『永久凍土の石』は誰も使い道が分からないので、私預かりになった。まあ、明らかにそのまま使えそうな素材じゃないし……。

そして、『すばやさの種』は、種を育ててみたいと言った私が數個発芽しそうなものを貰って、殘りは前衛三人で分配した。

ちなみに、『すばやさの種』というものは、ナッツのようなじで、食べると一定時間すばやさが上がるという代なんだって。さっきの窟のように、寶箱に時々っていて、冒険者としては、手出來たら嬉しいアイテムらしい。似たようなものに、『力の種』『知力の種』『護りの種』なんかがあるらしくて、それぞれ力と知力（魔法の威力）、防力が上がるのだそうだ。手できる確率はそう高くないらしく、ここぞ、という時にだけ使うらしい。

「普通、これ栽培する人なんていないんだけどな。っていうか、難しいのかもな？でも、もし栽培に功したら大騒ぎだぞ。結構レアのドロップアイテムが、店で買えるようになるなんて革命だ」

マルクやレティアは、私がこれらの種の栽培に功することを期待しているらしい。

……うん、そんなにみんながしがるものなら、緑の妖さんと相談して育ててみようかしら。

私たちは、先の窟を出て、さらに森をマルクの作った道を通って戻り、その先に広がるやわらかい下草が生える草むらで休憩をとることに決めた。思ったより窟で時間を食っていたようで、既にのはオレンジになっている。

マルクとレティアは、マジックバッグから取り出したテント二張りや、簡単な調理とかの野営道をテキパキと設置している。さすがにＡランクになれるくらいだから回數をこなしているのだろう、手際は良く、私とリィンが手を出す必要はなかった。

私は、さっきの窟に擬態したアイスゴーレムを溶かすのにこそぎ魔力を持っていかれていて、とてもだるかったので、三人に斷ってから、大きなままのリーフにもたれ掛かり、親犬に包まれる子犬のような格好で休んでいる。

リィンは、子ライオン姿になったレオンを『ネコジャラシ草』でじゃらして遊んでいる。

……レオン、聖獣なのにそれでいいの？

「それにしても、『錬金』で戦おうという発想はなかなかない。あれは助かったな」

そう言いながら、レティアがナイフを使って森にる時に狩ったイビルボアのを捌いている。その橫では、既に火が起こされ、この場所に來る前に集めたキノコや菜などが火の上に引っ掛けられた鍋の中で踴っている。

「私、どうしても火魔法の才能はなくて。でも、錬金で金屬を溶かすっていうのはやっているから、あの狀況なら使えると思ったのよね……ふわぁ。でも、錬金釜と窟じゃ大きさが違いすぎて、魔力をほとんど使い切っちゃったわ」

疲れとリーフの溫もりに思わず欠をらしながら答えた。

「デイジーの機転がなかったら、アイテムは手出來ずに、かろうじて撤退出來れば上々って狀況だったんだしな。頑張ったデイジーは、気にせず寢てろ。そもそもまだお前は子供なんだから、無理しないでいいんだ」

そう言って、レオンをじゃらす手を止めてやって來たリィンが私の頭をくしゃくしゃとする。その掌の中で、こくんと頷くと、私は寢息をたて始めた。『子供なんだから』という言葉にムキになる気力すら殘ってはいなかったのだ。

◆

「んっ……」

私が、がやける香ばしい匂いに目を覚ますと、既に辺りは真っ暗で、明かりといえば、私たちの野営のために起こした焚き火くらいだった。

空を見上げると、一面の星明かり。今日は月のない夜のようだ。

「うわぁ凄い！こんな夜空見たことないわ！」

王都だと、安全のために魔道式の街燈が街中を照らしているから、地上の明かりが邪魔をして、ここまでの夜空を見ることは葉わないのだ。

いつも深い紺に見える夜空は、漆黒。そこに、數え切れないほどの大小様々な星が瞬いて、そして、川が流れているようにも見える、星々が集している箇所があった。

「ああ、起きたか。ちょうど夜食の準備もできたところだ」

焚き火でじっくり焼いたを切り分けているレティアが聲をかけてくれた。

「ねえレティア、あの空の川みたいになっているのはなあに？」

私は夜空を指さし尋ねた。

「あれは、『神々の涙の河』だね。昔、神々に寵されていたとてもしい使徒が、罪を犯して墮天してしまったことを神々が嘆いて流した涙が河になった、なんて伝説があるよ」

「そうなんだぁ……」

夜空にもそんな語があったなんて知らなかった。と、ポケっと宙を見上げていると、肩を叩かれた。

「ほら、デイジーの分」

見ると、私の前に丈夫な葉の上に載せられたイービルボアのローストとフォーク、カップにれられたスープが置いてあった。

「いただきます！」

フォークで刺してイービルボアのローストをひとくち食べる。焼きの著いた表面は塩と胡椒がしっかり振ってあって、の臭みを消している。そして、じっくり焼いて中まで火がっているけれど、しっとりとしたままの部は、噛み締める度にぎゅっとしまった赤のが染み出してきて味しい。

スープは、野菜とキノコの塩味であっさりしたものだったけれど、が溫まった。

「さて、食べ終わったら明日に備えてデイジーとリィンは寢ろよ。見張りは俺たちが代でやるから安心して寢てろ」

そうマルクが言うと、そこにレオンとリーフが口を挾んだ。

「マルク殿、我々は従魔の中でも特殊な個で、眠ることもありますが本來眠らずとも良いのです。見張りは、我々がやりましょう」

レオンの言葉にリーフも頷く。

結局その晩は、二匹に甘えてテントの中でみな眠ることになった。私はリィンと。マルクとレティアは、慣れっこなのかひとつのテントで寢ることにした。