《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》233.學式②

陛下が壇上にお姿を現して、中央にある臺に向かう。

學生諸君、おめでとう!」

國王陛下が、臺に到著する。そこには、魔道の一種である小型の拡聲があり、それをとおして陛下は、子供達に聲をかけた。

子供たちは、親の躾のとおりきちんとしている子や、平民なのか、初めて陛下のお顔を見て、落ち著きのない子もいる。反応はさまざまだ。

遠目に見えるリリーは、姿勢を保って、じっと陛下のことを見つめている。

ルックは驚いた様子で、陛下を見たり、こちらを振り向いてみたりする。

けれど、おそらくは學校関係者か教師なのだろう。壇上で陛下を紹介した進行役の人も、そんな子供達を咎め立てすることはなかった。

まあ、必要に応じて、そういったものも普通科で教えていくのだろう。

「この學校は、國民學校という。それは知っているかな?」

「「「はーい!」」」

陛下が尋ねると、子供達が一斉に手を上げた。

「よろしい」

陛下が微笑ましそうに笑って、両手を使って、子供達に手を下げるようにとジェスチャーする。

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「私は、分に関係なく、子供達に勉強の機會を與える場所を作りたかった。それが、この學校だ」

陛下がそう言って區切って、子供達を見回す。

「みんな。先生方からよく學び、そしてよく遊んで仲間を作るといい。それはどちらも君達の將來のためになるだろう」

陛下の言葉に、最初はちらほら落ち著きのない子供もいたものの、次第に熱心に耳を傾けるようになっていた。

「この壇上に座っている方々は、これから君達を導いていく先生方だ。先生方の言うことをよく聞いて學ぶように」

陛下がそう言って、手のひらをかざして先生方を指し示しながら、彼らの名前を順番に呼んでいく。

名前を呼ばれると、彼らが立ち上がって頭を下げ、著席した。

子供や保護者達から、一人一人に拍手が送られる。

「……そして、もう一人の功労者を紹介しよう」

陛下はそう言うと、保護者席を見回した。その視線は私のところで止まり、にこりと笑った。

……えっと? 私?

「デイジー・フォン・プレスラリア!」

「は、はい!」

私は驚いて、その場で立ち上がる。

會場に集まった人達の視線が私に集中して、かなり恥ずかしい。

「彼は、國民學校の錬金科の教科書の草案を書いた、我が國が誇る錬金師である! 彼の貢獻にも、謝とともに、拍手を送ってしい!」

すると、わぁっ! という歓聲とともに、大きな拍手が私に送られた。

……恥ずかしい……!

そうは思ったものの、ここで毅然とした態度をすることも、爵位を持った貴族として必要だろう。

だから、恥ずかしいと思う気持ちをグッと堪えて、私は笑顔を湛えて拍手に応えた。

「今日學する君達の中には、錬金科を選択しているものもいるだろう。私は君達が、いつか彼のような素晴らしい錬金師になってくれることを願っている。そして、普通科のみの子供達も、將來國を支える立派な大人になってしい!」

そう締めくくって、陛下のお言葉が終わる。

陛下を讃える歓聲と拍手が會場を満たしている。

私も、拍手をしながら著席した。

その後も、校長先生、普通科と錬金科を代表する先生方が、子供達に挨拶をしていく。

各先生方の挨拶が終わると拍手が送られる。それを何度か繰り返した。

ちょっと子供達の中の一部には、それが長くじられたのか、じっとしていられなくなってくる子がいるのも、なんだか後ろから見ていて微笑ましい。

ちなみに、ルックもその中の一人だった。

「さて、學式兼開校式はこれで以上です!」

進行役の男が、終わりを宣言した。

「これから先生方が案する先に、皆さんのクラスが掲示されています。導に従って、自分のクラスの確認と教室を確認してご帰宅ください」

その言葉を契機に、子供達が立ち上がって、保護者席にいる親元へわっと移しだす。

リリーとルックも私達のもとへやってきた。

「お父様、お母様!」

リリーが、クラス分けを見たいとはしゃいでいる。

「デイジー様、マーカスさん。僕も、クラス分けを見たいです!」

私達を見るルックの瞳は、期待からかキラキラと輝いている。

「じゃあ、行こうか」

お父様が、私達みんなに移を促した。

リリーは、お父様とお母様の間に挾まって、二人に手を握ってもらっている。

「ルックも、行こう」

マーカスが、ルックの手を取った。

私も二人に寄り添うように並んだ。

導に従って會場を出て廊下を歩き、クラス分けが掲示されている場所に辿り著く。

「私は、錬金科のAクラスね!」

自分の名前が書かれた箇所を指差して、リリーがお父様とお母様の顔を互に見比べた。

「頑張りなさい」

「頑張ってね」

リリーはお父様とお母様に微笑みかけられながら、勵まされていた。

「僕は……普通科のBクラスと、錬金科は……。あ、こっちもBクラスです!」

ルックは、普通科と錬金科の掲示を順番に見比べて、私とマーカスに嬉々とした様子で報告する。

「頑張ってね」

「頑張れ!」

私とマーカスに勵まされたルックが、元気に頷いた。

ルックの夢である、郷里のアトリエを再開することが、実現しますように。

子供達が一人前の錬金師になりますように。

そして、彼らが作ったポーションが普及して、國中のどこに住んでいても、ポーションが手にるようになりますように。

私は、そう願うのだった。

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