《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》219.ご主人様の奪い合い

うーん、ちょっとどういうことなのかしら?

お父様の家系図に何か隠し事があるの?

それともお母様の出自にがある?

そういえば、あまりお母様の実家の話って話題に上がったことがないわね……。

今から思えば、不自然なくらい、お母様に関することって聞いた記憶が思い當たらなかった。

頭の中を整理する間も、赤竜がり付いて離れない。

私はもう抵抗する気力もなく、されるがままになっている。

「ねえ、どうしよう?」

今後は放置されたと怒らせないよう、赤竜の頭をでながら、目線を塔に一緒に登ってきた仲間たちに向けて尋ねた。

の味を確認して、赤竜である彼が斷言しているのです。なら、この塔の主人だったグエンリール様はデイジー様のご先祖様だということじゃないですか?」

「そうなのかしら……?」

アリエルは、エルフという長命種ゆえなのか、世界樹と共に生きる中で不可思議に慣れているのか。

素直に考えれば導き出される答えを、け止めているようだ。

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「まあ、その辺りはご両親に確認する必要はありそうだね」

「それは……、リィンの言うとおりだわ」

リィンも割と平然としている。

確か、亡きドワーフ王國の末裔だとかって話だったわね。

だから、こういう事態にも落ち著いて構えられるのかしら?

そして、その橫でお約束のようにマルクが頭を抱えてしゃがみ込み、レティアは泰然としているといったじである。

もちろん、リーフもレオンも……と思ったら。

……あれ、違う?

リーフの様子がなんだかおかしい。

尾を後ろ腳の間に丸めて引っ込めて、私に抱きついている赤竜を睨んでいた。

「え? リーフ、どうしたの?」

普段の穏やかな彼とは違う、まるで怒っているかのような様子に、私は驚いて聲をかける。

「どうしたも、こうしたもありません! デイジー様を『主人(あるじ)』と呼んでいいのは、私だけのはずです! ずっとお守りしてきたのは、私です!」

リーフが人の言葉でそう主張する。

なるほど。嫉妬、ヤキモチというものなのだろうか?

でも、と、リーフの主張はもっともなのではないかと思いなおした。

だって、リーフは私が八歳の時からずっと守ってきてくれた。

寂しい日には一緒に眠ってくれたりもした。

そんな彼を、ないがしろにしているわけじゃない。

けれど、最初に一度きちんとはっきりさせなければいけないだろう。

「ねえ、赤竜さん」

「ん? なぁに?」

私の聲に、り付いていた赤竜が顔を上げる。

「あなたが私を『主人(しゅじん)』だと言ってくれるなら、あなたには先輩がいるの」

その言葉に首を傾げる赤竜に示すように、片手をリーフに向ける。

「彼はリーフ。霊王様から遣わされた聖獣よ。今まで彼が私を守ってきてくれたの。だから、彼はあなたの先輩だわ。彼をたててくれないのだったら、あなたが私を『主人』と呼ぶのも認められない」

キッパリと言い切った私の言葉を聞いて、リーフが喜び溢れんばかりに瞳を輝かせ、尾を持ち上げて大きく振った。

それと対象的に、赤竜は戸いと落膽と悲しみの混じったような表に変わる。

「ええと……デイジー様……だよね。それと、リーフ様。……ボクは、デイジー様に……グエンリール様のを引くデイジー様に仕えたいんだ。だって、ボクを拾って育ててくれたグエンリール様はもういない。ずっとずっと前からいない。……ボクは……寂しいんだ」

赤竜がそう訴えながら、私から一歩離れ、瞳からあふれる涙を自らの腕で拭う。涙聲には、ぐずぐずと鼻を啜る音が混じっていた。

「……もう、ボクは一人は嫌なんだ! やっと、やっと、ご主人様を見つけたと思ったのに……! 會えたと思ったのに……! ちゃんと、序列は守ります。だから、ボクを拒否しないで……!」

ぼろぼろと涙をこぼし、両手をぎゅっと握りしめて訴える赤竜。

そこまで訴えられたら、私も彼の涙につられてが締め付けられるようで、つい、「いいよ」とれてしまいたくなる。

……でも、まずここは、リーフをたてないと。

そう思って、目線をリーフに向けた。

リーフは、泣きじゃくる子供を前にして「仕方ありませんね」とでもいうように、ふっと表を緩める。そして、赤竜のそばへ歩いていく。

そして、彼の固く握りしめた拳を、ベロンと舐め上げる。

そのに驚いたのか、まだ涙でいっぱいの金の瞳が、ぱちぱちと瞬く。

霊王様も、デイジー様を守護するものが増えることは、きっとお喜びになるでしょう。……デイジー様の行く道を、共に支えてくれますか?」

「うん! 喜んで!」

ガシッと赤竜がリーフに抱きつくと、涙で濡れた頬をリーフがぺろぺろと舐めとっていた。

……ん? あれ?

主人のはずの私を放って、勝手に結論づいてない?

それと、『デイジー様の行く道』とか、なんか大袈裟にしないでくれる?

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