《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》67.霊王様へのプレゼント②
さーて!まずは私の番よ!
私は自分のアトリエの実験室にって、気合をれる。
合金づくりのための、エプロンも手袋もバッチリ裝備済み!
錬金釜にミスリルと『幸運の石』をれて、攪拌棒をぎゅっと握りしめる。
『みんなを幸せで素敵な笑顔にできる金屬になってね……!』
瞼を閉じて、しばらく祈りを込める。
そして、ぱちん、と目を開いた!
「さあ!始めるわよ!」
魔力を込めて、うんとうんと熱く……!
そう念じながら暫く攪拌棒を握っていると、釜の中が熱くなって銀よりも時間がかかったが、ようやくミスリルが溶け始め、錬金壺の中でぐるぐるとかき混ぜ始めた。
「さあ、一緒になって……!」
【フォーチュニウム】
分類:合金・材料
品質:低品質
詳細:幸運を呼び込む力をめた合金。その力は分量によっての変化はない。だが結合度が低く、幸運の力を発揮しきれないだろう。
気持ち:ちょっと混ざり合いがないかな……もっとそばにいたい。
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……うん、まだ溶けて混ぜただけだもんね。もっと一緒にしてあげるわよ!
【フォーチュニウム】
分類:合金・材料
品質:中級品
詳細:幸運を呼び込む力をめた合金。その力は分量によっての変化はない。幸運の力を充分発揮できるが、もう一段階上を目指せるはず!
気持ち:ミスリルさんと一緒に大人の階段を上りたい!
……うん、あともう一歩!めてる可能を私にみせて……!
そうしてぐるっと攪拌棒をもうひと回し。
【フォーチュニウム】
分類:合金・材料
品質:高級品
詳細:幸運を呼び込み、不幸を退ける力をめた合金。その力は分量によっての変化はない。持ち主に災いが振りかかろうとすると、自然と持ち主を回避行へと導する不思議な合金。
気持ち:僕達といれば悪いものなんて寄せつけないよ!
「やったあ!完したわ!素材の可能までちゃんと引き出せたし、バッチリね!」
私は達に両腕を腰に當てて仁王立ちする。興でし鼻息が荒く、頬も紅している。
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錬金釜の栓を抜いてまだ熱い狀の合金をインゴット型に注いで、靜かに數日待った。
◆
インゴットをリィンに渡して二週間。出來上がった品を持ってリィンが私のアトリエを訪ねてきてくれた。
「やあ、デイジー!仕上がったから屆けに來たよ!」
そう言って、ドアベルを鳴らしながらアトリエの中にってくる。
「じゃあ、二階で見ようか!飲み持ってくるから、先行って座ってて!」
今日はスモモの果実水。キーンと冷えたそれをグラスにふたつトレーに乗せて二階へ向かった。
二階のダイニングに著くと、グラスをテーブルに乗せて、向かい合って腰を下ろす。
お互い、一口グラスに口をつけてを潤す。キーンとした冷たさとスモモの甘酸っぱいじが口をスッキリさせてくれる。
「ふう。っとそれでね、こんなじにしてみたよ」
指が石違いでふたつ。私たちのよりも多めに金屬を使って、太めのデザインになっている。
「男向けだからね、揃いだけどし太めにしたよ」
私は、緑の石の著いた方の指を手に取ってみる。違う素材でできているけれど、金屬の合いはほとんど同じだし、彫られたツタのデザインも一緒。私の中指の指と並べると、『お揃い』ってじで大満足な仕上がりだった。
【幸運の指】
分類:裝飾品
品質:高級品
詳細:幸運を呼び込み、不幸を退ける力をめた指。持ち主に災いが振りかかろうとすると、自然と持ち主を回避行へと導する不思議な指。
気持ち:幸せにしてあげる!
「呼ぶ?」
「そうしよっか!せーの!」
「「霊王様~!」」
聲を揃えて呼ぶと、部屋が緑と黃金のに包まれた。
「デイジー!」
「リィン!」
そして、霊王様達がお姿を現した。なんだかお二人共、手が中途半端に上がっていて私たちのの幅ぐらい空いていて、そこでぷるぷる震えている。
……えっと、抱きしめたいけど躊躇い中、かな?
