《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》247.決めるということ

次回は真面目なお話し。

しづつ長するデイジーを見守ってください。

私は驚いた。なぜなら、アルフリートの「嫌だ」という拒否を、陛下がお認めになったと聞いたからだ。

「まあ今は、あれ本人がいないから言えることだけれどね。……ここからはあれよりし大人のデイジー嬢向けの話だ。ちゃんと向き合えそうかな?」

ホーエンハイム先生が、私にこの先を聞く覚悟を確かめるかのように、首を傾けた。

「……はい」

私はごくりと固唾を飲んで、頷いた。

「『自分が作った弾を戦爭に使わせない』、そのみは葉った。だから、あれは、自分の作った弾で人が傷つくことで、心を痛めることはないだろう。まだ七歳のあれにはれ難い申し出のはずだ」

「……そう、ですね」

私が頷くと、ホーエンハイム先生も、うん、と一つ頷いた。

「だがもし、彼の國が戦爭を仕掛けてきて、我が國が劣勢になったとしたらどうだろう?」

「……え?」

「もしも、の話だよ。あの子はまだい。だから、そこまで諭さなかったのだけれどね。もし、自分ができることをなさなかったために、國の人々が傷ついたり亡くなったりしたらどうじるだろう。もしその中に自分の家族が一人でもいたら?」

ホーエンハイム先生の問いかけが終わると、二人しかいない部屋の中がしいんとなる。

私にとってその問いは思いもかけないもので、答えをすぐには出せなかったからだ。

……もし、戦爭になった時、私が出來たはずの手助けをしていなかったら。

「……私は、後悔すると思います。多分、……申し出を斷った時の自分を責めると……思います」

私は、ゆっくりと答えた。

「そうだね。多分、良心を持った者であれば、そう思うんだ」

「……ホーエンハイム先生! だったら、それなら……! 最初から答えなんかないってことじゃないですか!」

私には、どちらを選んでも希なんかないように思えて、思わずソファから立ち上がって大きな聲で訴えた。

だって……!

助力をすれば、他國の人を傷つけたことで後悔する。

助力を斷れば、自國の人がもしかしたら傷つき、後悔する。

どちらにしても、後悔する結果を免れないないのだ。

……どうしたらいいのよ!

「あ……!」

またがぎゅっとして、私はを押さえる。

「デイジー嬢、落ち著いて……」

ホーエンハイム先生が立ち上がり、私の両肩を支えて私をソファに座らせる。

「誰か! デイジー嬢が合が悪そうだ。誰かいませんか!」

私を落ち著かせようと、ホーエンハイム先生が私の背をでながら、大きな聲で部屋の外に助けを求める。

バタン! と音を立てて扉が開いて、ケイトが姿を現した。

「デイジー様! どうなさいました⁉︎」

「ちょっと……また苦しくなっちゃって……」

私は側までやってきたケイトに縋り付く。

「……すみません。私がデイジー嬢にお話したことは、彼にはまだ早いことだったかもしれません。……デイジー嬢は、私の言葉にショックをけられて、苦しくなられたようです」

「そうですか……。デイジー様、この後どうしましょう? お客様とのお話は後日ということにして、お休みになられますか?」

「うん、そうしたい……」

そう言いながら、申し訳ないと思ってホーエンハイム先生を見上げた。

先生は、「大丈夫」とでも言うように、優しい笑みを浮かべながら頷いてくださった。

「では、私はお暇しますね。デイジー嬢、ゆっくり休んでください」

ホーエンハイム先生がそう言って部屋を出る。ちょうどセバスチャンも騒ぎを聞きつけたようで、帰る先生をお見送りに行くようだ。

私は、ケイトに支えてもらいながら、自室に戻るのだった。

リーフも、心配そうに私の橫に寄り添いながら歩き、くぅん、と鳴く。

そうして、その夜仕事から帰ってきたにしては早い時間に、部屋の扉の向こうからお父様の聲がして、それと一緒にノックが聞こえた。

「お父さんだけど、合の方はどうだい?」

「お父様。ええ、だいぶ落ち著きました。……あの、お父様」

私とお父様は扉越しに會話をする。

「なんだい。デイジー」

「お時間があったら、お父様とお話がしたいんです」

今日、ホーエンハイム先生から聞いたこと。

……力を持つものが負うものについて、お父様とお話がしたい。

だから、扉の向こうにいるはずのお父様にお願いをした。

返事はすぐに帰ってきた。

「……もちろんだよ、デイジー。開けてもいいかな?」

「勿論です」

お父様が私の部屋の扉を開ける。

そしてそこには、優しいお父様の笑顔があった。

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