《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》70.マルクとレティア

「アナさんから、凄いもの出來たって聞いたから、來たぞ!」

『守護の指』を渡すべき最後の二人が、私のアトリエにやってきた。

聲の主で冒険者のマルクとレティアだ。

「えっと、がものだから、中って貰えますか?」

そう言って、二人をって奧の作業場へ移した。

部屋を移して、鍵をかけてしまっておいた指を引き出しから取り出して、手のひらに載せて二人に見せた。

「これは、『守護の指』と言って、あらゆる狀態異常を防ぎ、裝備者の力を徐々に回復する魔法の指です。ちなみに、悪しき心を持った方が裝備しても効果は発揮しません。お渡ししようとしているのはこれです」

「「……」」

二人とも無言だ。

「えっと?」

私は首を傾げる。

「えっとじゃないよ!どんな狀態異常にもならなくって力自然回復!?そんなん國寶級じゃないか!」

「……驚いた。想像の遙かに上行ってるし」

國寶級と騒ぐマルクと靜かに驚くレティア。

「じゃあいらない?」

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ちょっと冗談半分に聞いてみた。

しいに決まってるだろう!前に會った時に、狀態異常攻撃持ってる魔獣にてこずってるって言っただろう!」

マルクに怒られてしまった……。

「一いくら払ったらいいんだ、これ……」

レティアもぼそぼそ呟いて悩んでいる様子だ。

「リィンとも相談したんだけれど、素材採取の時の『マルクとレティアへの護衛依頼無制限指名料』っていうので払ってもらうっていうのじゃあダメかしら?」

私は、リィンと話し合ったことを、マルクたちに申し出てみた。

「……で払えってことか」

うんうん、と頷くレティア。

「何納得してんだレティア!それで済む品じゃないだろう!……ったく、リィンといいデイジーといい、二人とも職人としてもっと金に関してシビアにならなきゃダメだろう!ちょっと、三人でリィンのところに行くぞ!」

そうして、私もレティアもマルクに言われるままにリィンのもとを訪ねることになった。

マルクの先導で鍛冶屋職人地區へ向かい、リィンの工房の口へとたどり著く。

「リィン、いるかー?」

マルクが、開いた扉から、中へ聲をかける。すると、リィンは中で作業中だったようですぐに返事の聲が返ってきた。

「こら、リィン。例の指だけど、『護衛してくれるならタダ』ってどういうことだ。ちゃんと職人として、貰うモンは貰わなきゃダメだろうが!」

「あ、やっぱダメだった?」

リィンが肩を竦めてペロッと舌を出した。そんなリィンにマルクがゲンコツをかました。

……仲良いなあ。

痛そうだが、なんだかああいう気安い関係というのはし羨ましい気がした。

「だったらどうするのさ」

頭をりながらリィンが口を尖らす。

「一個あたり一千萬リーレ払う。だから、リィンとデイジーにそれぞれ大金貨一枚ずつな。その上で、護衛依頼はスケジュール次第だがちゃんとける。一千萬でも安いと思うぞ。ちゃんとけ取れよ?」

マルクが私たちに諭すように言う。

「「はい」」

私達は、素直に頷く。

「レティアもそれでいいよな?」

マルクが確認すると、レティアも「ああ、それでいい」と言って頷いた。

そうして、ようやく指の値段が決まり、私達は、マルクがマジックバッグから出した大金貨を一枚ずつけ取る。そしてようやく私は、指をマルクとレティアに渡せたのだった。

私達は、そのままリィンのお祖父さんの工房にお邪魔していた。

今は、休憩用のテーブルセットに腰かけて雑談中である。

「で、デイジーとリィンはどこか素材採取に行きたいところがあるのか?」

マルクが尋ねてくれた。

「アタシは今のとこないな。まあ、ゆくゆくはデイジーと組んで魔剣とかすごい耐のある鎧とか作ってみたいけど。デイジーは何かあるのか?」

椅子の背もたれに肘をつきながらリィンが聞いてきた。

「『賢者のハーブ』と『癒しの苔』がしいのよね。あとは、家族が魔導師だからローブの素材になる糸素材とか?」

私もリィンにつられて素材採取の希を語る。

「『賢者のハーブ』と『癒しの苔』って素材は何に使うんだ?」

聞いたことが無い素材のようで、レティアが首を傾げながら聞いてくる。

「マナポーションの上位版が作れるの。迷宮都市のダンジョンに潛る魔導師さん達のマナポーション摂取量が減れば、おトイレ事も解消するんじゃないかなって思って」

「おトイレ事?」

レティアがよく分からないと言った顔をする。そして続けてこう言った。

「トイレなんて、そこらで隠れてすればいいじゃないか。私はそうしているぞ」

そう言いきった『の』レティアは真顔だ。

すると、マルクがレティアの後頭部をパコンと叩いた。

「……お前はもうちょっととしての恥じらいをもて!」

どうもこのパーティーは、マルクがツッコミ、レティアはボケ役のようだ。

ともあれ、二人は狀態異常攻撃を持った魔獣退治の指名依頼がたまっているようなので、それを先にこなしたら採取に行こうという話になった。

……楽しみだわ!

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