《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》208.教科書の

「さて、今日集まってもらったのは、デイジーが作ってくれた、教科書についての査が目的だったね」

陛下が、今日の本題に話題を切り替える。

「はい、お持ちしました」

私は、書類れから教科書の原案である紙の束を取り出し、丸いテーブルの中央に、陛下がお読みできる方向で差し出す。

錐で二つを開け、紐で結いでまとめた紙束を、陛下が手元に引き寄せ、そしてパラパラとめくって確認されている。ざっくりと全の構を確認されているのかしら?

「言葉は平易。これなら、貴族の子だけでなく平民の子でもわかりやすい。どう思われますか、樞機卿」

陛下が隣に座る樞機卿に読みやすいよう、教科書の原案を傾ける。

「そうですね。一部難しい概念や用語も出てきますが、きちんとそのページに注釈をもうけている。これならば、しっかり読み込み、教師に教えを乞えば、教會で學んだ平民の子でも努力次第で理解できるでしょう」

今度は樞機卿猊下が目次をじっくりと眺めた後、ゆっくりと全を確認した後、そう、想を述べられる。

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やはり猊下は、教會で預かっている孤児達のことを案じておられるのだろう。

お優しいお方なのだなと思って、嬉しくなって思わず私の口元が笑みの形に緩む。

次に、原案はホーエンハイム子爵に回される。

子爵も、やはり目次をしっかり確認される。

「ああ、錬金師としての心構えなどをまず最初に教える。これは大切ですね」

そう言って、口元に微笑みを浮かべると、その年月をじさせる顔に、優しげな皺が寄る。

そして、さらにページをめくっていき、ポーションの製造について書かれたページにも目を留められる。

「うん、よく書けている。數値も季節ごとの分量が示されている。これならば、一年を通して安定した品質の薬品が作れるね」

そう言って褒めてくださったけれど、なぜか子爵はそのページに留まったまま、うーんと何事か悩まれている様子だった。

「何か、記述に不合があるのでしょうか……?」

私は気になって、そんな子爵に聲をかけてみた。

すると、子爵はハッとしたように顔をあげ、おそらく不安げであろう私の顔を見て、にっこりと笑って首を橫に振る。

「いやね、記載に不備はないんだ。けれど、原料となる植に類似した……、例えば『癒し草モドキ』みたいな誤りやすい植がある場合、その見分けかたを含めて書いておいた方が良いかな、と思ってね」

子爵にそう言われて、私はハッと気がついた。

私は鑑定があるから、そういったものは、探すときにすぐに採取候補から排除できる。

でも、地方に散った子達は、教わっていないと、違う植を使ってしまう恐れがあるのだ。

「考えが至りませんでした。……申し訳ございません」

私は、し気落ちしながら、陛下、猊下、子爵に頭を下げた。

「いやいや、そのために今日集まっているんだ。デイジー、君の貢獻に謝こそすれども、責めたりはしないよ」

陛下が、笑って私をめてくださって、猊下も子爵も笑顔で頷いてくださった。

私はしほっとした。

「世に出す本も教本も、皆推敲に推敲を重ねて、書き改めてやっと完するんだ。修正がるのは當たり前のことと気楽に思っていていいよ。それに、君の原案は原案として非常に優れているからね」

子爵が優しく私の作った原案を褒めてくださった。

「ああ、そうだね。そんな推敲に推敲を重ねる子爵に與えた宮廷の部屋は、書き損じの紙に、初稿、二稿と沒の紙の山だからなあ」

あはは、と陛下が子爵を弄って笑う。

それを聞いた猊下も微笑まれ、私も釣られて笑顔になった。

……お優しい方々ばかりで良かった。

私は、やっとに囚われていた自分に気づき、それが解れるのをじた。

「じゃあそうだね……、こうしてみないかい? 私は、これを一度お借りして、提案できることを違うのインクで書き加えよう。そして、それを準男爵にお返しし、採用するか、検討してもらう」

そうして、癒し草の絵の描かれたページを指し示し。

「ここに、『癒し草モドキ』について書き加える、とかね」

そう言って、先程の指摘で例示してくださった。

「とすると、しばらく錬金師としての観點から、ホーエンハイム子爵とプレスラリア準男爵の間で検討しあうということで良いじですかな?」

猊下が陛下に尋ねられた。

「うん、そうだね。二人に任せようと思うが、どうだい?」

陛下は、子爵と私を互にご覧になる。

そして、私と子爵は顔を見合わせ、笑顔で頷きあった。

「一度、原案をお預かりさせていただいて、提案を出し切ったら、我が家にお招きしましょう。そこで共に検討しあうというのはどうでしょう? 勿論、準男爵とはいえ若いお嬢さんをお招きするのですから、ご実家にもその旨はご連絡差し上げますよ」

そう言って、私はホーエンハイム家に招かれることとなったのだった。

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