《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》78.ふんわりステーキ

『白』も収束の目処がついた頃、アトリエに大量の本が屆いた。王妃殿下が約束してくださっていた『お禮』だ。高価で貴重な本がたくさん。錬金を始めとして、料理図鑑、食材図鑑、植図鑑、薬草図鑑、鉱図鑑……と山のようにある。

「料理図鑑と食材図鑑は使いこなせるのはミィナかな?」

「ミィナ~!」と呼ぶと、廚房にいたミィナがやってくる。

「うわぁ、すごい本の數ですね!どうなさったんですか?」

キョロキョロと本のタイトルを眺めていたミィナの目が、料理図鑑と食材図鑑で止まる。

「お料理図鑑!しかもこんなに分厚い!」

「はわわわ……」と言いながら、で両手をの前で組んで目をキラキラさせている。

「王妃殿下に、獻上した品のお禮として頂いたのよ。そのお料理図鑑と食材図鑑はミィナにあげるね」

私は、本を整理しながら、「よっこいしょ」と分厚い二冊の本をミィナに手渡した。

「ミィナちゃーん!」

そんな時、店の外から男の聲がした。

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「あれ。いつもの冒険者さんの聲かな……ちょっと失禮しますね!」

パン工房の店頭へ走っていったミィナが、暫くしてしてから持って帰ってきたものは、『ブラッドカウ』という、牛型の魔獣の立派なおの塊だった。ブラッドカウというのは、年をとった牛を屠殺して食にした一般品より、高級とされていて脂と赤のバランスもよく味しいのが特徴だ。

「なんか、お土産って言われて……頂いちゃいました……」

どうしてでしょう?とこてんと首を傾げるミィナ。

……いや、うちの看板娘狙いでしょ!

「今夜は定番のステーキかしら?」

やはり、味しい牛はステーキでシンプルにいただくのが味しい。なので、そう聞いてみる。

「せっかくお料理図鑑を頂いたのだから、し考えてみませんか?」

そう言いながら、ミィナは牛を冷蔵庫にしまった。

「そういえば、最近男のお客さんに、もっとガッツリ食べ応えのあるものが乗ったものを食べたいって言われるんですよね」

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私が、居間の本棚に本をしまっている橫で、ミィナはテーブルに腰をかけてため息をついて頬杖をつく。

……ちょっと困ってそうね。手伝いますか!

「ちょっとパン工房の方の新作開発もしましょうか!」

ニコッと笑いかけて提案すると、ミィナは嬉しそうに大きく頷いた。

「なんか參考になるのありますかね……」

そう言って、いただいたばかりの料理図鑑のページをめくり始める。

「……馬や牛のタルタル」

「パンに生は合わないんじゃないでしょうか」

そこには、生の牛のミンチが、卵ベースらしいソースを添えられて皿に乗った絵が描かれていた。

「じゃあ焼いちゃえ」

「……なんでわざわざクズにしてから、また焼くのか分かりません」

思いつきで言った私の言葉はミィナに卻下されそうになった。

「いやいや、だって、ステーキって子供にはいじゃない。もっと小さかった頃、お父様たちがステーキを味しそうに食べているのを見ていて羨ましかったのよ」

すると、ミィナはなるほど、と納得した。

「一度ミンチにして、それをしっかり固めて焼けば、子供でも噛むのに苦労しないステーキが出來そうですね……やってみましょうか!」

ミィナが、さっき頂いたブラッドカウのをスライスして、包丁二本を使って用にミンチにする。

「塩と胡椒は最低でもいりますよね……」

ミンチにしたをボウルにれて、塩と胡椒をれる。そしてねてみる。するとに粘り気ができ、塊に出來そうな様子になってきた。

「これで試しに焼いてみましょうか」

フライパンの上に油を引いて、だねを乗せて焼く。

「……なんだか、が流れ出ちゃって勿ないわね」

「そうですねえ」

両面しっかり焼いて、出來上がったものを試食してみると、口の中で解けるじはいいのだが、非常にしかった。それと、なんだかせっかくのが先に流れ出てしまうのは悔しい。

「子供にも味しくじるようにするなら、ふんわりしいですねえ」

「せっかくだから閉じ込められないかしら?」

いきなり課題二つにぶつかった。

……そうだ、鑑定で見たら上手くいかないかしら?

