《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》92.賢者の塔
私たちは一晩エルフの里に泊まらせてもらって、翌朝出発した。もちろんアリエルも一緒だ。彼が騎乗するのは、ティリオンという名の大きな鷲。私たちの乗っている馬や聖獣よりやや上空を低空飛行して進む。
「ねえ、アリエルは、人間の世界での住まいとか決まってないのよね?」
そう、私の王都の家には、用の三階が一部屋余っているのよね。
「うーん、そうですねえ。木の上とかで寢てもいいんですけど……」
さくらんぼのようならしいに、人差し指を添え、とんでもないことを言い出す。
「ちょっと待って!それはダメ!あなたみたいな可い子がそんな所に夜いたら、不埒な輩が変なこと考え出すわ!」
「「「まあ、間違いなく返り討ちだろうけどな」」」
私が慌てて止めると、他の三人が揃って怖いことを言う。
なぜそんなことを言い出すのかと言うと、さっき街道にイビルボアの上位種デビルボア三頭が現れたのだが、彼は一撃で三本の矢を出し、デビルボアたちの眉間を全て撃ち抜いて倒してしまったからだ。
Advertisement
アリエルの弓は特殊だ。
ミスリルという、銀の輝きを持つが曇ることはなく、鋼のような強さを持つ金屬からできている。そして、彼の弓には理的な矢は必要ない。一種の魔道のような作りなのか、魔力が矢となるのだ。特に意識しなければ、ただの矢として機能するが、屬を意識すると、彼の持っている聖屬や屬、火屬の矢を生み出すことも出來る。
「ザルテンブルグの王都に戻ったら、私の家に一部屋空きがあるんだけれど、そこで私と従業員の子たちと一緒に住むって言うのはどうかしら?」
「……従業員?デイジー様は、なにか商いをなさっているのですか?」
鷲の背に揺られながら、アリエルは首を傾けた。
……うーん、錬金のアトリエはともかく、『パン工房』の方は、実がないと想像つかないよね。
私は、マジックバッグになっているポシェットから、ミィナが持たせてくれたパンを一個取り出した。ちなみにポシェットの中は時間経過止まっているから、できたて狀態です(これどうしても不思議なのよね……)。
「錬金のアトリエをやりながら、パン工房もやっているのよ。はい、どうぞ」
と言って、パンを持った手を上にばす。すると、上を飛んでいたアリエルが高度を下げてきて、パンをけ取る。ミィナ特製コーンパンだ。中にいっぱいマヨネーズと絡めたコーンが詰まっている。
「パンって、ぺったんこで不味いものじゃなかったっけ?」
首を傾げながらも、パンを一口かじる。
「おーい、飛ばしながら食べるって、舌噛まないように気をつけろよ!」
マルクが私たちのやり取りを呆れて注意する。アリエルの方が年上なのにまるでお兄さんだ。
「んむっ……味しいですっ!」
そして、見かけによらずすごい勢いではぐはぐとパンを食べ終えてしまった。どうやらマルクの心配は不要だったようね。
「デイジー様!私、デイジー様のアトリエに住まわせてください!パン工房のお手伝いもします!」
そう言って、マヨネーズの油でちょっぴりつやつやになったも気にせず、アリエルはし上の方を飛びながら、「パン〜パン〜パン工房〜♪」と謎の創作歌を歌っていた。
◆
そんなのんびりとした旅を続けて、やっと到達した『賢者の塔』。
塔は高く、見上げると首が痛くなりそう。そんな塔の先端は雲に隠れて見えなかった。
辺りには一面賢者のハーブが生えている。問題なく採取を終えて、私はじっと塔を見上げていた。
そしてその橫で、マルクは言ってはいけない言葉をじっと黙って我慢していた。どう見てもデイジーが、『賢者の塔に登りたい』と言い出す寸前じゃないか!
……言ったらおしまいだ……!
『登ってみたいんだろ?』
そうしたら、帰ってくる答えは『イエス』しかないだろ!
