《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》79.マヨネーズと揚げ斷のマリアージュ

「ねえねえミィナ。この生のタルタルに添えてあるソース、味しそうじゃない?」

それは、綺麗に整形された生の橫に、こんもりと添えられていた。

「マヨネーズ、ですか」

ミィナが私が開いている料理本を覗き込む。

「マヨネーズ島で作られているものを持ち帰ったから、その島の名前をとってマヨネーズなんですね」

なになに……と、ミィナが材料をチェックし始めた。

「主な材料は卵黃、塩、酢、植油……。油と酢で、どうしたらこのような狀態になるのか理解が出來ませんね……」

「作ってみましょうよ!」

私は、最近買った泡立て(細い木の枝を束ねてまとめたもの)をミィナに差し出す。

「泡立てるのにフォークだと大変だと思って、買っておいたのよ!」

そう言って、泡立てをミィナに手渡した。

「まあ、主人が食べたいというものを作るのも私の務めですからね……ボウルを出してっと……」

ミィナはボウルの中に卵を割りれて、塩と酢をれる。そして綺麗にそれをかき混ぜた。

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「……そうしたら、分離しないようにしずつ油をれます、と……」

しずつ油を混ぜて行くと、卵は濃い黃からだんだん白みがかってきて淡い黃いもったりとしたソースになった。

鑑定さんで見てみると、數日経たないと食中毒を起こすようなので、素直に待つことにした。

そして數日後、スプーンに掬って、二人でマヨネーズの味見をしてみる。

「「味しい!」」

「これかけたら、子供はこのソース目當てに苦手な溫野菜も食べられちゃうレベルじゃないですか?」

ミィナが、長いしっぽの先をくるくるくねくねさせながら言っている。きっとかなり気にったのだろう。

「うーん、男のお客さんが期待している『ガッツリしたもの』にこれがソースとして乗っていたらもっと喜ばないかしら?」

いや、私には的な構想はないのだが、力勝負で仕事をする男だと、こってりとしたものに、さらにこってりしたソースを乗せるというのもけそうな気がしたのだ。

と、そんな時に廚房のテーブルにある瓶の中に、パンっているのを見つけた。

「ねえ、今日の夕食のメイン食材ってなあに?」

「クレイジーチキンのソテーにしようと思っています」

ミィナがそう答えたので、パンをもって冷蔵庫を覗き込んだ。確かに中にはクレイジーチキンのむねっている。

【パン

分類:食品

品質:普通

レア:普通

詳細:乾燥したパンを細かくしたもの。や魚にまぶして揚げると絶品。

気持ち:小麥と溶き卵をそのむねにまぶしてから僕をつけて、揚げてみて!絶品だよ!

……絶品なのかぁ……食べたいわ!

「ねえ、ミィナ。このおを植油で揚げにしたいんだけれど、お願いできるかしら?」

「……を植油で揚げる、ですか?」

ミィナは、よく分からないと言った顔で首を傾げた。

「失敗しちゃったら、ちゃんとおはまた買ってもいいから!ね、お願い!」

そう言って、私はミィナにパンッと両手で拝んでお願いする。

「まあ、デイジー様の勘って意外と上手く行きますからね……やってみましょうか!でも、今度は植油で揚げたいだなんて。植油は高級品なのに贅沢なことをおっしゃいますね」

……いや、勘じゃないんだけど……都合がいいからそういうことにしておきましょう。そして、植油で作りたいなんて贅沢だということも認めましょう。私は鑑定さんが勧める味しい揚げを食べてみたいのよ!

実は私たちの世界にはラードとかの油で揚げ焼きにする料理はあるんだけれど、植油たっぷりで揚げるのはあまりしないのだ。

そして、むねの加工方法を鑑定のオススメ?どおりに伝えた。

ミィナは、揚げ油をフライパンにれて用意し、火にかける。そして、むねを薄めに切ったものをみ防止のために包丁の峰でしっかり叩いてから塩コショウで味をつけて、小麥をまぶしてから溶き卵を絡めて、最後にパンをまぶした。

「デイジー様の言う通りにしたら、いっぱいパンがつきましたね!じゃあ……油も溫まったようですし、揚げてみましょう!」

ミィナがおをフライパンに投すると、パンをまとったがじゅううっと泡がたってしばらくするとがきつねに変わる。

「ん、いいじですね。食べたらどんなじなんでしょう!」

ミィナがトングでそれを摑むと、「サクリ」と軽い音がする。そして、贅沢に植油を使って揚がったパンからは香ばしい香りがする。

「油が結構ついちゃってますね……どうしましょう」

「ザルで切れないかしら?あ、でもこれ木製だから油が染み込んじゃうかも……」

調理の中からボウルとザルを持ってきたものの、木製じゃダメかしら?と思ったのだ。

「揚げ専用にしましょうか。デイジー様、トングも含めて後で新しいものを買わせてくださいね」

よくよくミィナの手元を見ると、トングも木製だった。私は、了承の意味で頷いた。

「……さて、試食してみましょうか」

ミィナがまな板の上で油を切った揚げを三等分する。そして、小さな皿三つに揚げとマヨネーズを添えた。

「マーカス〜!手が空いてたら來て、試食よ!」

私は店番をしているマーカスに聲をかける。

「今行きます!」

急いでやってきたマーカスが試食に加わる。

「「「いただきます!」」」

一口大のクレイジーチキンのむねの半分をまずはそのままで食べてみる。

「あふっ……!」

……あっつい!

気をつけないと口の中を火傷しそうだ。

でも、周りののサクサクとした歯ごたえは軽快だし、の一番側の層はおそらくを吸ったのだろう、塩気と鶏の旨みがたまらない。そして、肝心のおらかくしっとりしていて味しいのだ。

そして、殘りの一口にはマヨネーズをつける。

味し〜い」

さっぱりしたむねに、塩気としっかりとコクのある旨味、そして爽やかな酸味が加わってとても味しい!

「マヨネーズには、みじん切りにしたピクルスを加えても良さそうですねえ……もうちょっと々考えてみます!」

ミィナは、最初は半信半疑だった揚げにも満足したようで、創作意が湧いたようだった。

ちなみに、ミィナ考案のピクルスりのものは、さらにゆで卵のみじん切りも加わって完した。そして、生の『タルタルステーキ』に添えられていたソースから考えたから、『タルタルソース』と名付けた。

次の日。

『影』と『鳥』は、今日も冒険者を裝ってアトリエ・デイジーにやってきた。そして、今日の新作であるという、『むねのフライのタルタルソースがけ』が挾まった、ふんわりパンにかぶりついていた。

「『影』……!」

「『鳥』……!」

彼らは小聲で確認し、頷き合う。

そして、彼らはミィナにお土産用を追加注文して品け取ると裏路地へ隠れる。辺りを確認すると、『鳥』は城へと転移して行った。

「……我が國は今日も平和だな」

殘された『影』と呼ばれる男はそう呟く。自分たちが別の任務に駆り出されないということ、それは今この國が平和ということだ。そうである今日という日に、神への謝を込めて目を瞑るのだった。

魚にしようかとも思ったのですが、お魚よりもおの方が流通多そうなのでむねにしてみました。

あと、マヨネーズ発祥の島の名前は、現実世界とは異なります( ᵕᴗᵕ )

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