一口殘ったひきのソテーを皿ごと持って、食材がある辺りをウロウロしてみる。

【玉ねぎ】

分類:食品

品質:普通

レア:普通

詳細:生だと辛く、炒めると甘みが出る野菜。涙が出ちゃうのはご

気持ち:炒めた僕をれれば、その子をらかくしてあげるよ。あ、ちゃんと冷ましてね!

……あ、これはいいみたいね。

そしてその橫に、昨日売れ殘ったパンが置いてあった。

【パン】

分類:食品

品質:低品質

レア:普通

詳細:一日経って乾燥してしまったパン。

気持ち:僕を細かくすると、パンになるよ。を封じ込めてあげる。

……あった!

でも、一日経ったパンでいいのかしら……。

【卵】

分類:食品

品質:普通

レア:普通

詳細:今朝鶏が産んだ新鮮な卵。

気持ち:僕をれたららか食になるよ。おもしっかりまとめてあげる。

……なんか、いけそうな気がしてきたわ!

「卵をれたらおがまとまりそうじゃない?あとは……炒め玉ねぎをれたら甘さがまして子供が喜びそうね。あとは……乾燥しちゃったパンって、細かくしてれたら油を吸ってくれそうな気がするんだけれど……」

実はまだミィナには、鑑定のことは話していないので、「なぜ?」と聞かれたら苦しいが、適當を裝って提案してみた。

「……乾燥って、昨日のパンですか……まあ、パンの作り方としては間違っていませんが、それをカツレツのじゃなくてれるんですか?」

半信半疑というじでミィナが改良作の作に取り掛かる。

まずは、パンを細かくすり下ろす。

「玉ねぎはみじん切りじゃないと、多分だねが割れちゃいますよねえ」

そう言って、みじん切りにしたものをフライパンでが著くまで炒めた。

「冷ましてかられてね」

「おの脂溶けちゃいますもんね」

そうして、再びだね作りに戻る。

微塵にしたに、塩コショウをれて粘りが出るまでよくみ込む。

そして、卵、玉ねぎ、パンれて混ぜる。

「普通に丸めただけだとさっき余分な隙間ができていたから、空気を抜きましょうか」

そう言って、ミィナは一人分のだねを手に取ると、パンパンと手の間で互に叩きつける。

そして、油を引いたフライパンで焼き始めると、じゅうじゅうと音をたててが焼けるいい匂いがする。

「なんか、おがふっくらしてかさが増してきちゃいましたね。生焼けは嫌なので、裏返したら蓋して蒸し焼きにしましょう」

そして、そろそろ焼き上がるかな、という頃に、店の客足が途絶えたらしくマーカスも廚房に顔を出してきた。

「ちょっと、さっきからおふたりだけで何味しそうな匂い漂わせてるんですか〜」

育ち盛り男子のマーカスは、の焼ける匂いに鼻を引くつかせる。

味しそうな匂いですねえ」

「ちょうど試食用に三つ焼いたから、マーカスの分もちゃんとありますよ」

そう言いながらミィナが蓋を開けると、ぶわっと食をそそる焼けたの匂いと、まるまるとしたの塊が姿を現した。

「さっきよりは出ちゃっていないみたいですね」

ミィナは満足そうに串焼き用の串をに刺して、明な脂が流れてくる様子をチェックする。

「うん、中が生焼けってこともないようですね!試食しましょう!」

その言葉に、マーカスが食棚からお皿三つとフォークを取り出してきて、テーブルの上に並べる。

ミィナは、トングを使って皿の上に一個ずつ焼いただねを置いていく。

「「「いただきます!」」」

フォークを橫にして一口大にを切る。すると、じゅわっとが溢れてきた。

……あ、勿ない!

