《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》100.アゾットロッド

決闘騒で、アリエルがまだアトリエではなく実家の客人だった頃、私は先にアトリエに帰って來ていた。そして、先日の採取遠征の時のおしゃべりで提案した、『魔法の杖型ポーション出機』が卻下されたので、私は次の案を考えていた。どうしてもあの『ポーション瓶を開ける作業』を排除したいのだ。

……だってやっぱり面倒臭いんだもん。

回復される側には些細なことなのかもしれないけれど、何度もポーション瓶の蓋を開けるにもなってしいのよね。地味に疲れるし。それに、『面倒臭い』から新たな発明が生まれるのよ!

まず言われたのはこうよね。

『使い切ったらどうするのか』

うーん、そうねえ。だったら使い切れないくらいれられるようにする!いっそ、お金はかかるけどポーションを格納する部分にはマジックバッグ仕様にしてもらえばいいんじゃないかしら?一回の旅が長引いても問題がないくらいの容量にしてもらって、かつ、重さはがないようにしてもらう。そうそう、ポーションが傷まないように中の時間経過停止も必須條件ね!

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次に言われたのは、中が揺れた時の重さの負擔の事だったけれど、これは、既に考慮済み。重さはじない設定にしてもらうからクリア済み。

多分、こんな構造かなあ。ポーションの一回量分を貯めておく空間を作ってもらって、そこに、未使用時にはポーションを貯めておく。そして、レバーかスイッチを押すと、それを引き金にしてポーションの出口から貯めておいた一回分のポーションが飛び出すって訳。ポーションが出たら傷口に當たるように魔法で水のきを制すればいいわけよね。魔力で補えば飛距離もばせるはずだわ。

形はやっぱり魔導師の杖のような形。魔法使いのロッドだと、先端に魔力増幅する寶石なんかがついているけれど、その寶石の代わりに、複數のポーションを分けてれられるように區切った、割れないように強化したガラス素材のポーション容がついている。どのポーションかが判別できるように、ポーション毎にスイッチはが違う寶石だと可いわね!

で、ポーションとハイポーション、それに、マナポーションも口を開けてもらって直接飲ませてあげられたらアリエルなんかは楽ができるかしら?ということで、三種類かな!

うん、完璧!

リィンに相談に行こう!ここまでちゃんと考えておけば、今度はちゃんと相談に乗ってくれるわよね。

「ちょっと、リィンの鍛治工房に行ってくるわね!」

ミィナとマーカスに聲をかけてから、アトリエをあとにする。お供には大きな姿のリーフ。力つけたいから、また歩いていくわよ!

リィンとお祖父さんのドラグさんの工房について、その扉を叩く。

「こんにちは、錬金師のデイジーですけど、リィンはいますか?」

すると、ドアがヒョイと開いて、リィンが姿を現した。

「よっ!うちに用事?」

ニコッと笑って首を傾げる。

「うん、例の、ポーションを出する道についてもう一度相談したくて」

という私の用件を聞くと、今度は微妙な表に変わった。

「え〜、あれは、非効率的だからなしってことになったんじゃなかったっけ?」

すると、もう一人中から男の聲がした。

「コラコラ、リィン。お客様の話をそんなふうにいい加減に聞くんじゃないよ。デイジーさん、店の中へっておいで」

「ハイハイ、わかりましたよ、じーちゃん」

ひょいっと肩を竦めて、リィンは大きく扉を開けて私を招きれて、お祖父さんの座っているテーブル席の空席に私を案した。

リーフも一緒に店ってきて、中にいたレオンとお鼻で挨拶をする。そして、お互いにおしりの匂いを確認するようにクルクル回っている。

「ドラグさん、はじめまして。リィンにはいつもお世話になってます。錬金師のデイジーと申します」

そう言って私は、ドラグさんにぺこりと頭を下げる。リィンとは付き合いが長いのに、意外とドラグさんとは初対面なのよね。

「こっちこそ、リィンがいつも世話になっているね。話は々聞いているよ。で、今日はどんな相談で來たんだい?」

リィンのお祖父さんは、いかにもドワーフといったがっしり型に、真っ白な短めの髪のかな髭という容貌をしている。

店に來る前に構想した、『ポーション出機』の構造を二人に説明した。すると、意外にも興味を持ったのはお祖父さんの方だった。

「おやおや、お嬢ちゃんは面白いことを考えつくね!アナが『面白い弟子をとった』と自慢しとったのもわかる気がするわい!」

うんうん、と頷きながら、テーブルに置いてあった設計用の紙とペンを手元に引き寄せ、早速図面を起こしだしている。そして、お祖父さんはどんどん自分の世界にっていく。

「そうだね、中にれるのがポーションなら、ガラスはいいとして金には腐食のある金屬は素材に使えないね……とすると軽さと丈夫さを考えてミスリル製がいいかな。この、『トリガーを引いて貯めておいたポーションを出す』って仕組みの構造に使うバネやらも、ポーションを清潔に保つことを考えたらミスリルかね」

ふむふむ、と、一人で頷きながら図面に々と書き加えている。その姿はイキイキとしてとても楽しそうだ。

「こういう、技工士的なのが好きなんだよね、うちのじいちゃん。結構んな細工の個人オーダーが多くて、普段はなかなか捕まらないんだけど、今日はラッキーだったな!」

なるほど、いつ來ても不在だったのは人気技師で忙しいからだったというわけらしい。

「さてとデイジーさん。ひとまずオーダーは伺ったね。數週間作期間をいただくと思うが大丈夫かね?」

「もちろんです!よろしくお願いします!」

そして私はご機嫌でアトリエへと帰ったのだった。

數週間後、出來上がった『アゾットロッド』(ドラグさん命名)がリィンによってアトリエに屆けられた。アゾットロッドの名前の由來はアゾット剣。太古の昔に、アゾット剣に仕込んだポーションで人々を癒して歩いたという伝説の錬金師が持っていた、その剣の名前を取りれたのだそうだ。

魔導師が持つ杖の先端の寶石のかわりには、上から見ると六角形に見える三つに區切られたガラス瓶。それは、出口となる先端が尖り、六つの面を持った縦長。そして、下に行くにつれてし細くシェイプされた寶石のよう。ポーション、ハイポーション、強力マナポーションを充填すると、微妙な合いの違いによってグラデーションになってしい。

……ん〜!素敵だわ!

リィンにお代を支払ってから、私は辺りをきょろきょろ見回す。

「試し打ちしたいわね……」

そう思っていると、屆けてくれたリィンのそばにマルクとレティアがやってきた。

「よっ!久しぶり!討伐依頼の帰りなんだよ」

通り道なので顔を出してくれたということらしい。

あれ、よく見ると、マルクもレティアも小さな傷があるわね。

……うん、タイミングバッチリ!

「二人ともそこで立ってて!」

そう言って引き止めて、私は距離をとるために道に出て走っていく。

うん、この辺りかしら!

アゾットロッドを掲げて、スイッチをれると、パシュッ!パシュッ!とマルクとレティアにポーションを出し、彼らの傷を癒す。

「私の新裝備、アゾットロッドよ!マジックバッグ仕様だから、まずポーション切れもなし!」

私は、ロッドを持ったまま腕を掲げて、空いた手は腰へ。片足をし橫にずらしてポージングする。

「はあぁぁぁぁ?」

「デイジー……。もう、何を目指そうとしているのかよく分からないぞ」

前者のマルクが頭を抱え、レティアは首を傾げていた。

……え〜!どこを目指してって、回復師ってじの出來じゃない?

水鉄砲と悩みましたが、やはり魔導師の子ということで杖にしました( ᵕᴗᵕ )

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