《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》101.種まき

決闘騒で、アリエルがまだアトリエではなく実家の客人だった頃のお話。

その日、お店はミィナとマーカスに任せ、興味があることについて調べをすることにした。

読んでいるのは、王妃殿下からいただいた特裝版の『植大全』だ。子供の頃から持っていた図鑑よりも見た目だけでなく本自も分厚く中が充実している。その中の、『植配について』という項目に、今興味があるの。

配とは、お花が咲いた時に、異なるけど近い親戚のような種類の植同士で、違う種類の花をお花にポンポンくっつけると、違う種類の植ができることがあるらしい。まあ、錬金からはちょっと離れちゃうかもしれないけれど。

私は張りだから、すばやさの種を手にれた時、最初はこう思ったの。

『ポーションなら、それぞれ複數の種のエキスを出して混ぜれば、一回で複數効果のあるポーションができるんじゃないかしら!』

でも、もともと迷宮都市の冒険者のお姉さんたちに、『おトイレ問題』を相談されていることを思い出して、『それじゃきっと摂取水分量が増えちゃうわよね』と思い直したというわけなのよ。

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で、當初の予定通り種を育てることにして、かつ品種改良で思いついたことを実現できないかしら!と思っているのが今っていうわけなのよね。

……うーん。力の種とかってどこに売っているのかしら?

「ねえ、マーカス。聞いていいかしら?」

実験室に移して、納品用のポーションを調合中のマーカスに聲をかけてみた。

「えっと……。はい!なんでしょう?」

マーカスが作業の手をキリのいい所で止めて、聞く勢になってくれる。

「ステータス向上系の……例えば力の種とかって売ってるところ知らないかしら?」

うーん、とマーカスは顎に手を添えて唸る。

「そういうのは冒険者のマルクさんやレティアさんが詳しいのでは……」

困らせてしまったみたい。

……うーん、商業ギルドのお姉さんに聞いてみるかなあ。

私は、外出することを伝えて、リーフと一緒に街に出ることにした。私一人の時は、リーフには大きな姿でついてきてもらう。この方が安全だもんね!

力作りも兼ねて、徒歩で商業ギルドまで歩いて行く。

ビル前について、相変わらず高いなあと見上げてから中にる。

「こんにちは」

いつもの付嬢に挨拶をする。

「あら、デイジー様、いらっしゃいませ。今日はどんな用でしょうか?」

やはりいつもの綺麗な営業用スマイルで迎えてくれる。

「教えていただきたいんですけれど、ステータス向上系の種、例えば力の種とかを扱っているお店ってご存じですか?」

「……ああ、なるほど。あまり取引がない品ですから、迷われますよね……々お待ちください、確認してまいります。デイジー様は、ロビーのソファで待っていらしてくださいね」

そう言うと、彼は魔導式の通信機を使ってなにやら話し出したので、私は素直にロビーに移することにした。

……それにしても、魔導式の昇降機に通信機。王宮よりも贅沢なんじゃないかしら、ここ。

そんなことを考えながら待っていると、一度どこかへ移した付嬢さんが、手に袋を持って戻ってきて私の元へやってきた。

「デイジー様、お待たせ致しました。力の種だけなのですが、まだ商店に知らせる前のものがありまして、商店への卸値と同じ価格でしたらお譲り出來ます。如何されますか?」

「買い取ります!」

私は、即決してほくほくしながら自宅へ帰った。

アトリエについて、調理場に寄る。

「ミィナ、しイチゴジャム貰ってもいいかしら?」

「はーい!」

店舗で接客しているミィナに顔を出して、許可を貰う。

「お皿にちょこっと盛って……」

ジャム瓶からスプーンですくって、皿に盛る。そう、これは久しぶりに畑に顔を出すので、妖さんたちへの差しれ。遠出していた間も、マーカスと一緒に大事な畑を守ってくれていたものね。お禮は大事だわ。

お皿と種を持って、畑に出る。

「「「デイジー!久しぶり!」」」

笑顔の妖さんたちが私の周りに集まってくる。

「わっ!みんな今日も元気ね!ご無沙汰していてごめんなさいね。いつも畑を見てくれてありがとう。ジャムを差しれに持ってきたから食べてね」

そう言って、畑の道をしまっている屋外用の戸棚の上にお皿をコトリと置いた。そのお皿に、妖さんたちがわっと集まる。みんな味しそうに、手で掬って舐めているわ。喜んでくれていることが嬉しくて、つい、ふふっと微笑んでしまう。

「ねね。こないだ新しく來た子達の様子、見ていくでしょう?」

霊さんに昇格した例のの子が、うように小さなその手で私の手を引っ張って私をってくる。

「マーカスにお願いした、世界樹さんと、賢者のハーブと、癒しの苔達ね!」

「うんうん!みんな元気にしているわよ!」

われるままに、まず一番日の當たりの良い庭の端っこに連れていかれる。そこには、まだ小さな世界樹さんが、一生懸命を葉っぱにけていた。

「世界樹を連れてきちゃうなんてびっくりしたわ!でも、この子が育ったら私達にとっても、さらに過ごしやすい場所になるわ!」

自分の頬に両手を添えて、彼はうっとり夢見るように目を閉じて、嬉しそうにくるりと回った。

「そして、次はこっちね!」

今度は建に隠れる場所に、さらに戸板を斜めにして日當たりを悪くしたところに、癒しの苔が生えた巖が置いてある。ジメジメとしっかり気が保たれているようで、こちらも瑞々しくイキイキとして元気だ。

「あとは〜、畑の子達ね!」

「もう〜!そんなに引っ張らなくても畑の子達は逃げないでしょう?」

張り切っている霊さんの様子が可くて、くすくす笑いながら霊さんに引っ張られて畑へ移する。

行ってみると、賢者のハーブ、エルフの真珠草、エルフの癒し草、エルフの魔力草が、畑の土にしっかり付いたのか、大きく葉っぱを開いてお日様に向けていた。

「これで新りの子達は全部ね!もうしここに慣れたら、葉っぱを持っていっても大丈夫だと思うわよ!」

霊さんが、両方の腰に手を添え、エッヘンとばかりにを張る。

うーん。あとはさらに新しい子を植えたいことを伝えないといけないわね。

「ねえ、霊さん。私、この『すばやさの種』と『力の種』を育てて、配してみたいのよね」

そう言って、二種類の種を三個ずつ、計六個を持っていた袋から手のひらに出して見せた。

霊さんは、私の言葉を聞いて首を傾げる。

「……デイジー、三つずつしか種がないんでしょう?だったら、配はまだ気が早いわ。まずはこの子達を一度普通に実らせて、ちゃんと種を増やさないと!配なんて最初からやって失敗したら種が無くなっちゃうわよ?」

あらら。気が早いって言われちゃったわ。

「そうねえ、最初は水捌けの良い鉢植えに植えた方がいいわ。で、しっかりが育ったら大きな鉢か、地面に植え替えってところかしら……あ、そうそう、その子たち、『木』になるからね」

……あれ。何となく今まで畑に植えてばかりだから、てっきり畑に植えるものだと思っていたら、木に育つのかぁ。そりゃあ、言われてみればそうよね、これはどう見ても『木の実』だわ。

結局、開店時のお祝いの鉢植えのお花も終わって、余っていた橫長の鉢植えに、土と作り置きの『かな土』を混ぜたものをれて、種を同じ種類ごとに三個ずつ植えることにした。

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