。

……えっと。なんだろう、この騒ぎは。

高貴な方々の舌戦は延々と続き、だんだん低レベルなうちの子可い合戦になってくる。

「ちょっと!土の霊王様、そんなところ見てらしたんですか!」

親方であるお祖父さんに怒られて泣いたりとか、ちょっと恥ずかしいシーンを暴されて真っ赤になって慌てるリィン。

「緑の霊王様、その時いらっしゃったんですか!?」

私もお母様に叱られたり、実験中の変な顔したりしているところまでバッチリ把握されていることを知って、抗議する。

「「そこまでの覗きは止です!!」」

し子たちの苦が挾まってきたので、ようやくうちの子可い合戦が終了した。

「ン、コホン。そういうことで、リィンとモノ作りすると面白いモン出來ると思うから。うちのリィンをよろしくな!」

そう言い殘して消えていく土の霊王様。

「まあ、そういうことです。私のデイジーと協力することで、良いものが作れるでしょう。リィン、デイジーと仲良くしてやってしい」

そう言い殘してやっぱり消えていく緑の霊王様。

そして、好き勝手に騒ぐだけ騒いでいった高貴な方々に取り殘される三人なのだった……。

「「あ、覗き止って約束してもらってない!!」」

し子たちは後になって気がついた。

明日は真面目にアクセサリーづくりの検討をします(´ー`A;)

    人が読んでいる<【WEB版】王都の外れの錬金術師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください