《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》240.陛下の説明

「デイジー、君はシュヴァルツブルグ帝國という國を知っているかな?」

「はい。私達の國とハイムシュタット公國を挾んだ先にある國ですよね」

私は聞き覚えのある國名に頷いた。

ずっと前、アナさんに師匠になってもらうときに聞いている。

確か、昔に政変が起こり、軍國主義を掲げる國王が治める國になってしまった。だから、アナさんやリィンのおじいさんのドラグさん達は、自分達の能力を戦爭に使わせまいと、彼の國から逃げてきたのだと。

「そう。そのシュヴァルツブルグ。彼の國が武や防を大量に調達しているらしいとの報がってね。……我が國の友好國であるハイムシュタット公國、そして我が國との戦爭を目論んでいるのではないかと警戒しているんだ」

陛下は、まだ子供の私にどう伝えたものかと、易しく噛み砕いて説明してくださる。そんな陛下の顔は、悲しみや憤りといったものでし歪んでいる。

「……戦爭」

私は呆然とその言葉を復唱する。

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靜かな部屋の中で、私の心臓がどくどくと脈打って、頭に響いてうるさい。

そんな私を、お父様がハラハラとした顔付きで見守る。そして、他の大人の人達も心配そうに私を見つめている。

「そう。私達ザルテンブルグの人間は、を洗う戦爭などんでいないのだけれど……ね。それでも、仕掛けられる可能があるのであれば、私は國民を守るために出來るあらゆることを講じなければならないんだ」

力向上の種のお申し出は、だから、ですか……?」

私が尋ねると、陛下は申し訳なさそうに眉を下げて頷いた。

……うるさい。うるさい。の鼓よ収まって。

私は、不安に駆られて繋いだままのお父様の手をさらにぎゅっと握りしめた。

怖かった。

「正確にいうと、君が賢者の塔の赤竜を自分の眷屬として手元に置きたいと言うのを許可したときから、かな……。あれが抑止力となり、シュヴァルツブルグ帝國が諦めてくれたらと思っていたんだ。だから、私の勅命で許可した」

陛下が言っている赤竜というのは、ウーウェンのことだろう。

あのときから、この事態が水面下で國を揺るがせていたなんて。

「抑止力……ですか?」

「ああ。君のところの赤竜……ウーウェンだったか。彼はまだ未とはいえ赤竜としての力はあるんだろう?」

「……はい。そうだと思います。空も飛べますし、ドラゴンブレスも吐けます」

「うん。だとすると、そんな竜を従えているような者がいる國に手を出そうとするなんて、普通は考えないはずなんだ。だって、赤竜なんて相手にして無事に済むとは考えないだろう?」

「……はい」

「だから、彼の國の野を未然に防げると思っていた。そのためとはいえ、黙って利用してすまない、デイジー……」

「そんな! 陛下!」

一國の王である陛下が私に頭を下げるので、慌てて止めてしいと私は首を橫に振った。

「……私は最初、君と君の赤竜の存在によって、戦爭を未然に防げると思っていた。けれど、彼の國はどうも戦爭の準備をやめていないらしくてね」

カタンと質な音がして、陛下が立ち上がったのだと知る。

「私が今回ご相談に伺った力向上の種は……その起きるかもしれない戦爭のために使われるのでしょうか……」

私は震える聲で尋ねる。そして、私のもとへ歩み寄られる陛下、軍務卿とお父様の顔を互に見た。

「デイジー……すまない」

椅子に座ったままの私の頭を、陛下がそっと優しくでる。

私は謝罪の言葉だけを口にした陛下に首を橫に振って答えた。

「私は、もし戦爭になったら最前線で戦う兵士達……彼らを一人でも守りたい。君が育ててくれた種の効果があれば、彼らの生存率も格段に上がるだろう。だから、彼らに最優先で摂取させたいんだ」

「……兵隊さん達が、この種の力で助かるかもしれない……」

ぼんやりと持ってきた力向上の種のった袋を取り出して眺めながら、私は呟いた。

「うん。そう。君も知っている騎士団長や……君の父上も。そして彼らの部下達に至るまで、出來るだけ一人でも多くの者に生き延びる可能を高めてあげたい」

陛下のその言葉に、私の心臓が一際大きくを打つ。

『君(・)の(・)父(・)上(・)』

……苦しい……!

「……おとう、さま……」

脳裏に、も(・)し(・)も(・)のシーンが展開される。

お父様が剣で斬りつけられる、そんな景。

ドクンドクンと私のが早鐘を打つ。

……息、が……できな、い……。

「「デイジー!」」

陛下とお父様が私を呼ぶび聲が、遠くなっていく。

私は、その想像してしまった景の恐ろしさに、意識を手放してしまったのだった。

語は終盤へ。

當初から伏線として出てきていた軍事國家などと、向き合うことになっていきます。

デイジーも、國一番の錬金師として逃れられないようで……?

々12歳のには厳しい場面もありますが、彼の心の長を一緒に見守っていただければと思います。

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