《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》64.守護の指と高貴な方々の暴走(再)

霊王様たちが去って、私たちは暫し呆然とする。

アナさんなんか、まだもちをついたままだ。

霊王様のお姿を拝めるなんて、しかも二柱も……」

アナさんは手を合わせる。

「にしても、似たような二人だと思っていたら、どっちも霊王の寵持ちだなんて。どうりで二人とも似たような雰囲気を持っているわけだ。いやあ、二人が手を組んだら面白いことになりそうだね!」

アナさんは不敵な笑みを浮かべると、よっこらしょ、と起き上がる。

「……ン、なんか霊王様達に振り回されたけど、アタシに何か見せたくてきたんだろ?」

リィンも、先程の騒ぎから気を取り直したのか、本題に戻ってくる。

「そうそう、いい合金ができたんだよ!ほら、デイジー見せてやって」

アナさんに促された私は、ポシェットの中からインゴットを取り出した。

そうそう、このお気にりのポシェット、アトリエ建設期間に、大枚はたいて容量増加の空間魔法と時間停止の魔法を付與してもらったので、インゴットでもらくらくるのだ。しかも、どれだけれても中の重さはじない優れだ。

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『ガーディニウム』のインゴットを私からけ取ったリィンが、目をまん丸くする。

「ちょっとばあちゃんにデイジー、これ凄い代だよな。中にめてる守護の力がものすごいんだけど……これ、國寶級のもの出來ちゃわないか?」

……うーん、どうせ緑の霊王様もさっきいらしたし、いいかな。

「それね、緑の霊王様に頂いた『霊王の守護石』と銀を混ぜたものなのよ。多分につけて離さないようなアクセサリーにすると、いいんじゃないかなって思うの」

そして、ついでに鑑定で確認した『分割しても効力は下がらない』ことも付け足した。

「うんうん、なるほどね。そうするとペンダント、指、ブレスレット……いや、指だな。利き手じゃない方につければ邪魔にならないだろうし。結構數出來ると思うけど、デイジーはいくつしいの?」

あ、そういえば考えてなかったな。

「……約束してるマルクとレティアでしょ。家族にもしいし……、そしたら陛下一家にも獻上した方がいいよね」

私は思いつく順で対象を挙げていく。

「うちのじいちゃんと、アナばあちゃんの亡命組にはしいなあ。あとは、アタシもしいな。國が保護してくれているとはいえ、備えを強められるに越したことはないし。萬が一にでもシュヴァルツブルグ帝國に手出されたら困るからね」

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シュヴァルツブルグって、アナさん達が出してきた一つ國を挾んだ國だね。それは必要だろうな。

「そうすると全部で十四個ね。そうだ、大きな力がある裝備品が沢山ありすぎると、先々悪い人の手に渡って悪用されたりしないかな?」

私が、『凄い裝備品』を作ることについて躊躇いがあることを口にしてみる。

すると。

「ふっふっふ」

リィンがニヤリ、と自信ありげに口の端を上げて笑う。

「そこが、リィンの『特別』なところの見せどころだね」

同じくアナさんもニヤッと笑う。

「んー、これでいいかな。これ、なんの付與もないバングルね」

……ん?付與?

そう言って、リィンが工房の作業テーブルに無造作においてあったバングルを持ってくる。

そして、バングルの側を指でなぞってなにかブツブツと唱えた。

「この文字が見える?」

「なんか、文字っぽいものが刻まれたわね。でも、これ見た事もない文字だわ」

そう、リィンが指でなぞったあとには、バングルの側に謎の文字?が刻まれていた。

「これね、ドワーフ王國の古代文字を當時の古代魔法で付與してあるんだよ。ちなみに意味は、『悪しき心を持つ者には効力を発揮せず』だよ。しかも、この古代の付與魔法を理解しているのはアタシだけのはずだから、解除もほぼ不可能って訳。解除するには、私と同じようにこの古代文字と古代魔法を理解していることが必須なのさ」

