《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》221.塔に篭った賢者

私のご先祖さまだという、グエンリール様の居住階。

ウーウェンの案のもと、賢者の塔の最上階を私達は見回していた。

「あれ……?」

本ばかりかと思ったら、無造作に小さな小箱がたくさん置かれている棚があった。

なんていうか、本當に適(・)當(・)に(・)置(・)き(・)ま(・)し(・)た(・)というように鎮座している。

「ねえ、ウーウェン。これはなぁに?」

私は手をばしてれようと──開けようとしたものの、それはどうかと思って、ウーウェンに聲をかけた。

「ああ、それはね。グエンリール様が集めたり作ったりしたものだよ。本職じゃないけどね、グエンリール様は錬(・)金(・)(・)師(・)に(・)な(・)り(・)た(・)が(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)から」

……え? 賢者なのに、錬金師になりたかった?

私は首を捻る。

まるで、私の真逆のような人だ。

「本職……神から與えられた職業は賢者だったけれど、それを極めて飽きてしまわれてね。錬金師の友人もいたことから、そっちに興味を持ち出したんだよ。あくまで趣味だから神からの恩恵はなくてね。苦労していたみたいだよ?」

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ウーウェンが説明しながら、見てみるか? というように、いくつかの箱にれる。

私はそれに頷いて、ひとつの箱を手に載せて、開けてみた。

「指……しかもこれ、特殊効果が付いているわね?」

鑑定で見てみると、特定の屬に防力がつく指だった。

「あ、わかります? ああ、そうだ! ひとつ、とっても謝らなきゃいけないことがあるんです!」

そういうと、ウーウェンが急にブンッと勢いよく頭を下げた。

「ボクは、ここの塔の管理者として、グエンリール様の産を守っていく立場だったんです。でも、ひとつだけ、ボクが留守にした隙に、下の階のやつに持っていかれちゃって……」

ウーウェンは、頭を下げたまま説明する。

「あれは、グエンリール様がお持ちの指の中でも、一番優れていたもののひとつだというのに……」

ウーウェンはそう呟くと、を噛んだ。

「指……下の階」

「なんか裝備品で厄介になったやつ、いたよな。すげー面倒なやつ」

レティアとマルクが、ウーウェンの言葉にピンと來たらしい。

「あの、それって……」

アリエルが、指がはまった自分の指を眺めてから、リィンや私に確認するかのように視線を送る。

皆がアリエルの方を見て、頷いた。

「ねえ、ウーウェンさん。それってこの石かな?」

アリエルが、ウーウェンのそばへ歩いて行って、手を持ち上げて、彼に自分の手の甲の側を見せる。

下げていた頭を上げて、その石を見ると、みるみるうちにウーウェンの目が丸くなる。

「……それ! ど、どうして!」

當たりらしい。

アリエルが指にはめている指は、初めてこの塔に私達が來たときに三十五階にいた、ノーライフキングが裝備していたものだ。

全屬(基本四屬と闇とと聖と邪)の魔法無効、理攻撃も無効にするという、とんでもない品だった。

「三十五階のノーライフキングが持ってたわよ? これのおかげで、あれを倒すの大変だったけど……」

アリエルがそう言って、私に目を向ける。

あの難局は、私の『緑魔法』で乗り越えたからだろうか。

そして、その話を聞いたウーウェンは安堵からか、大きく吐息を吐いて、で下ろす。

「ご主人様、お仲間の皆さん、ありがとう……! どうしようかと悩んでいたんだ」

「だとすると、私がはめていていいのかしら? デイジー様がけ継ぐ産なんでしょう?」

安堵するウーウェンと対照的に、アリエルは困顔になる。

「家族とも話をするけれど……。アリエルは大事な預かり人だし、今はつけていてしいわ」

だって、アリエルはのエルフの王。しかも一人娘なのだ。

未來のエルフの王を預かっていて、死なせるわけにはいかない。

そう説明して、アリエルにははめたままでいてもらうことにした。

私は、ひとつ疑問が浮かんで、ウーウェンに尋ねた。

「ねえ。ウーウェン」

「はい。なんでしょう?」

「グエンリール様って、本職じゃないけれど錬金をたしなまれていて、ご本人が作ったものがある、って言っていたわよね?」

「うん、そうだよ!」

「……じゃあ、錬金の作業場もこの塔にあるのかしら?」

そう。

賢者グエンリールは、賢者だけであることには飽きてしまって、錬金を含む全てを學ぶためにこの塔に篭ったのだろう。

それは、ありとあらゆる分野の書が収められていることからも、想像がつく。

そして、彼が作ったものもあるという、寶飾品たち。

そうすると、それを作るための道がここにはあるはずだ。

「ああ! それならこっち!」

ウーウェンは明るい表で、私の手を取ってフロアの奧へと引っ張っていく。

奧には、扉のないり口があって、さらに別の部屋へと続いていた。

そして、そこにあったのは、私の作業場よりも、古い型の道達。

例えば、蒸留はまだ『アランビック』と呼ばれていた、古い時代のものだ。

「……うわぁ!」

そんな、錬金の工房が、居住フロアの奧に広がっていた。

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