《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》85.アイスゴーレム戦②

私たちは氷柱に周りを囲まれていた。しかも、折れた分の氷柱はまた新たに再生していた。

そしてこれを退けたとしても、天井からぶら下がる氷柱は數え切れぬほどで、さらに再生するときてる。こののどこに核があるのかもわからず、キリがない。打開策を見つけないと、こちらの消耗戦だ。

「さて、後退させる気もないようだし、どうすっかね……」

苦笑いをうかべ、寒いはずなのにひとしずくの冷や汗を額から垂らして呟くマルク。

前衛の三人が固まって一目のゴーレムがいた所に集まり、私は一人出口寄りにいた。

そして一斉にそれは降ってきた!

私とリィンには、理障壁が三百六十度展開される。しかし、この指を持たないマルクとレティアには、氷の楔がおそいかかる。

マルクはハルバードを槍に見立てて回転させ、降りかかる氷柱を弾く。だが、レティアは剣だ。剣の斬撃でかなりの數の氷柱は弾いたが、一本の氷柱がレティアの左肩を刺し貫いた。彼は片膝をついて蹲る。

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「デイジー!」

マルクがレティアの元に駆けつけて、氷柱を抜きながら私に向かってんだ。ちょっと距離があるから!

私はポーション瓶を取り出し蓋を開ける。中を出して……!

「行け、ポーション弾!」

私が投げた球狀のポーションは、レティアに命中し、その怪我を癒した。

「助かった、デイジー」

レティアが、立ち上がりながら禮を言う。

……そのとき、かつて実家にいた頃魔法を教えてくれたユリア先生の言葉が脳裏に浮かんだ。

『魔法の練習をすることは、貴にとっては魔法が使えるということ以上に、あなたのためになると思うわ。魔力を上手にコントロールするにつければ、錬金にもきっと役に立つはずだから』

……そして次に、アナさんが教えてくれた言葉を思い出した。

『みんな、水は知っているね。溫度が低いと氷になって固まり、溫かくなると溶けて水になり、火で加熱すると蒸発する。これはね、金屬だって同じなんだよ。塊のイメージしかないと思うけどね、熱すれば溶けて、もっと熱すれば蒸気になるんだ。ただし、水と違ってその溫度はとても高いから、『魔力』を使ってやるんだよ』

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そう、魔法も錬金も同じ『魔』よ!そして、錬金では『魔力』で熱を産みだすのよね。

錬金釜を用いて金屬を溶かすのは、何も、『錬金釜を介にして熱を産むから』では無い。あれは、錬金を行うにあたってかなりの高熱になっても耐えられる特殊素材の『ただの釜』なのだ。

……だったら、この窟を、『大きな錬金釜』に見立てて、固形である『氷』を溶かせばいいんじゃないのかしら?『錬金魔法』で。何も、戦闘だからといって、錬金を使っちゃいけないなんてルールは無いはずだわ。それに、水になっちゃえば、どこに核があっても、水と一緒に出てくるよね?

私は、見えた勝機に、にんまりと笑った。しかも、錬金が役に立つなんてね!

「氷よ、溶けて!」

火魔法が使えないからってなんだと言うの!私には『錬金魔法』があるわ!

そうよ!これは錬金釜。そしてっているのは氷。金屬を溶かした時のあのじを思い出して……!

窟全に魔力を満たす。窟は広い。窟全に行き渡らせるために、こそぎ魔力を持っていかれる覚がする。そして、じわり、じわりと錬金釜……窟の溫度を上げていく。

無數の氷柱の先端から、水滴がぽたぽた落ち始める。足元や壁もカチカチに凍っていたものの表面が溶けて緩んでくる。

窟に擬態しているゴーレムが、私を邪魔しようと、まだ殘っている無數の氷柱に私を襲わせるけれど、『霊王の守護の指』がある私には全く効果はない。

……ありがとうございます!霊王様!

