《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》257.みんなで大空へ

「え? グエンリール様が集めたがっていたって……?」

私はウーウェンの言葉に目を瞬かせる。

「ボクには理由は教えてくれなかった。けど、それ一つ一つは、世界を救うために必要なものの大切な一部なんだって。そう言ってた!」

ウーウェンは移してまっすぐに私を見つめながら訴える。

「それが全部集まれば、すごいものが出來るんだって。賢者の石だなんての塊じゃない、至高のものができあがるんだって、そう言ってた!」

「……じゃあ、これが何かの手がかりに……? ねえ、教えてウーウェン。これは、これで全部なの?」

それを問うと、ウーウェンは、わからないと訴えるかのように首を橫に振った。

そんなやりとりをしていると、錬金工房の作業場の扉が大きな音を立てて開けられた。

「デイジー様!」

息せき切って駆け込んできたのは、アリエルだった。

普段のおっとりとした所作からすると、珍しいことだ。

「どうしたの? そんなに慌てて、あなたにしては珍しい……」

「次の転送陣がある場所がわかったんです!」

私ののんびりとした問いかけを遮るようにして、アリエルが訴えた。

……転送陣ということは、殘る最後のエルフの里への通り道よね?

「やっとわかったの?」

「はい! お母様に問い合わせていて……やっと、その場所がわかったんです!」

アリエルは、前回、星のエルフの里に裂け目を作ってしまったことに、大きな心の呵責を持ってしまったようだったから、それは嬉しそうに報告してきた。

「アリエル、頑張ったわね! ……で、転送陣はどこにあるの?」

私が問うと、彼は私の手を取って、アトリエの外へと連れ出した。

「……あそこです!」

そう言って空を指さすアリエル。

そこは、王都の北部にある、誰もてっぺんにまで登ったことのない、高い山がそびえている。そして、その上にはいつも分厚い雲が、冠のように被さっているのだ。

が指さすのは、まさに、その雲だった。

「……え? 空? 雲?」

私の頭の上に『???』がぐるぐるする。

理解不能だ。

……雲って、前にウーウェンに乗って空を飛んだときに通ったけれど。

それは、綿のような実や質といったものがある存在ではない。

中にっても、霧雨でも降っているかのような、もやっとした視界の悪さがただあるだけだった。

そんな場所になぜ転送陣が置けるというのだろう?

「ねえ、アリエル」

「はい! なんでしょう?」

まだ興冷めやらぬといった狀態のアリエルが、前のめりになって私に尋ねてきた。

「どうして雲に転送陣があるのかしら? あれは、霧のようなものじゃなかったかしら?」

私は首を捻って見せながら、彼に尋ねた。

「あの頂上の雲は特別なんです。その証拠に、あの雲はかないし、一度もなくなったこともないでしょう?」

「……そういわれてみれば……」

とはいったものの、だからなんだという話である。

ずっとあるという特別な雲だとしても、雲は雲。

「でも、雲……」

「行ってみればわかりますよ!」

「ぎゃあああああ!」

「あっはははは! みんなしっかりつかまってなよー!」

大の男であるマルクが一番慌てふためき、それを愉しそうにウーウェンが笑って注意している。

そう。

私達は竜型に戻ったウーウェンの背に乗って、みんなで大空を飛んでいた。

そして、マルクをさらに煽ろうかとでも思ったのか、ウーウェンがグイッっとを捻ってぐるりと橫に360度一回転した。

さっきのウーウェンの忠告で、みんなしっかりとウーウェンのたてがみにしがみついていたからいいものの、もし、うっかり手を離していたら大慘事だ。

「ちょっと待ってよ、ウーウェン。さすがに危ないわ」

私はさすがにこれについては窘めることにした。

「……はい。ごめんなさい……」

さっきまで、全員を乗せて、見せ場とばかりに意気揚々としていたウーウェンが、しゅんとした聲になる。

「でも、みんな全員を乗せて飛べるってことが、見せ所ってじで、嬉しかったんですよね?」

ポンポンと背をでて、私達の間を仲介するようにめるのはアリエル。

「ああ。こんなにたくさんの仲間を背に乗せて飛ぶなんて、ボクはじめてなんだ!」

そう言うウーウェンが乗せているのは、私、リィン、アリエル、マルク、レティア、そしてそれぞれの従魔達。

元の姿に戻った大きな彼の背中は、全員を乗せるのには十分だった。

途中、普通に空に浮かぶ雲を突っ切っていく。

「……デイジーの言うとおり、雲って、霧みたいなもんだったんだな……」

リィンが慨深げに呟く。

「でも、目的地は違います! さあ、ウーウェン! 私達を連れて行って!」

「任せて!」

アリエルの言葉にウーウェンが意気揚々と応える。

そして、私達は、王城のさらに北に高く高くそびえる、山の上の頂上を目指すのだった。

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