《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》213.リリーの進む道

そうして、充実した時間というものはあっという間に過ぎていく。

私達が、ホーエンハイム家をお暇する時間が近づいてきた。

私は、子爵と十分に教科書の原案について語り盡くせた。

マーカスとルックは、珍しい機材や、古い本に大興の一日だったらしい。

そして、一番収穫があったのは、リリーかもしれない。

は、『花火を作る』という新しい選択肢を得ることができたのだ。

玄関への見送りには、子爵や、お世話になった侍従達に加え、アルフリートまで顔を出していた。

「また、いつでも來てくださいね」

子爵が、私達みんなに順番に笑顔を向けてくださった。

「そうだぞ! リリー! 明日でもいいぞ!」

彼は、お日様のような笑顔で、リリーに腕を振って見せた。

リリーは、心持ち顔を赤らめ嬉しそうな顔をしながらも、「どうしよう」とでもいうように、私と彼の顔を互に見る。

「こら! アル!」

子爵が、いつでもおいでというのにかこつけて、アルフリートがリリーをうものだから、アルフリートは子爵に嗜められていた。

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「リリーちゃん。アルへの気遣いじゃなくて、君自が、アルのやっている研究に興味が湧いたのだったら、その時は、いつでもおいでなさい」

子爵がリリーの元へやってきて、彼の頭を優しくでた。

「その時は、みんなで歓迎するよ」

「はい!」

リリーが顔を上げて、元気よく子爵に返事をしていた。

そして私達は、挨拶をして実家から出してもらった馬車に乗って、アトリエを経由してマーカスとルックを先に帰し、私とリリーは実家に向かったのだった。

そしてその日はお夕食を実家で家族全員で囲みながら、今日リリーに起こったことを相談することになった。

「ええっ! の子で弾ですって?」

真っ先に心配そうな聲をあげたのはお母様だった。

「ロゼ。の子だからといって、將來の道を狹めてはいけないよ」

お父様がお母様を嗜める言葉を発するのも珍しい。

「それはわかりますが、私も心配ですわ。可い妹ですもの。跡に殘る怪我でもしたらと思うと……」

お姉様も、何も弾じゃなくても……と渋い顔をする。

「違うわ、アルが作りたいのは弾じゃないわ! 花火っていうのよ。夜空にお花を咲かせて、みんなを笑顔にする、すごい発明になるはずなんだから!」

いきなり反対寄りの意見ばかりが集中したものだから、リリーが「そうじゃない!」と抗議する。

「ご心配なのはわかりますが、子爵邸では錬金を嗜んだ大人の近侍が、常に側に控えています。萬が一の時は彼が真っ先に対応してくれるでしょう」

私は、どちらの味方というわけでもなかったのだけれど、今の流れをけて、なぜかリリーの主張を応援したくなった。

私は、魔導師になれなかった分、『おうちのお役に立ちたい』と必死に錬金を勉強した。

リリーは、の繋がらないことを気にし、そして私に救われたことを恩にじて、『お姉様のような錬金師になりたい』と言ってくれる。

嬉しいんだけれど、し気にかかっていたのだ。

『家の一員として認めてもらうため』、そのために私のようになりたい、そんな必要なんてないんじゃないかって。

リリーのその必死さが、い日の私とリリーとで、今までどうしても被っていた。

だから、本當にリリーが私の背中を追いかけることが、彼のためなのか心配だった。

もちろん、彼が將來私のアトリエに來てくれることを夢見て、部屋の増築も済んでいる。

けれど、錬金師には、いろんな研究対象がある。

それを私は、師匠であるアナさんに教わった。

そして同じように、リリーは今日、ホーエンハイム子爵家で、初めて知ったのだ。

錬金とはポーション作りだけではないのだということを。

そして、無から有。

新しいものを作ろうとするアルフリートを目の當たりにした。

「デイジー。デイジーはどう思うんだい? 君は錬金師だ。リリーに最も立場が近いね?」

「はい、お父様」

私は、お父様に言われて、頷いた。

「リリーが研究したいと言っている、花火というものは、ホーエンハイム子爵のご長男の三男、つまり、お孫さんのアルフリートが研究しているものです」

「ふむ、続けて」

お父様が促すので、私は説明を続ける。

「はい。そして、そのアルフリートは、鉱山発破用の弾を七歳にして作り、國に納品を認められた腕の持ち主です。今は八歳だそうです」

「うん」

「アルフリートは、リリーの理障壁が火薬を扱うにあたってとても助かるのだそうです。そして、リリー自の錬金師としての勘の良さも、褒めています」

「うーん、なるほどね。ホーエンハイム家と言ったら錬金の名家。その家と友好を結べることは、リリーにとって素晴らしいご縁だろうね」

お父様は手を組んで思案する。

「そう、思います」

私は、お父様に同意して靜かに頷いた。

「みんな、今度ホーエンハイム子爵をお招きして、きちんと親としてお話をしようと思う。それでいいかな?」

お父様の家長としての言葉に、異論をあげるものはいなかった。

いよいよ今週末の金曜日(6/25)に、『王都の外れの錬金師~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~』のコミカライズが始まります!

楽しみにお待ちください!

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