古い石造りの賢者の塔は全部で五十階ある。5、10、15……と五階毎にボス級の魔獣や魔が立ち塞がる構になっている。そして、その昔大賢者グエンリールが住んでいたとも伝えられ、最上階にはそのがあるに違いないという噂だ。『噂』に留まっているのは、35階以上は未踏破だから、真実は誰も知らないのだ。
「マルクさん、レティアさん。賢者の塔って、その名前の通り賢者が住んでいたんですか?」
『來たー!』
マルクは予想しうる未來に頭を抱えた。
そんなマルクに気を配るでもなく、レティアが普通に対応してしまう。
「ああ、全階踏破済みってわけじゃないから、噂だがな。大賢者グエンリールが住んでいたと言われているぞ」
『やめろォ!レティアァ!』
マルクは心の中でぶ。
「という事は、まだ大賢者の産が殘っているかもしれないってコトですよね」
にんまりと笑うアリエル。
『未踏破ってことには理由があるってことに気づけーーーー!』
「私、実家が魔導師の家系なのよね……お父様やお兄様たちのお役に立つものがあるかもしれない……」
ぽつりとデイジーが呟いた。
「デイジーが行きたいならあたしは付いてくぞ?」
リィンまで、大した理由もなく同意しだす。
「「「「行こっか!」」」」
『終わった……』
止める言葉を割り込ませる隙をみいだせなかった俺の敗北か。
俺は腹を括った。というか諦めた。うん、やばかったら窓から飛び降りよう。
「うん、行こっか……」
こうして、一行は賢者の塔の口へ向かうのだった。
マルク苦悩回(*´艸`*)
【二章開始】騎士好き聖女は今日も幸せ【書籍化・コミカライズ決定】
【第二章開始!】 ※タイトル変更しました。舊タイトル「真の聖女らしい義妹をいじめたという罪で婚約破棄されて辺境の地に追放された騎士好き聖女は、憧れだった騎士団の寮で働けて今日も幸せ。」 私ではなく、義理の妹が真の聖女であるらしい。 そんな妹をいじめたとして、私は王子に婚約破棄され、魔物が猛威を振るう辺境の地を守る第一騎士団の寮で働くことになった。 ……なんて素晴らしいのかしら! 今まで誰にも言えなかったのだけど、実は私、男らしく鍛えられた騎士が大好きなの! 王子はひょろひょろで全然魅力的じゃなかったし、継母にも虐げられているし、この地に未練はまったくない! 喜んで行きます、辺境の地!第一騎士団の寮! 今日もご飯が美味しいし、騎士様は優しくて格好よくて素敵だし、私は幸せ。 だけど不思議。私が來てから、魔物が大人しくなったらしい。 それに私が作った料理を食べたら皆元気になるみたい。 ……復讐ですか?必要ありませんよ。 だって私は今とっても幸せなのだから! 騎士が大好きなのに騎士団長からの好意になかなか気づかない幸せなのほほん聖女と、勘違いしながらも一途にヒロインを想う騎士団長のラブコメ。 ※設定ゆるめ。軽い気持ちでお読みください。 ※ヒロインは騎士が好きすぎて興奮しすぎたりちょっと変態ちっくなところがあります。苦手な方はご注意ください!あたたかい目で見守ってくれると嬉しいです。 ◆5/6日間総合、5/9~12週間総合、6/1~4月間ジャンル別1位になれました!ありがとうございます!(*´˘`*) ◆皆様の応援のおかげで書籍化・コミカライズが決定しました!本當にありがとうございます!
8 119愚者のフライングダンジョン
〖ニート〗×〖怪物〗=人間社會の崩壊??? 夢、信念、向上心。いずれも持たないニートがいた。ある日、祖母が所有する畑で農作業をしていると局地的な地震が地元を襲う。突如として倉庫に現れた大穴は蠱惑的なダンジョンの入り口だった。 〜半年後、世界中の陸地で大地震が発生。世界各地でダンジョンが見つかり、人々は新たな時代の幕開けを感じた。パラダイムシフトをもたらす理想の資源を手に入れたとき、小國と大國の均衡は崩れて戦亂の時代へ逆戻りする。 〜その頃ニートはダンジョンにいた。あれからずっと迷子の大人だ。奇跡的に生きながらえたが代償としておぞましい怪物へと成り果てた。 襲いくる牙。謎の鉱石。限界を超えてみなぎる力。自由を求めて突き進め。いざゆけ、ダンジョンの最奧へ! これは頭のネジが外れたニートが愛されるべき怪物になる物語。それを観察する戯作である。
8 95SnowManの舘様が幼児化!?
いつも時間に余裕を持って現場に來る舘様が、 ある日なかなか來なかった… 心配した翔太は舘様の家に行った… そこで翔太が出會ったのは男の子で…? MAIN SnowMan 宮舘涼太 渡辺翔太 Sub SnowManの他のメンバーとジャニーズの皆さん…
8 192ダーティ・スー ~物語(せかい)を股にかける敵役~
ダーティ・スーとは、あらゆる異世界を股にかける汚れ役専門の転生者である。 彼は、様々な異世界に住まう主に素性の明るくない輩より依頼を受け、 一般的な物語であれば主人公になっているであろう者達の前に立ちはだかる。 政治は土足で蹴飛ばす。 説教は笑顔で聞き流す。 料理は全て食い盡くす。 転生悪役令嬢には悪魔のささやきを。 邪竜には首輪を。 復讐の元勇者には嫌がらせを。 今日も今日とて、ダーティ・スーは戦う。 彼ら“主人公”達の正義を検証する為に。
8 93胸にヲタクという誇りを掲げて
ヲタクであることを隠して生活している少年 ヲタクになったことを誇らしく思う少女 このふたりが出會う時、ヲタク達はーー ※不定期連載です!
8 107サウスベリィの下で
罪深いほどに赤く染まった果実の下、人生に背を向けて破滅へと向かう青年小説家と彼の最愛の”姉”は再會する。古び、色褪せた裏庭にて語られる過去の忌々しい事件と、その赤色の記憶。封じられた蔵書の內奧より拾い上げた、心地よく秘密めいた悪夢幻想の手記。
8 62