《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》251.ゲルズズの賢者の石
「冥界の裂け目ができて、本來生まれ変わりの時を迎える時まで眠っているはずの魂が外界に溢れ出た……それで、そのあとどうなったんだい?」
アナさんは、私が語る星のエルフの里での出來事を疑うでもなく、むしろその先を促してきた。
以前、私とリィンを守護してくださる霊王様方を目の當たりにしたからだろうか?
肝が據わっている。
そんなじだ。
「最終的には冥界の神様が顕現なされて、迷い出た魂達を回収して、冥界に連れて帰ったのですが……」
「……その言いには、何か続きがあるんだね?」
なんだか、今日のアナさんはいつにも増して察しが良かった。
「……はい。足りない子がいるんです」
「足りない?」
「はい。冥界の神様が言うには、魂の數が足りないと。……その場では神様はその里のエルフ達に子を……新たな魂を産むようにと命じておられましたが……」
「ふむ……足らない、ねえ」
そして、アナさんのその相槌を最後に、私達の間に沈黙が戻った。
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アナさんは再び思案に耽っているようだ。
「それがやつの……ゲルズズの仕業だと仮定すれば。……足りないという事実に辻褄が合うんだがね……」
何か腑に落ちたという顔をしながらも、アナさんの表は険しかった。
「……どういうことですか?」
私は、アナさんから聞いたばかりのゲルズズという人について、あまり理解がなかったから、アナさんが意図したことを飲み込めなかった。
「エルフの里の騒も、仕組んだのはゲルズズかもしれないと言うことだよ。……目的が、魂の収集だと考えればね」
「……あっ!」
私はようやく合點がいって、今までのことを全て理解したことによって聲をあげた。
アナさん曰く。
ゲルズズは不完全である、賢者の石を完させようとしている。
その素材は、魂。
だとすれば、エルフの里で守られている世界樹に悪意を持った蟲を埋め込み、枯れさせ、世界を支える力を失わせることで、冥界への裂け目を作る。それによって迷い出た魂を、彼が何らかの方法で回収しているとすれば、彼の目的に葉うのだ。
そして……。
陛下が懸念している戦爭も。
私がまだ全てとはいわないけれど、二つのエルフの里で守られる世界樹を救い、裂け目を塞いでしまった。
ならばと、次の手段として戦(・)爭(・)を選んだとしても、おかしくはないのだ。
……じゃあ、この戦爭が起こるかもしれない事態を引き起こしたのは私?
「……アナさん」
「どうした。大丈夫かい? デイジー」
私の聲が心なしか震える。今しがた知った事実……いや、推論が恐ろしかった。
「恐ろしくて震えているのかい? ……ほら、大丈夫」
そう言うと、アナさんが立ち上がって、私の肩を溫かな手のひらでさすってくれる。
「アナさん。ありがとう」
「私はあんたの師匠だ。弟子の心の面倒を見るのも、役目のうちだよ」
そう告げるアナさんの聲は穏やかで優しい。その聲と手の溫かさに、私の怯えは徐々に収まっていった。
私はアナさんに、まるで子供をあやすように宥められながら、彼に問いかける。
「私が……悪かったのでしょうか? 世界樹が苦しいと泣いているのが聞こえて。だから、私が世界樹を食い荒らす蟲を排除したんです。……それが、結果として戦爭の原因になったんでしょうか?」
……多分、この問いは、私(・)が(・)アナさんに否定してしいんだろう。
それは自分でもわかっていた。
誰かに、「あなたのせいじゃないよ」と優しく否定をしてほしいのだ。
そうして、安心したいのだ。
さらに、今までの私だったら、自分のしでかしたことに泣きながら尋ねたかもしれない。
でも、アナさんがとても優しく接してくれるので、私は落ち著いて穏やかに尋ねることができた。
……こんな狀況下でも、私の周りの世界はこんなにも優しい。
先日のお父様も、そしてお師匠様のアナさんも。そして家族もアトリエのみんなも。
みんなみんな。私の周りの人達はとても優しいから。
それがわかるから、私はアナさんの溫もりにを委ねていた。
「デイジー。多分、これはデイジーのせいじゃなく、あくまでゲルズズの問題だよ。あれはきっとなんとしても今は不完全な賢者の石を、完全なものにしたいんだろう。そのためには、手段を選ぶ気はないんだ。……だから、デイジーがこの件に関わったとしても、デイジーのせいではないんだよ」
「わかるかい?」そう言って、アナさんが私の顔を覗き込んでくる。
……手段を選ばずに、賢者の石がしいだなんて。
そんな人がいるということ自は、とても怖いと思った。
でも。
「……アナさん、ありがとう」
私は、両腕をばして、アナさんの背中に手を回す。
「だったら、私は」
「うん?」
アナさんも私を抱きしめ返しながら、首を傾げた。
「私は同じ錬金師として、それをどうにかして阻止してみせます」
そう、言い切った。
誰も幸せにならない、彼の願いは葉えさせない。
私は、そう、心に決めたのだ。
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