《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》232.學式①

とうとう、國民學校の開校の日がやってきた。

私とマーカスが、ルックに付き添い、そして、リリーにはお父様とお母様が付き添っている。

私たちは、その真新しい門の前に立っていた。

國民學校のり口から學舎へと通じる道の両脇には、まだい木々が等間隔で植えられている。

その木に茂る、春に芽ぶいた若葉はまだ小さくく見えて、まるで學式を迎えた子供達を思わせる。

春の日差しは暖かで、初々しい子供達の前途を祝福するかのように彼らを照らしている。

道の先に建っている學舎は、木造で簡素だけれどしっかりとした作りの建だ。

既存の貴族の子息のためだけの學舎でないということもあって、こういう作りになったのだと、ホーエンハイム子爵から、私はその意図を聞いていた。

「陛下は本當に賢王でいらっしゃるのね。分を問わず、國民みんなのための學校を作るなんて」

リリーと手を繋いだお母様が、嘆のため息をらす。

「私は今日からここに通うのね!」

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リリーの言葉遣いも、出會った頃よりしっかりしてきた。

そんな彼は、真新しい學舎を見て、キラキラと瞳を輝かせている。

ちなみにリリーは、読み書き計算といった一般教養は、実家で家庭教師をつけてもらっている。だから、彼學するのは、錬金科だけなのだそうだ。

リリーは昔私が使っていた離れの実験室を與えられて、錬金れてはいたものの、自分だけではできない作業をケイトに手伝ってもらったりしている。

だから、『私の模倣』や『ホーエンハイム家で好きな実験だけをする』のではなく、錬金の基礎を別に學んだほうが、彼の將來のためになるだろうと両親が判斷して、錬金科に通うことになったのだ。

「やっと、錬金を學べるんだ!」

マーカスに手を引かれたルックが、頬を紅させている。

そんな彼は、私塾で一年とし勉強したものの、特に計算などではまだまだ弱い部分がある。

だから、私とマーカスとルック本人で相談した結果、彼は一般教養を教える普通科と錬金科の両方に學することにした。

「さあ、いこうか」

お父様がみんなを促した。

そうして、學式を迎える子供達を迎えられるように、開いた狀態で固定されているり口を潛るのだった。

ると、真新しい木の香りが鼻腔をくすぐる。

これからの子供達の未來のために作られた、新しい學校!

國の未來が輝いて見えるようで、私のが高鳴る。

學式を行うのは、こっちのようだね」

お父様が進行方向を示す記號とともに、新生とその父兄を導するために設けられた案板を見て、「こちらだ」と指さした。

私達は、學式の會場へ向かう。

そこは、上段が設けられ、その中央に演説臺(?)のようなものが設置されている。

上段の端には、ホーエンハイム子爵をはじめとした先生方が並ぶのだろうか? 椅子がいくつか並べられていた。

下段というか、フロアにも椅子が並べられている。

板に、前方は學する生徒の席、後列はその保護者用だと書かれていた。

もうすでに、ちらほら著席をしている人たちがいた。

分はまちまちだ。

服裝から推測するに、平民と思しき人、下級貴族、上級貴族がいる。

開校前の打ち合わせで國王陛下から聞いたのだけれど、普通科にる子供は家計的に苦しい下級貴族や平民が主なのだそうだ。

まあ、そうでなければ、一般的には各家が家庭教師をつけて學ばせるものなので、それはそうかというじだ。

そして、錬金科は、分を問わず、洗禮式で『錬金師』を與えられた子供達が學をするらしい。もちろん、教會の孤児院の子供達もだ。

事前に、(自分で言うのもなんだけれど)優れた錬金師である私が教科書を作り、錬金師の古い名家であるホーエンハイム元子爵(家督は嫡子に譲ったそうだ)が教鞭を取ると周知したらしい。

子供の將來を考えた親たちがこぞって學希を申しれたそうだ。

「じゃあ、リリーとルックが座るのは、あっちね」

私は二人に、向こうへ行くよう指で指し示した。

「お父様、お母様、お姉様。また後で」

「デイジー様、マーカスさん、行ってきます!」

そうして、二人が生徒席へと駆けていった。

……リリー。ルックにつられたのだと思うけれど、貴族の娘があんまり走っちゃダメよ?

それは、お父様もお母様も思ったようで、二人を見送った私たちが三人で顔を見合わせた。

「あらあら。そんなに學式が嬉しいのかしらねえ」

お母様は、仕方がないわね、といった様子で、微笑ましさを含んだ苦笑いをしていた。

やがて、用意された生徒達の席が埋まる。

保護者席も割と混み合っていた。

すると、壇上に一人の男が現れて、學式の開始を宣言した。

「今日は學式であり、この國民學校の開校式でもあります。特別に、國王陛下が學する君たちに挨拶をしたいと來てくださいました!」

……まさかというか、やはりというか。國王陛下がご來場されていた。

ルック君がやっと錬金師の道を踏み出すことができました……!

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