《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》238.デイジーの帰宅
數日後、私はお父様と力向上の種の取り扱いについて相談すべく、実家に戻ることになった。サンプルとして、種を十粒小袋に詰める。それを、ポシェットの中にれていくことにした。
……それにしても、日にちが空くなんて珍しいわね。お仕事がお忙しいのかしら?
いつもは、大お父様と話をしたいと伝えるとすぐに工面してくれることが多い。だから、數日経ってからというのを珍しくじたのだ。私はし不思議に思いながらも、指定された日、お父様が仕事を終えて帰宅する時間帯に実家を訪ねた。
「ただいま。セバスチャン」
やはり、玄関ではいつものように、我が家の執事のセバスチャンが待っていてくれた。
「おかえりなさいませ、デイジーお嬢様」
彼は、慣れた所作で折り目正しくお辭儀をする。
「お父様はもうご帰宅かしら?」
そう言って尋ねると、セバスチャンは頭を上げてから、し申し訳なさそうな顔をして首を橫に振った。
「最近ヘンリー様はとてもお忙しいご様子。本日もし遅れていらっしゃるようで、まだお戻りになられていません」
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……やっぱり仕事がお忙しかったのね。
納得はしたものの、お父様のお仕事は國軍の魔導師団の副魔導師長。
そのお父様が忙しいということは、國に何か問題でもあったのだろうか?
私は、國の狀況と、そして何かあれば実戦にも赴かれる立場のお父様のを案じた。
すると、知らず知らずに私の顔が曇ってしまったらしい。
セバスチャンが、そんな雰囲気を察したらしい。彼はそれを振り払うかのように、し明るくした聲と表で私に提案してくれた。
「デイジー様。せっかくですから、ご家族とゆっくりされてはいかがでしょう? 侍に飲みでも淹れさせましょう。じきにヘンリー様もお戻りになられるでしょう」
……確かにそれもそうね。
賢者の塔に住んでいたご先祖だというグエンリール様の一件以來、私は実家を訪れずじまいだった。
リリーの錬金科での勉強合も聞きたいし、ホーエンハイム家の孫息子のアルフリートと、何やら一緒に実験(遊び?)しているということの容も聞いてみたい。
お母様は相変わらずのんびり過ごされていると思うけれど……。
賢者と聖に転職なさったお兄様とお姉様のその後の様子も聞きたいわ。
「ありがとうセバスチャン。みんなに聲をかけてみてくれないかしら? 手が空いている人だけでもいいからお話をしたいわ」
「では、手配をしましょう」
にこりと笑ってセバスチャンが一禮をすると、私を居間に導する。そして、それが済むと、侍達に指示を出すためにその場を後にしたのだった。
「ソファに座って待っていようかしら」と思って、私は庭の景がよく見えるソファに向かう。
やはりいつものとおり、そこがお気にりお母様がその場所にいて、私は挨拶をする。
「お母様。ごきげんよう」
「あら、デイジー。來ていたのね。ささ、座って」
お母様が嬉しそうに微笑んで私に向かいの席を勧めてくれたので、私はそこに腰掛けた。
我が家の自慢のバラは時期が早いらしくて、殘念ながらまだ咲いてはいなかった。
でもその代わりに、春の早い時期に花を咲かせるクレマチスやアリッサムなんかが庭を彩っていて、その小さな花々がらしい。
そうして庭を眺めてゆっくりしていると、
「デイジー様。おかえりなさいませ」
そう言って、ケイトがやって來た。彼は小さな車付きのテーブルを押している。そしてその上には紅茶を淹れるのに必要なものが載せてあった。
「ケイト!」
私は思わず立ち上がろうとする。それを笑ってケイトに窘められた。
彼は、私が実家住まいだった頃に、私付きの侍だったのだ。
だから、ついつい顔を見ると、嬉しさと懐かしさでが反応してしまう。
「もう。デイジー様は相変わらずですね。紅茶を淹れますから、お座りになっていてください」
そうしてケイトに紅茶を淹れてもらっていると、続々と家族が集まってきた。
「お姉様〜!」
まずは駆け寄って來るのはリリー。
「リリー。ただいま」
ぎゅっと私にしがみ付いてくるリリーを、私は抱きしめ返す。
「もう、リリー。レディーがそんなふうに走ってはいけないわよ」
リリーのあとから足早に歩いてきて、姉らしく優しく窘めているのはダリアお姉様。
お姉様は相変わらずみたい。
「デイジー、おかえり」
最後にやってきたのはお兄様だった。
「あら。みなさんお早いお揃いですね。では、みなさんの分も紅茶をお淹れしましょう」
ケイトはそう言うと、席に腰を下ろした家族に、順番に紅茶を淹れてから、その場をあとにしたのだった。
「アトリエの方はどうなの?」
紅茶に口をつけていると、お母様が私に尋ねかけてきた。
カップをソーサーに置いてから、私はお母様に顔を向ける。
「経営は順調です。相変わらず軍や冒険者のみなさんに、ポーションを中心に買い求めていただいてます。そうそう、冬から取り扱うようになったポーションり化粧水も、を中心に好評です」
私がアトリエの経営狀態を回答した。
「あのポーションり化粧水、とっても助かったわ」
お母様が両手でポンと手を打って頷いた。
「そうそう! 私も、の荒れがサッと治ってしまうから、とっても助かったのよ……って、お父様が帰宅されたようね」
お姉様が想を述べるのを切り上げた。
玄関が開く音がして、微かにお父様の聲とセバスチャンの聲がしたのだ。
やがてししてからお父様がセバスチャンに案されて居間にやってきた。
「ああ、デイジー。お帰り。遅れてすまなかったね」
お仕事がお忙しいのだろうか?
私の帰省に笑顔を見せるお父様のその表は、僅かに疲れが見て取れるものだった。
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