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そう言って、リィンはパチンとウインクする。

「リィン、素晴らしい力だわ!!」

思わず私は、ぐっと両手の拳を握る。

リィンの凄い能力に、私は尊敬でキラキラした目で彼を見つめる。すると、「照れくさいからやめろ」と笑って頭をポンポンとされた。

「じゃあ、このインゴットから指を作るってことで。仕上がったらばあちゃんの所に持っていくから、ちょっと待ってな」

決め事も済んだので、私とアナさんは、帰宅したのだった。

そして、一月ほど経ったある日、私のアトリエの扉が來客を知らせるドアベルの音と共に開いて、アナさんとリィンが訪ねてきた。

「よっ!デイジー久しぶり。ちょっと細工に凝っちゃって、日數かかって悪かったな。例の指出來上がったよ」

そろそろ初夏の気だったからか、外から來たリィンが額に汗を滲ませている。

「いらっしゃい、リィンにアナさん!がものだから、二階の居間で話しましょう、中って!」

私はそう言って、上り階段を二人に指し示す。

私は一度廚房へ寄って、今日パン工房で提供しているさくらんぼの冷えた果実水を三つトレーに乗せて、後から階段を上がっていった。

「座って座って。外暑くなってきたでしょう、良かったら飲んでください」

そう言って、グラスを三つテーブルに乗せた。リィンとアナさんと私は椅子に腰を下ろして、グラスをそれぞれ手元に引き寄せた。

「あー生き返る!」

リィンはやはり暑かったらしく、一気に半分ほどを飲み干していた。

「で、本題ね」

一息ついて、リィンがウエストバッグから作り上げた指を出してくる。予定通り全部で十四個。表面には、ツタのような植がぐるりと一周彫り込まれ、上品でしいデザインになっていた。

「サイズははめたい指に自で合うようになってるよ」

リィンが補足説明を加える。

【守護の指

分類:裝飾品

品質:最高級

詳細:あらゆる狀態異常を防ぐ。時間経過とともに裝備者の力を徐々に回復する。特殊な付與により悪意を持った人間が裝備しても効果は発揮されない。

気持ち:いい人ににつけて貰えるといいな!

……これはまた凄いができたわね。

この顔ぶれなら、鑑定のことも理解しといてもらっていいか、と思ったので、鑑定で見た結果を二人に伝えた。

「そりゃまた凄いものが出來たね!これはマルクとレティアも絶対しがるね。連絡してやらんとな」

アナさんは、品の出來に大満足なようだ。

「ねえアナさん、あの二人だけに買わせてあげたら、他の冒険者がずるいって言わない?」

私は気になっていた事をアナさんに質問した。

「ああ、デイジーはあの二人のことをよく知らないんだね。あの二人はね、この國の守護者みたいな存在なんだよ」

代わりにリィンが説明してくれる。

冒険者というものには、SランクからFランクまで実力によって區別されている。勿論Sランクが一番上だ。Sランク冒険者というのは世界に三人しかおらず、しかも大抵様々な國の要人や冒険者ギルド本部からの特殊な指名依頼をけて、難易度の高いクエストをこなしており、どこにいるのかも知られて居ない。一般人にはまずお目にかかることの無い遠い存在である。

レティアとマルクはその次のAランク冒険者で、この國の國王や領主、國の冒険者ギルドから指名依頼をけて、その地域では退治できない魔獣などを倒してくれるため、この國の守護者的立場なのだという。勿論、個人的な自由行をすることもあるが。

うーん。二人が國の守護者?じゃあ私のお父様は二人より弱いのかなあ、とちょっと引っかかった。憧れのお父様のことだから、そこに引っかかっても當然だと思う。

「うーん。それじゃあ二人は國の騎士団や魔導師団の人より強いの?」

ちょっとをとがらせて、リィンに尋ねた。

「どちらがって言うより、適材適所じゃないかな。相手によって相もあるからね。騎士団や魔導師団の上位の人はAランク相當の実力の持ち主だって聞いてるよ」

そのリィンの説明に、私はほっとで下ろす。

「ところで、お金のことはどうしよう。そもそも霊王様にいただいた寶石とアナさんが持ってた銀のインゴットから出來ただけだから、ほとんどタダで作ったようなものなのよね」

私は腕を組んで首を捻る。

「國王陛下ご一家は獻上するとして、お互いの分とそのの分は、二人で作ったんだから特に料金なしでいいんじゃない?……っと、素材持ち込みなのに勝手にこっち分貰いたいみたいなこと導しているみたいで、図々しかったかな?」