私は、手に持っていたお揃いの指を手のひらに乗せて、霊王様にお見せする。
「私が霊王様へプレゼントしたいと思って作った指です。け取っていただけますか?」
そう言って、指から緑の霊王様に視線を向ける。霊王様はそれはそれは幸せそうな笑顔で私を見下ろしていた。
「勿論け取らせていただくよ、デイジー。與える側の立場の私達が、し子から贈りを貰えるなんて、私はなんて幸せものなんだろう。その指は、デイジーがはめてくれるかい?」
こくんと頷いて、霊王様の差し出された左手を手に取る。
「お揃いなら、同じ中指で揃いがいいですよね」
そう言って、するりと、霊王様のなめらかな中指に指を通して収めた。
「ありがとう、デイジー」
そっと霊王様のがこめかみにれ、髪のを通して伝わるぬくもりに、霊王様の溫かさをじた。
親のキスが済むと、お互いの左手を並べて、お揃いであることを確認する。
ふっと目線をあげると、リィンと土の霊王様も手を並べあって同じことをしていたので、四人の目が合って、ちょっと気恥しげにみんなで笑った。
ほんのりと幸せな空気に包まれていた。
◆
その後、リィンに指とペンダントの制作料と、私が合金に使った材料費と工賃を算してから、リィンはアトリエをあとにした。
後に殘ったのはこの三つ。今日はちょうどカチュアが経理のチェックに來てくれていて、今は食事休憩中でパン工房のテラス席で食事中のはずだ。
【幸運のペンダント】
分類:裝飾品
品質:高級品
詳細:幸運を呼び込み、不幸を退ける力をめたペンダント。持ち主に災いが振りかかろうとすると、自然と持ち主を回避行へと導する不思議なペンダント。
気持ち:幸せにしてあげる!
こっちのペンダントは小指の第一関節くらいの小さなぷっくりと厚みのある楕円狀のペンダントトップになっていて、そこに彫りで流れ星と三日月が描かれた可らしいデザインになっている。ペンダントトップの上の丸い金はし大きめで、今はチェーンが通っているが、取り外し可能でチョーカーにもブレスレットにもアレンジが可能なようにしてくれてある。
絵柄については、『幸運のペンダント』から、願いを葉える流れ星の絵が浮かんだからって理由らしい。
私たちの年頃の子がつけるなら、男問わずとても似合いそうだわ!
「ミィナ!マーカス!カチュア!プレゼントを渡したいの!」
客が引いたパン工房に揃っていた三人に聲をかけた。
ミィナとマーカスは、目をぱちくりしている。
「えっと、私たちは使用人ですから、そんなお気遣いをしていただく必要は……」
慌ててミィナは両手をぶんぶんしている。
「そうですよ、デイジー様。私たちは相応以上にお給金も頂いておりますし、そこまでしていただく立場ではありません」
マーカスもし困ったような顔をする。
「あのね、これは災いを遠ざける幸運のペンダントなの。あなた達にお使いやお留守番をお願いした時に何かあったら私が困るの。だから、私のためにもちゃんとにつけておいてしいのよ」
「デイジーさまぁ~!ミィナは幸せ者ですぅ~!」
ミィナは激したのか目がうるうる、鼻をグズグズ言わせながら、素直にペンダントをけ取って、首にかけてくれた。
「私も……よろしいので?」
「何言っているの、あなたも私の大切な仲間よ」
そう言ってマーカスの手に渡すと、マーカスもし照れた様子でペンダントをにつける。耳元がほんのり赤くなっている。
「そして、カチュア。あなたのおかげでアトリエも始められたし、その後の経営もバッチリよ!幸運のペンダントは、幸運を呼び寄せる力があるから、貴がやろうとしている事業にもきっと良い結果をもたらすはず!け取ってちょうだい!」
そう言って、最後の一個になったペンダントをカチュアに差し出す。
「私は専任の従業員という訳でもないし……いただけないわ。ちゃんとこうしたものには代金をお支払いしないと……」
商人の娘らしい言葉を言いかけるカチュアの言葉を制して、私が宣言する。
「あなたは私のお友達で仲間よ!お友達にプレゼントすることの何が悪いの?」
そう言って、ペンダントをカチュアのに押し付けた。
「と、友達……。あっ、その、……ありがとうございます」
カチュアは真っ赤になって、それを見せないように顔を背けながら、ペンダントをにつけてくれた。
「友達……友達、そうよね、お友達なのよね。はじ、めて?」
カチュアは赤い顔を伏せたまま、ブツブツ言っている。
実はカチュアは今まで足が不自由だったこともあって家に閉じこもりがちだったため、同年代にあまり友達らしい友達はいない。だから、はっきりと私から友達宣言をされたことに気が大転してしまっているのだが……。
これで、仲間も安心だわ!
私はそんなカチュアの気持ちも知らず、達に満足していた。
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