慌ててフォークに刺して口に頬張ると、の旨味と共に、がじゅわっと口の中に広がった。しかも、微塵にされたは口の中でほろりと解けて舌で崩れてしまうほどのらかさだ。

「「「おいしーい!」」」

三人で大絶賛する。

「これは私たちで開発したメニューよね。うーん、名前はどうしようか」

私は最後の一口を頬張って、惜しむようにしっかりかみ締めてから飲み込んだ。

「やわらかステーキ、とか?」

ミィナが提案する。

「うん、それいいね!……ってあれ?」

食べ終わったお皿に殘ったが白く固まっていることに気がついたのだ。お行儀が悪いが、それを指でとって舐めると、ざらり、とあまり味しいとは思えない舌りがした。そして、そのことを二人に伝える。

「そうすると、お持ち帰り用にお店に出すパンに挾むのには、鶏系のクレイジーチキンや豚系のマッドピッグのに変えた方が良さそうですね」

持ち帰り販売用には、さらなる改良が必要なようだった。

「ミィナちゃん、こんにちは」

の二人連れの冒険者である。彼らはこのパン工房の常連で、この間を差しれしてくれたのも彼らだ。

「今日は新作のパンありますよ、食べていかれますか?」

ミィナがニコニコ営業スマイルで尋ねる。

「じゃあ、パンは新作で。飲みは冷たい紅茶がいいな」

「私も同じもので」

々お待ちくださいね」

ぺこりと一禮をしてから、ミィナが廚房の中にる。

しばらくしてから飲みと新作パンの乗った皿が彼らの前に置かれた。新作パンは、『ふんわりパン』を半分に切って、先日私たちが開発した、焼きたての『やわらかステーキ』とトマトの切りを挾んだものだ。

「これは……?」

「でも、口の中でらかく崩れるわ」

「先日頂いたブラッドカウから思いついて作った、『やわらかステーキ』です。おをみじん切りにしてから々混ぜて焼くと、そういうらかいステーキになるんです。お味はいかがですか?」

「「味しい!」」

二人はあっという間にそれを平らげた。

『……『影』、この新作はご家族全員分持ち帰らないと』

『ああ、お叱りをけるな……『鳥』』

こっそりと彼らは緒話をする。

「ミィナちゃん、これお土産用に四つ買って帰りたいんだけれど」

冒険者の一人がミィナに注文する。

「冷めても味しい別のおで作ったものもありますけど、今のものとどちらにしましょうか?」

「今のもので!」

しばらくして作りたてをミィナが持ってくる。

「はい、じゃあ、食べる前にオーブンか何かで軽く溫めてくださいね」

料金をけ取ったミィナは、暖かいものなので、軽めに包んで品を手渡す。

「「じゃあ、また來るね!」」

そう言って二人は店を後にし、……影に隠れた。

「……では行ってくる、後の見回りは頼んだぞ、『影』」

「……承知した、『鳥』」

その瞬間『鳥』は姿を消し、瞬間移(テレポート)で王城の王家の住居エリアに一瞬で移した。そして、瞬時に仮面で顔を隠す。

「……陛下」

「おお、『鳥』か」

「陛下、急に現れ申し訳ございません。デイジー嬢の店で味なる新作が販売されておりましたゆえ、溫かいうちにお召し上がりいただきたく、お持ちしました。なんでも、『やわらかステーキ』なるものをパンに挾んだそうです」

「おお、それは楽しみだ!早く家族を呼べ!」

陛下は侍従に指示を出し、デイジー達の新作を楽しむために家族を呼び寄せるのだった。

そう、彼らは『白』の時に、宰相の命令で隣國の勢をあっという間に調べた凄腕の暗部の者達である。なぜあの調査が一日でできたのかといえば、『鳥』の特殊スキルがあったからだ。そして、あの時デイジーが憧れた『影』と『鳥』が、常にとはいかないが、こっそり常連客に見せかけて自分たちを守ってくれていることなど、デイジーは程も気づいてはいない。

それにしても平和な國である。【鑑定】以上に希な【瞬間移(テレポート)】使いを、デイジーのお店の新作のお使いに使っているのだから……。

ハンバーグですね。まあ、ハンブルグという都市がないとこの名前立しないので、名前はまたふわっとした名前をつけました(´ー`A;)

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