《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》230.アトリエの新メンバー
無事に検問を終えた私達は、真っ直ぐにアトリエに向かった。
「お帰りなさい!」
孤児院の私塾から帰ってきたらしいルックが、アトリエの前を掃き掃除していた。そして、店の外に出ている彼を守るかのように、魔導人形のピーターとアリスがふわふわと飛んでいた。
ルックは、もうすぐ開校する國民學校の錬金科に學予定だ。
「ルック、お掃除ありがとう。ピーターもアリスも、お店のみんなの護衛をありがとう。後で紹介するけど、今日からこの子、ウーウェンが仲間りするからよろしくね」
「ルックです! 錬金師見習いです。よろしくお願いします!」
「ピーターです」
「アリスです」
「ボクはウーウェン! よろしく!」
挨拶をする間も、ルックはウーウェンの側頭部に生えている丸いくるんとしたツノが珍しいのか、彼の顔とツノを見比べていた。
パン工房を覗くと、ミィナとアリエルが忙しそうに店を歩き回っている。
「あ、デイジー様! お帰りなさい!」
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そんな中、ミィナが私を目に止めて、聲をかけてくれた。
「お帰りなさい!」
ミィナの聲で気がついたアリエルも私に挨拶をしてくれた。
「この子はウーウェン。アトリエの新しい仲間になるから、後で紹介するわね!」
「「はぁい!」」
揃って明るい返事が返ってくる。まあ、アリエルは既に彼のことを知っているのだけれど。
「ミィナ。夕食はこの子の分もお願いね」
「わかりました!」
お店も閉めて、落ち著いて食事を取るときにゆっくり紹介しようと思っている。だから、ウーウェンの分の食事もお願いしておいたのだ。
あとはマーカスね。
ウーウェンをって、二人で錬金工房の方へ歩いていく。
表の通りの方、お客さん用のドアを開けて店にる。チリンとドアベルの音がして、それに気づいた作業中のマーカスが、その手を止めて振り返った。
「いらっしゃいま……ああ、デイジー様。お帰りなさい!」
來客用の笑顔よりも、よりらかい笑顔になったマーカスが挨拶をしてくれた。
「ただいま、マーカス。この子はウーウェン。後でゆっくり紹介するけど、これからアトリエの仲間に加わるからよろしくね」
「ボクはウーウェン。よろしく!」
軽い挨拶をしてその場の紹介を済ませる。
あとは、……畑のみんなね!
ってきたドアを開けて外に出て、ぐるりと表から裏の畑へと回る。
「……何ここ」
畑に足を踏みれて、その景を目の當たりにしたウーウェンが絶句する。
「あれはマンドラゴラ! グエンリール様だって手にれるのに苦労していたのに!」
私の畑で楽しそうに歌っているマンドラゴラさん達が、歌うのをやめて、ウーウェンに聲をかけた。
「「こんにちは!」」
「こ、こんにちは……」
そして、妖さんや霊のリコもウーウェンの周りを囲む。
「この子はだぁれ?」
妖さんの一人が首を傾げながら、彼のツノをツンツンと突いている。
「やだ、デイジー! 今度は誰をお友達にしちゃったの⁉︎」
リコは、なんだか私のしてきたことを察している様子で尋ねてくる。
「この子はウーウェンよ。実は赤竜のの子なの。ご先祖さまが彼を育てたらしくて、私と一緒に來たいと言ったのよ。だから、アトリエの仲間になってもらうことにしたの!」
「ウ……ウーウェン、です。それにしてもこの妖と霊の數って……」
自然を司るもの達が、この畑に無數にいることに、ウーウェンが再び絶句している。
「だぁって。デイジーは緑の霊王のし子だもの! 霊や妖が彼のそばにいたいと思うのは當たり前でしょう? あ。し子っていうのは他所で喋っちゃダメよ」
ウーウェンの疑問に、リコが答えた。
「え? 霊王のし子⁉︎ 神のし子⁉︎」
そこまではウーウェンでも気付いてはいなかったようで、口をパクパクしながら私を見て瞠目する。
……うーん。彼も面識のあるリィンもそうなんだけどな。
とは思ったものの、驚愕続きらしいウーウェンにさらに今追い討ちをかけることもないか、と判斷して、そこはまだにしておくことにした。
さらに、この様子だと、世界樹さんもここにいるっていうのを教えるのは、また後日にしたほうがよさそうね。
◆
そうして、夜になってアトリエを店じまいしたあと、みんなで二階の食卓でウーウェンの紹介をすることにした。
「え? 赤竜⁉︎ 守護竜⁉︎」
マーカスが、口にしようとしていた一口大のおをぽろりと皿の上に落とした。
そんな彼を含めて、みんなの目が驚きでまんまるだ。
「ええと、最近街にふれが出た、『ザルテンブルグの守護竜』のことなんでしょうか?」
ミィナがナイフとフォークを皿に置いて、気を取り直したように私とウーウェンの顔を見比べている。
「正確には、ボクは『デイジー様の守護竜』だけどね! デイジー様のお仲間なら、ボクはみんなのことも守るよ! よろしく!」
ミィナの言葉を若干訂正しながら、ウーウェンが食卓を囲むみんなに友好的な笑みを浮かべた。
「はわわわ。竜さん……! そのツノはやっぱり竜さんだからなんでしょうか?」
やや頬を紅させたミィナがウーウェンに問いかけた。
「そうだよ! うーん。流石にここじゃ本當の大きさにはなれないけど、小さめならいいかな?」
そう言って、ウーウェンが手に持っていたフォークを皿に置いて、椅子から立ち上がる。
そして。
ぽふん、と赤い子竜の姿に変化した。
「はわわわ! かわいい! 本の竜さんです!」
がたんとミィナも椅子から立ち上がって、子竜姿になったウーウェンに駆け寄り、ぬいぐるみを抱きしめるかのように、そのに抱き寄せるのだった。
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