《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》76.『本の錬金師』

錬金による一定量の亜鉛華の作は済んだ。

そうしたら、次は『誰でも作れる方法』の考案と、『試作品のテスト』について考える番だ。

「テストについては商業ギルドの職員のの中から、希者を募りましょう。あとは……魔道師の中でも優秀な技師に、亜鉛を蒸発させるための『焼爐』の作を依頼します。そうすれば、『誰でも』この化粧品を生産出來るようになります!」

オリバーさんの言葉に、アナさんが『うんうん』と頷く。

そんな中、『……せっかく澱見つけたのに使わないのかぁ』とちょっとガッカリ気分で、私は持って帰ってきていた澱の瓶を手に取る。そして、それをふと【鑑定】で見てみた。私が持つ瓶の下には、実験したあとの冷めた錬金釜と底に溜まった亜鉛華があった。

【亜鉛華】

分類:顔料

品質:良質

レア:B

詳細:亜鉛が空気にれてできた化合。白顔料。日焼け予防や殺菌作用による匂い消しの効果がある。

気持ち:あれ。デンプン君だ!僕とデンプン君を半分ずつで混ぜると薬になるよ!

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【澱

分類:食品

品質:普通

レア:B

詳細:食品にとろみをつけることが出來るを白く見せることも出來るが、カバー力は低め。

気持ち:あれ。亜鉛華さんだ。僕と亜鉛華さんで皮用のお薬になるよ!

……お薬になるですって!

「ねえ、アナさん。澱と亜鉛華を同じ分量で混ぜると皮用の薬になるらしいの。使ってもいいかしら?」

カチュアとオリバーさんと一緒に量産化に向けての議論に夢中になっているアナさんに尋ねた。

「おや?薬になるのかい。だったらやってみな」

「はい」

そう言うと、私は実験の一つである『天秤』を取り出して、実験臺の上に置いた。

天秤は、左右のお皿にものを乗せることで、同じ重さであることを確認出來る機材だ。その天秤の左側の皿に澱を、そして、右側の皿に亜鉛華をスプーンで掬ってれる。等量を混ぜ合わせて…。

【亜鉛華澱

分類:醫薬品

品質:良質

レア:B

詳細:疹・皮炎、汗疹、間疹、日焼けなどの皮疾患に散布することで、収れん、消炎、保護、緩和な防腐をするよ。

気持ち:でも、じゅくじゅくと潤した患部に使わないでね!

……やったぁ!薬を『開発』できちゃったわ!これって、初めてよね!

そう、今までは、『教本』を元に薬剤であるポーションを作ってきた。だけど、それは先人達の発見した技の再現にしか過ぎない。でも、この『亜鉛華澱』は、『私が開発した薬剤』なのだ!そりゃあまあ、私には鑑定さんという強い味方がいるのだけれど。

……凄い、凄いわ!私初めて自分の力で薬を作れたのよ!教本に乗ってる薬品を発見した先人達と同じことをし遂げたのよ!

「アナさん!私初めて自分で新しいお薬を作ったわ!患部に散布することで、疹・皮炎、汗疹、間疹、日焼けの癥狀を優しく抑えることが出來るわ!」

私は興して思わずアナさんの手をギュッと握る。

「よく見つけたね」

そう言いながらアナさんが笑顔で私を見て目を細める。そして、「よくお聞き」と注意してから、靜かに語り始める。

「『錬金師』って言うのはね、本來は、自然界にあるものの有り様を研究し、そこから人にとって有益なものを発見したり、生み出す試みを行う者達のことを言うんだ。世の中の実はともかく『師匠のモノマネや本に書いてあるとおりポーションを作るだけの技者』じゃないんだよ。デイジー、お前さんは今、自分で新しい機能を持った、人々に有益なものを発見した。ようやくお前さんも、『本の錬金師』の仲間りだよ」

そしてアナさんは、私が握ったままの手を逆にギュッと握り返してくる。

「ようこそデイジー。『本の錬金師の世界』へ」

その言葉に、私のの奧底から心が高揚して、頬が紅し、思わずポロリとひとしずくの涙が零れ落ちた。

……嬉しい!師匠に『本の錬金師』って認めて貰えた!

そんな私がに酔いしれている中、やはり商人だからなのだろう、オリバーさんは、既に商品化に向けての計算を頭の中でしたようだ。

「汗疹や疹なんて、わざわざ高価なポーションを塗布したりしませんからね。だが、この澱と亜鉛華のであればもっと安く提供することが出來る。だいたいたっぷりの量を売ったとしても、200~300リーレってとこでしょう。そして、それを可能にするにはじゃがいもの増産を國に依頼することになる。土地を持てない農奴達を募って開拓事業に協力してもらい、可能であればゆくゆくは土地持ち農家にする。彼らには、じゃがいも作りの合間に澱作りの副業をさせることで彼らの収増加による生活向上と稅収の増加が期待できます!ぜひ、この薬も含めてテストして、その結果をもって陛下にご報告しましょう!」

オリバーさんは大興だ。

カチュアも私の元へやってきて、「凄いわ、デイジー!」と私を祝福するように抱きしめてくれた。

まあ、合金とかは自由に作ってますが、『不特定多數の人に役に立つもの』は初めてなので、ここでこの展開にしてみました。

『白』は、明日収束です٩(ˊᗜˋ*)و

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