《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》91.神々の思とエルフの里の歓待

所変わってここは神々の住みたもう天上の神殿。三本の世界樹に支えられた天空に存在する島のような場所だ。そこに、神々は白亜の神殿を建て、側仕えをする使徒達と共に生きていた。

その神々の島の中央に、一際大きく聳え立つ、父なる神、神々の中で最高位の創造神の神殿が建っている。その奧にある玉座に、その老年の姿を持つ神はゆったりと座っていた。

そこで、デイジーを通して世界樹の異変とそれが何者かによる作為であることを知った緑の霊王と土の霊王が、その父なる創造神と対面していた。

「ほう、何者かが世界樹を枯れさせようとしているとな?」

白いゆったりとしたローブに、白い髪とかな顎髭。それを弄りながら、彼、創造神は霊王達に確かめた。

「はい、そのうち一本は私のし子の手によって、巣食ったものを取り出すことに功しましたが、殘り二本はまだ枯れゆこうとしております。ゆっくりとした変化ではありましょうが、一本でも枯れ果ててしまえば、天界の土地は崩れ、人やエルフ、魔族が住まう地上と、死人の住まう冥界との間にもが空いてしまうでしょう」

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「……し人の子の祝福を調整した方が良いかな。職業神を呼べ」

「はっ」

創造神の側仕えである使徒が、職業神を呼びにその場を去る。

職業神。その名の通り、あの洗禮式で人々に職業を與える役を持つ神である。

「創造神様がお呼びとお聞きしまして、參りました」

現れたのは銀のストレートの髪に、理知的な青い瞳を持った職業神たる男神である。彼は、に手を當てて立禮をする。

そして、再び世界樹の異変についての説明が神々の間でなされた。

「……地上のことに神々が直接手出しをしすぎることは良くないでしょう。ですが、そうですね。『賢者』と『聖』を與えた子の心が些か穢れてしまいましてね。職を取り上げるために『転職』の啓示を下ろそうかと思っていたところです。そして、善き心を持ち、努力を重ね、相応しき力を持つに至った『魔導師』の子供が丁度、件の『し子』の側におります。彼と、彼に『賢者』と『聖』の転職の啓示を下しましょう。きっと、人の子達の力になるでしょう」

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ニコリと笑ってそう提案する職業神の手の中には、手のひらサイズの水晶玉が握られている。そして、そこに映る『彼』と『彼』は、デイジーのよく見知った人であった。

世界樹を救って、にわかにのエルフ達は喜びに活気づいていた。そして、次期王であるアリエルが社會勉強を兼ねて、世界樹を救いに行くし子と一緒に旅をする!と大騒ぎだ。

「今夜は祭りだ!」

と騒いでエルフ達が走り回っている。祭りのために狩りに出かけるものや、果を採りに森へ行くたちがいる。そして、そんな中、私たちは主役なので當然引き止められている。今日は、エルフのお城でお泊まりさせていただけるらしい。

「世界樹さんは、枯葉がやっと落ちて、若芽が芽吹き出したわね。でもまだ痛々しいわ」

大きく聳え立つ世界樹のまだ寒々しい姿に、悲しくなった。

そんな私の橫にはリーフがいて、寄り添ってくれている。

「そういえば、植にポーションって効くのかしら?」

ふっと思いついて呟いてみる。

「そうですね、デイジー様がお作りになったものに、さらにデイジー様の魔力を込めたら、『世界樹』も緑の眷屬ですから、効果があるかもしれないですね」

……まあ、ダメもとでもやってみようかしら!

うーん。世界樹さんは大きいから、範囲魔法の方がいいわよね。

ポンっとハイポーションの瓶を三つほど開けた。まあ、高価な品と言っても、所詮私の畑にあるもので作ったものだ。景気良く行こう!

そして、魔力で三本分の中を水球の形に整えて私の魔力を込める。

『ポーションは限りなく細かい霧狀にして……』

私の手のからポーション玉が上へ上へ登っていって、そして、霧狀に変わる。

「癒しの霧雨(キュアミスト)!」

サアアア……と微かな音を立てて、枯れた世界樹の枝をポーションが濡らしていく。そして、幹を破って出てこようとする若芽にも。霧雨は上から注ぐ日のけて、七の虹を世界樹の上に作る。

「うわぁ、綺麗」

そんなこぼれた私の聲以外にも、その景に気づいたエルフ達が、嘆のため息をらす。

だが、それで終わらなかった。

急に若い緑の芽が幹のあちこちから顔を出し、手のひらの形に開き、それがぐんぐんと大きくなる。虹をいただく世界樹は、若葉でいっぱいになったのだ!

「なんてしい世界樹の姿だ!」

「おお、あそこにいらっしゃるのはし子様!……あれはし子様の業か!」

「「「し子様萬歳!」」」

やりすぎた私は、激と興で駆け寄って來たエルフ達に上げされてしまった。

……は、恥ずかしいわ!

そんなこんなで上げされていると、私のお腹の上に、一本の世界樹の枝がゆっくりと降ってきた。

『僕の子供を貴の庭に植えてしいな』

枝からは、そんな聲がした。

「じゃあ、一緒に私のお家に行こうね」

そう言って、エルフの皆さんに下ろしてもらってから、枝をポシェットの中にしまった。

その後、私は錬金に使えそうな植がないか、里の中を歩いて回った。

……癒し草、魔力草……、まあ、うちの畑にあるものと同じものばかりかしら?

って!

【エルフの真珠草】

分類:植

品質:高品質

レア:A

詳細:鈴蘭に似ているが毒はない。花のエキスを出した水は、上質な化粧水になる。

気持ち:おしっとり、良い香りのする化粧水になるよ!

うんうん、こういうものはお母様やお姉様、ミィナやカチュアも喜びそうね!あとは……。

【エルフの癒し草】

分類:植

品質:高品質

レア:B

詳細:製薬すれば、力と魔力が同時に回復する(中程度)

気持ち:癒し草のペアといえば?

……魔力草!

【エルフの魔力草】

分類:植

品質:高品質

レア:B

詳細:製薬すれば、力と魔力が同時に回復する(中程度)

気持ち:魔力草のペアといえば?

近くにいたエルフさんにお願いして、この三つの薬草を株分けして貰った!

そして、夜。

里の広場の中央に大きな篝火が焚かれ、エルフ達が音楽を奏でる。椅子に腰かけたハープ奏者に胡座を組んだリュート奏者、そして、立ったままメロディに合わせてを揺らすフルート奏者。その音しい響きを奏であげる。空には、三日月が空を飾り、星々は瞬き、まるで新たに蘇った世界樹を祝うよう。

新しい若葉たちを得た世界樹は、そよ風をけてサラサラと若葉が音を立てる。

エルフさん達が一生懸命用意してくれたのは、中に詰めをした丸鶏のローストや丸ごと焼いたイノシシ、コケモモやベリー、ナッツ類など、森のめぐみも沢山供された。そして、大人には、蜂酒(ミード)がグラスに注がれる。子供の私にはフルーツを搾ったジュースが代わりに提供された。

楽士エルフ達が音楽を奏でる中、歌い手たちは世界樹に向けて復活の喜びの歌を捧げる。

それは、とても、とてもしい夜だった。

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