《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》242.暖かな家

いつも読みに來てくださってありがとうございます!

誤字報告とかもとてもありがたく確認させていただいております。

しばらく私とお母様は、抱きしめあって頬りしていた。

……久しぶりのお母様の溫。溫かくて安心するわ。

私は安堵を覚えて、頬りが終わってから、お母様の腕の中で瞼を閉じた。

やがてその溫もりに私の心もし落ち著いたのか、不安や悩みに揺れていた私の心も和らいでくるのをじる。

「奧様、デイジー様。お醫者様から指示のあったハーブティをお淹れしても?」

「ええ、お願い」

ケイトがお母様の背後から聲をかける。それにお母様が同意した。

「ケイト、ありがとう」

ハーブティを淹れる道達を載せた、車付きの小さなテーブルを持ってきてくれたケイトに、私は謝の気持ちを伝える。

すると、ケイトは早速ティーポットにセントジョーンズワートの乾燥ハーブをれる。黃い花の部分も含んだ鮮やかなハーブだ。

「お禮には及びません。ご家族にとっても、使用人達にとっても大切なデイジー様です。早く健やかになっていただくお手伝いができるのは嬉しいですよ」

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そう言って目を細めるケイトの表は優しい。

……私の心配をしてくれる家族に使用人に囲まれて。私は幸せだわ。

そう思うと、まだ強張っていた顔の力が緩んでくるのをじる。

そうだ。さっきセントジョーンズワートを飲むように指示があったと聞かされた。なら、私は陛下から打ち明けられた事実によって、不安とか気鬱の癥狀が出ているのかしら?

私はかつて王妃殿下から植図鑑をいただいていて、その本に書かれていたハーブの効用を覚えていた。ちなみに名前の由來は、ハーブによる治療に多大な貢獻をした、偉大な薬師の名前なんですって。

「お母様。私は気鬱か何かなんですか?」

私がお母様に尋ねる。

「あら、さすがと言ったところかしら? 詳しいわね、デイジー」

お母様が目を軽く見開いて驚いた様子を見せた。

「お嬢様は昔から植にとてもご興味をお持ちでしたものね」

そう言って、橫でケイトは私のハーブティの準備をしている。ベッドの上で飲食するための小さなテーブルを私の前に置き、その上にティーソーサーとティーカップを載せ、中にハーブティを注いでくれた。

「さあ、どうぞ」

そうしてケイトにハーブティを勧められた。

「ありがとう。いただきます」

口に含むと、しの苦味とすっきりとした香りが口の中に広がる。

ハーブティが胃の腑におりて、を芯から溫めてくれる。その覚に私は、ほうっと一つ息を吐いた。

そんな私の橫で、お母様がさっき私が投げた疑問に答えてくれる。

「お醫者様の見立てだと、急にストレスがかかって、一時的に気力が落ちているんでしょうって。あなたが倒れた時に、お父様がちょうどうまく抱き止めてくれたらしくて、頭をぶつけたりとかはしていないらしいわ」

続けて、「さあ、飲んでちょうだい」と言ってお母様が促してくるので、私は殘りも全て飲み干した。

すると、溫かいハーブティに胃を刺激されて、私のお腹が、くぅっと鳴った。

「あら。が食べたいと言い出しているのかしら。だったらいいことだわ」

お母様がその音に目を細める。

「奧様。デイジー様は暫くお腹に何もれていらっしゃいませんでした。廚房の者に、らかな麥がゆなどを作らせてはいかがでしょう?」

「それはいいわね。デイジー、それは食べられそうかしら?」

ケイトの提案にポンといい提案だとばかりに両手を打つお母様。そんなお母様が私の方に向き直って尋ねてきた。

「はい。大丈夫です。……麥がゆってなんだか懐かしいです」

五歳の『洗禮式』のあ(・)の(・)日(・)、この部屋に私が泣いて閉じこもった。そのあと、一日以上は経ってからようやく部屋を出た私に、同じように麥がゆが出されたことを、私は思い出していた。

そうしてクスッと思い出し笑いをしながらお母様の方を見る。すると、お母様も思い浮かんだことは同じだったのか、その口元には微笑みが浮かんだ。

「じゃあケイト、お願いね」

「かしこまりました」

ケイトは小さなテーブルから、私のベッドサイドのテーブルに、飲み水がったピッチャーとグラスを置く。そして私とお母様に一禮してから、持ってきたテーブルを押しながら部屋を出て行ったのだった。

それとれ違いと思うくらいの、ほんのしあと、部屋の外からドアをノックする音が聞こえた。

「デイジーお姉様。お加減はいかがですか?」

その聲は、我が家の小さな妹のリリーの聲だった。

「あら、リリーがお見舞いに來たわね。あの子ったら、デイジーがまだ寢ている間も、『お姉さまは大丈夫かしら』とソワソワして落ち著きがなかったのよ。れてあげても大丈夫かしら? デイジー」

「はい、大丈夫です」

なんとなく、お母様とケイトと話している間に心も軽くなってきたので、その申し出に私は頷いた。

「じゃあ、れて顔を見せてあげましょうね」

私にそう答えると、お母様が私に頷き返す。

「リリー、ってらっしゃい。デイジーは目を覚ましたわよ」

ドアを隔てた向こうに聲をかける。すると、お母様付きの侍のエリーがドアを開け、そこを通ってリリーが私のいるベッドに向かって足早にやってくる。

「デイジーお姉様!」

リリーは起き上がっている私を見て、嬉しさを顔いっぱいに表しながら私の名前を呼んだ。

<補足>

セントジョーンズワートについて。これは現実にもあるハーブです。

ただし、現実では新約聖書に登場するセントジョーンズワート(聖ヨハネ)が名前の由來です。

そのため、し考えて、この世界では同じ名前の別の人(薬師)由來としました。

理由は、デイジーの世界観はキリスト教の世界ではなく、創造神を中心とした多神教の國。

その辺の違いから違和があったからです。

このハーブをご存知で、あれ?と思われた方は、そういう理由ですのでご理解ください!

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