《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》225.國王陛下への報告①

お母様の告白によって、お母様が賢者グエンリール様の子孫だったということが判明した。

お母様は、今まで隠し続けてきたことへの罪悪なのか、お父様の服の裾を握った手が震えていた。

「ヘンリー。今でも私は、あなたと離れたくはないのです。……どうしたら、良いのでしょうか。あの塔の産がという話になれば、きっと『誰ので』と問われることでしょう。そうすれば……!」

お父様を見つめるお母様の瞳から、一筋涙がこぼれ落ちた。

「ロゼ……。私たちには既に立派な子供達がいる。それを今更私たちの結婚を無かったことにしようとなど、流石に思われないだろう」

お父様が、お母様の手の上に自分の手を添えて、優しくさすっていた。

「お父様」

そこに、私が口を挾む。

「どうしたんだい、デイジー」

「はい。その、赤竜のウーウェンが、私を主人にしたいと、ついてきたいと言っているのです。その、もう一人は、嫌だと……」

「赤竜が、デイジーに……」

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お父様が、また頭を抱えた。

「陛下へのご報告案件か。……さすがに、赤竜を勝手に王都で飼うことは許されないだろう」

「そう、思います……」

三人の間に沈黙が漂った。

「あの子、ウーウェンがデイジーを選んだのが、なんだかわかるような気がするんです」

その沈黙を破ったのはお母様だった。

「どういうことだい、ロゼ」

「グエンリール様は、賢者の職業を與えられていました。けれど、彼は早々に賢者の學びを終えてしまうと、今度は錬金に興味を持ち、その研究に沒頭したのです。……そのために隠遁したのがあの塔で、それを支えていたのがウーウェンという子だと、私の母から聞いています」

お父様は苦笑いをする。

「まるで小さい時のデイジーの真逆を行くような方だね。……そして、彼の願いが葉ってデイジーが生まれたような気がしてきたよ」

私が錬金師の職をいただいた、五歳の洗禮式のことを思い出しているのだろうか。お父様の瞳は懐かしさとともに、今置かれている狀況に対する困で複雑に揺れいていた。

「……私が錬金師の職をいただいたのは、必然だったのかもしれないのですね」

私は、ぽつりと呟いた。

「私はあの塔で、グエンリール様が殘した錬金に関するとても大切そうな本や、素材を見つけました。それは、を継ぐ私が見つけるために、そこにあったのかもしれません」

あの五歳のとき、私は、「家族と同じ魔導師になれない」と泣いて部屋に篭った。けれどそこは、家族と違ったのではなくて、ちゃんと家族……お母様のを継いでいたからこそ錬金師の職業が與えられたのかもしれない。

「「デイジー……」」

お父様と、お母様が、私のことを気遣わし気に名前を呼んだ。

「……! 大丈夫です! ただ、私が錬金師の職業を與えられたのにも、理由があったんだなあって、し、昔が懐かしくなっただけで……」

私は、お父様とお母様に心配をかけないように、笑顔を作った。

「……デイジー。あなたは、錬金師になったことを、後悔している? まだ……魔師に……」

「いいえ! 私は、錬金師が天職だと思っています。錬金師だからこそ、王都の沢山の仲間たちに出會えたんです。それを否定する気持ちは一切ありません!」

お母様が、ほうっとため息をつく。

「じゃあ、お父さんは、陛下に報告する手筈を整えよう。そして、デイジーとロゼのためにも、最善の結果になるよう、頑張ろう。……それが、私が家族のためにできることだね」

お父様が、決意を定めた眼差しで、私とお母様と互に視線をえた。

三人で話し合った容は、お兄様とお姉様にも伝えられた。リリーは、縁上の関係がないことと、そもそもすぎるということで、先々伝えようということになった。

そうして、國王陛下との面會が行われることになったのだった。

王都の王城。

その応接間で、私とお父様、お母様が、國王陛下と宰相閣下と面會していた。

最初は、極限られた人數でとお父様が調整なさったのだ。

「デイジーが、旅の仲間とともに賢者の塔を踏破したんだったな」

「はい。その件で、々ご相談すべきことがあって參りました」

陛下の切り出しに、お父様が回答した。

「賢者の塔といえば、古の大賢者グエンリールが隠遁したとも言われる塔。して、それは真実だったのか?」

宰相閣下が尋ねてこられた。

「はい。確かにグエンリール様の死後も管理人を務めていたものが、そう証言しました」

その問いには、當人である私が答えた。

「……死後の管理人? グエンリールは二百年とも三百年とも言われるほど昔の人。その長い時間を誰が管理していたというのだ?」

陛下が首を捻った。その眉間には「理解ができない」といった様子で皺が寄っている。

「赤竜です」

「「竜⁉︎」」

「はい。あの塔は、グエンリール様の死後も、彼が育てた赤竜がずっと管理していました。彼は人化もできますし、會話も可能です。……その彼は、私のことを『グエンリール様の子孫だ』と言ったのです」

私の証言に、陛下と宰相閣下がこれでもかというほど瞠目した。

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