《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》68.たちの仁義なき戦い

霊王様たちへの贈りを作るために掘り出しの石を探していた時、実は、『幸運の石』の他にもうひとつ気になった石を発見していた。そのため、今度はリーフと一緒に一人でもう一度先日訪れた店に足を運んだ。

……そうそう、この石。見た目は灰の普通の石のようだけれど……。

【夫婦石(夫)】

分類:寶石・材料

品質:低品質~高品質(『妻』との相次第)

詳細:夫婦間のを深め、子を授かりやすくなる不思議な石。石そのままでもいいが『夫婦石(妻)』と一緒に合金にした方が効果は高い。夫婦の片割れだけだと効果はない。

気持ち:可いお嫁さんと一緒になりたいな。

『夫』って書いてあるから、奧さんが必要なのよね……?

そういえば、國王陛下ご夫妻は、第二子以降お子が生まれておらず、それがこの間の毒殺未遂騒にも繋がっていたはずだ。

……だったら、お子さまが生まれやすくなるこの石の片割れがしいわ!

『でも、赤ちゃんってコウノトリが運んでくるか、キャベツ畑からやってくるのよね?『夫婦石』を持っているとコウノトリたちの目印になるのかしら?』

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トンチンカンな結論を出しながら掘り出しの箱の中を探したが、その片割れと思われる石は見つからなかった。

「お嬢さん、なにかお困りかい?」

店主さんが気さくに聲をかけてくれた。

「これ、『夫婦石』の旦那さんの方らしいんだけれど、片割れの奧さんの石が見つからなくって」

そう言って、手のひらに乗せた『夫婦石(夫)』を店主に見せた。

「おや、これを見つけたのかい!お嬢さんはほんとに目利きだね。その石はね、片割れの奧さんの方は寶石のように綺麗な石だから見つけやすいんだけれど、夫側はそんな灰の見た目普通の石だろう?見つけにくいんだよ!……ちょっと待ってな、店の奧に奧さん側の石がいくつかあったはずだよ」

そう言って、店主は店の奧にっていった。

……いくつか?一人でいいよ?……。まさか、この夫くんを奪い合いになったりは……。

凄く嫌な予がした。そしてその予はすぐに現実のものとなって私の前にやってきた。

『夫側の石が見つかったんですって!?』

『こんな機會、なかなかないわ!彼は私のものよ!』

『何言っているの!しい私こそが結ばれるにふさわしいわ!』

『あんたみたいな主張の強いブス、獨りがお似合いよ!』

店主がガラスケースの上に並べてくれた、とりどりの華やかな妻側の石達の、【鑑定】の『気持ち』が暴走していて、彼達の聲が頭に直接響いてやかましい。もう、やかましいを通り越しているわ!

……うわぁ。

私も引いたが、ふと手に握っている夫くんを見ると……。

『僕……気の強い人はちょっと……助けて……』

既に逃げ腰だ。

……うん、気持ちはわかるよ。

そんな騒がしい中、ふと見ると大人しく聲を出さずにいる、淡いピンクの石があるのに気がついた。

『……私はお姉様たちよりも目立たないし、大人しくしているべきよね』

そんな小さな聲が聞こえた。

なんか、そんな健気な彼は、夫くんに似合いそうで気になって、夫くんの石を彼に近づけてみる。

『……優しそうで素敵な人♡』

『……なんて儚げでらしい子なんだ♡』

やっぱり!

『『『ちょっと、なんであんな目立たない子がっ!』』』

背後の意地悪姉たち(?)がうるさいけれど、そこはもう無視だ。

私は、このペア石も買い求めることにした。

「金屬は……」

金のインゴットに近づけると、らかなが石たちを包んで優しい雰囲気がした。

『金のお姉さんがアナタ達の仲人をしてあげる♡』

『『ありがとう、お姉さん!』』

これで決まりね!

さて、私は実験室に戻って錬金釜の前に立つ。

合金づくりのための、エプロンも手袋もバッチリ裝備済み!

さあ、國王陛下ご夫妻に喜んでいただくために、頑張りましょう!

攪拌棒をぎゅっと握りしめて、気合をれる。

……さあ、夫婦一緒になって、王妃殿下に赤ちゃんを授けてあげて……!

魔力を込めて、うんとうんと熱く……!

そう念じながら暫く攪拌棒を握っていると、素材をれた釜の中が熱くなって金が溶け始めたので、錬金壺の中でぐるぐると攪拌棒をかき混ぜ始めた。

「さあ、一緒になって……!」

【ベビーゴールド】

分類:合金・材料

品質:低品質

詳細:夫婦のを深め子を授ける力をめた合金。その力は分量によっての変化はない。だが結合度が低く、力を発揮しきれないだろう。

気持ち:まだ夫婦になりきれていない気がする……。

……うん、まだ溶けて混ぜただけだもんね。もっと一緒にしてあげるわよ!

魔力と、王妃殿下への思いを込めて、ぐるぐると撹拌棒を回していく。

【ベビーゴールド】

分類:合金・材料

品質:高品質

詳細:夫婦のを深め、子を授ける力をめた合金。その力は分量によっての変化はない。

気持ち:コウノトリがきっとやってくるよ!

……やった!コウノトリさん、來てくれるって!王妃殿下もきっとお喜びね!

錬金釜の栓を抜いてまだ熱い狀の合金をインゴット型に注いで、靜かに數日待った。そして、冷めたインゴットを元に、國王陛下と王妃殿下分のアクセサリー制作をリィンに依頼したのだった。

【子授けの指

分類:裝飾品

品質:高級品

詳細:夫婦仲の良い夫婦のをより深め、子を授ける力をめた指

気持ち:きっとコウノトリはくる!

これをお贈りすれば、きっと赤ちゃんがやってくるはず……!

大人の事に疎いデイジーのために、【鑑定】も、「コウノトリ」という言葉を選んでいる。さて、デイジーが真実を知るのはいつの日か……。

明日こそきっと獻上します(´ー`A;)

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