リィンが慌ててそういうので、首を振る。

「アナさんは私の師匠だし、リィンはこれから私のパートナーになってくれる人。そのお祖父さんっていったら、みんな私の大切な人だから問題ないわ!それに、リィン達が前の國に拐されたら、また戦爭とかに力を使われそうだし……そうなったら大変でしょう」

それに、そもそもリィンの特殊な付與があるから、私はこのインゴットをアクセサリーにしようと思えるのだ。

「あとは、マルクさんとレティアさん、かー」

なんか二人だけに料金請求するのって、なんだろうなあと、しかも立場は違えどお父様のように、この國を守ってくれている守護者さんだしなあ、と、値段をつけるのを躊躇っていたその時。

「それなんだけどさ。私たちって、素材採取に行かなきゃならない時あるじゃない?その時の無料護衛依頼権しかも無期限で、って言うのはどうかな?あの二人の指名料もなかなかいい値段するからさ!」

「リィン!頭いい!」

私はぎゅっとリィンの手を握った。

「じゃあ、アタシ達三人はさっさとにつけてみよっか!」

私とリィンとアナさんが、特に意識するでもなく左手の中指に揃って指をはめようとした時の事だった。

背後が、緑と黃に神々しくった!(デジャヴ)

「デイジー、私があげた寶石から作った指だよ?はめるなら左手の薬指がいいんじゃないかな?」

「そうだリィン!俺たち霊王の守りの指だ、し子なら當然左手の薬指だよな!誓いの印だ!」

一ヶ月前に散々騒いだ高貴な方々の聲が背後からした。

……左手の薬指って、お父様とお母様がお揃いの指をしている指だよね?どうして私がその指に指を嵌めるべきなんだろう?

「せ~い~れ~い~お~う様達~!!」

リィンが、ガタンと立ち上がって霊王の二柱様達に向かって立つ。

「それじゃあ婚約指か結婚指みたいじゃないですかっ!」

リィンは怒りで真っ赤になっている。霊王様にも強気ですごいなあ。

「……デイジー、私のために左手の薬指にはめないかい?」

「……ちょっと仰っている意味がよく分かりません」

どうやらリィンの言葉通りならとても大事なことのようだ。なので、私は子供らしく、よくわかんないですってじにニッコリ笑って首を傾げた。

「……リィン」

「……卻下」

こちらは即斷だった。

そして、無にも霊王様達の目の前で、三人揃って仲良く左手の『中指』に指をはめた。

「「じゃ、じゃあ私(俺)のの証だけは刻んで行くっ!」」

お二人がそう宣言すると、私とリィンが『中指』にはめた指を二柱の霊王達が、それぞれ指先でれて何かを唱えた。すると、私には緑の石が、リィンには黃の石が付與された。

そしてお二人は満足そうに消えていった。

【緑の霊王の守護の指

分類:裝飾品(デイジー専用)

品質:超最高級

詳細:あらゆる狀態異常を防ぐ。時間経過とともに裝備者の力を徐々に回復する。特殊な付與により悪意を持った人間が裝備しても効果は発揮されない。さらに寶石の力によって、攻撃をけた際に自理障壁と魔法障壁を展開する。

気持ち?:デイジーは私のものだっ!by緑の霊王

【土の霊王の守護の指

分類:裝飾品(リィン専用)

品質:超最高級

詳細:あらゆる狀態異常を防ぐ。時間経過とともに裝備者の力を徐々に回復する。特殊な付與により悪意を持った人間が裝備しても効果は発揮されない。さらに寶石の力によって、攻撃をけた際に自理障壁と魔法障壁を展開する。

気持ち?:リィンは俺のものだっ!by土の霊王

……とんでもない進化させて行った。

しかも霊王様、ものの気持ちをメッセージ欄として奪っているような。だって『?』付いちゃってるし。

このメッセージまで、リィンに教えてあげた方がいいのかなあ。

……あ、そうだ!実家に連絡して集まってもらわなきゃ!それと陛下にも謁見の申しれしないとね!

出さないつもりだったけど、やっぱりでてきた方々(´ー`A;)

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