「すっげえ……」

マルクが呟いた。レティア、リィンとともに、溶けていく氷を呆然と眺めている。氷を溶かす高めの室溫と、水が溶けたことで充満する気で、みんな汗だくになっている。

やがて、氷が薄くなった床のその下に、中央に魔石を飾った魔法陣の姿が現れてきた。

「……これだな」

その魔法陣に気づいたレティアが、剣で魔石を突き刺す。魔石は々になった。すると、私の魔力を介さずとも氷は自然に溶けだし、あっという間に水になって窟の外に流れ出ていった。

「魔力がほとんど空っぽだわ」

私は、魔力を使い切ったことを全員に告げた。

「さすがに窟全を加熱するなんてやったんだもんな……ここの『いいもの』貰ったら、休憩しよう」

そう言って、マルクがわしゃわしゃと私の貢獻を労うように頭をでてくれた。

魔法陣の上に寶箱がひとつ出現した。そして、なぜか濡れた窟の中に黃い小人さんが沢山現れていた。そして、小人さんたちが見つめる窟奧の壁をリィンも一緒に見つめている。

「寶箱を開けるか……ってリィンは何してるんだ?」

マルクが首を傾げる。だって彼からすると、リィンは一人で何も無い窟の奧を見つめているように見えるだろうから。

「鉱出!」

リィンがそう言って窟の壁に指を指すと、黃い小人さんたちが一斉に両腕を掲げた。そして、窟の奧の壁が黃金に輝き、キラキラと輝く粒子が壁一面から出てきて、宙を埋め盡くす。

「鉱再結晶!」

リィンがそうぶと、小人さんたちが宙のある一點をいっせいに指さす。すると、キラキラ輝く粒子はその一點に集まり、楕円形の水の寶石になって、リィンの掌に落ちた。沢山いた小人さんは居なくなっていた。

リィンが私たちの方に向き直り、その寶石を親指と人差し指でつまみながら、私たちに見せる。

「氷屬を持った寶石ってとこかな」

「ちょっと見せて」

私は、リィンのそばに歩み寄って、覗き込むようにじっとその寶石を見つめた。

【神與の寶石(氷結)】

分類:鉱・材料

品質:良質~最高級品

レア:S

詳細:『氷結』の屬を持つ寶石。他屬のシリーズ素材と混合することで品質はさらに上がっていく。

気持ち:一人でもいいけど、ちょっと勿ないよ。

「これ、他にも違う屬の寶石があるみたいだわ。他屬も一緒にした方がより効果が高くなるみたい」

「ん〜じゃあ、何かに使うにしても、これと似たものを集めた方が良さそうだね。で、混ぜて品質が上がるってことは、多分デイジーの錬金で混合かな?」

そっかぁ、と呟くとリィンは「預かっといて」と言って、その寶石を私に渡した。

「じゃあ、揃うまで私のアトリエの保管庫で預かっとくね」

私はけ取った寶石をひとまずポシェットの中にしまった。

「寶箱開けるぞ〜」

マルクに呼ばれたので、二人で寶箱の方へ駆けて行く。

「寶箱開けるなんて初めて!冒険ってじだわ!」

私はマルクの橫にしゃがみこんで、ワクワクしながら開くのを待つ。

「そういうとこは、ちゃんと子供なのな」

クスッと笑ったレティアに髪をクシャッとされた。

ぷーっと頬をふくらませつつも、やっぱり、『寶箱を開ける』というこの瞬間がドキドキする。

マルクの手によって、ギィっと音を立てて、寶箱はその中(あらわ)にした。

中には、拳大の明な石と、布袋がっていた。

【永久凍土の石】

分類:鉱・材料

品質:高級品

レア:A

詳細:『氷結』の屬を持つ石。『永遠なる氷結』屬を持つ。

気持ち:ひ・み・つ!

……『ひみつ』って何かしら?びっくりだわ。

そして、こちらは袋の中

【すばやさの種】

分類:種子類

品質:良質

レア:B

詳細:そのまま食べると一定時間すばやさが向上する。種なので當然発芽もする。

気持ち:そのまま食べちゃうのと、育てて増やすのとどっちがいいと思う?そうそう、ポーションにも出來るんだよね。

……うん、なんか今日は鑑定さんが意地悪じゃないかしら?

デイジー無雙でした(*´艸`*)

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