《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》260.月のエルフの里

私のかけ聲と共に、みんなで転送陣の上に乗る。

すると、転送陣が発して、私達のを包み込んだ。

「……さあ、行くがいい。世界の命運を擔う者達よ」

そう、管理者が呟いた言葉は、すでに転送された私達の耳には屆かなかった。

転送された先は夜のように薄暗かった。

いや、実際に夜だった。

暗闇の中に、大きな月が浮かんでいる。不思議なことに、明かりはそれだけで、星々の姿は見えなかった。月が大きすぎてその明かりが強すぎるからなのだろうか?

優しい風がそよぎ、木々がさわさわと葉れの音を奏でる。

その葉っぱ達は月明かりに照らされて、銀に輝いていた。

「「……よくいらっしゃいました。し子様方、アリエル様、そしてお仲間のみなさま」」

そうかけられた聲は、まるで同じ人の聲が重なるよう。

そこには、き通るような白い、灰の瞳、部までびる長く黒い髪を持った二人が立っていた。

容姿はまるでうり二つ。

ただし違うのは、一人は長い直で、もう一人はらかく波を打っていることだけだった。

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「……先の王……母が亡くなった後、私達のどちらが跡目を継ぐかが決まらず、お呼びだてするのが遅れて大変申し訳ありませんでした。私は姉のガラレスです」

「私は妹のアダエルです」

二人はゆっくりと頭を下げた。

「私は緑の霊王様のし子のデイジーです」

「アタシは土の霊王様のし子のリィン」

「私は知ってのとおり、のエルフのアリエルです」

「俺らは彼達の護衛のマルクとレティアな」

順番に自己紹介をしていって、最後にマルクが二人まとめて自己紹介すると、レティアは「うん」と頷いた。

「お名前を教えてくださってありがとうございます。……跡目の問題はまだ決まってはいないのですが、なんでも、アグラレス様によれば星のエルフの里が大変な騒ぎになったとか」

「はい。世界樹が枯れかかったせいで、大地に裂け目が出來てしまいました。それは冥界へと続くもので、そこで眠っているはずの霊魂達があふれ出てしまったのです」

私が説明すると、姉のガラレスがこくりと頷いた。

「私達の里の世界樹はそこまで弱ってはおりません。……ですが、時間の問題でしょう。急事態ですから、跡目候補である私達姉妹二人の決裁ということにして、あなた方をお招きしたのです」

「……私達が守る世界樹を……救ってくださいますか?」

姉のガラレスに続いて、妹のアダエルが小首を傾げるようにして尋ねてきた。

「……もちろんです! 今までも二本の世界樹を救ってきました。最後の一本を……世界の崩壊を見過ごすつもりはありません」

私がそう言い切る。

すると、雙子はを向き合わせて両手同士を重ね合った。

「お姉様」

「アダエル」

「「……良かった。し子様が世界の崩壊を救ってくださるわ」」

二人は全く同じ顔で、瞳を細めてそれは嬉しそうに微笑みあったのだった。

「では、世界樹の元へ案していただいてもよろしいですか?」

そんな彼達に私は聲をかける。

「ええ、ぜひ! ……ささ、こちらです」

そうして私達は彼達に案されて、月のエルフの里の中央にそびえ立つ世界樹の元へ連れてゆかれたのだった。

「……まだ、なんとか元気そうなのね」

世界樹の元へたどり著くと、私はその幹に手のひらでれる。

『でもボク、の奧が痛いんだ』

「……そうね」

目をつむって額をその幹にれさせると、やはり中にあ(・)の(・)蟲(・)がうごめいているのが見えてきた。

「悪さをしている子を取り出しちゃうわね。……ちょっと、あなたの中にらせて」

『うん、お願い』

何度やっても不思議な覚だけれど、私の手はとぷんと幹を覆うい表皮を通り抜けて、世界樹の中へとり込む。

「……もう、あなたで終わり。世界は崩壊させないわ」

『ちっ。ゲルズズ様のご命令だったのに。これで俺も終わりか』

黒い芋蟲をつかみ取ると、それが私に向かって悪態をつく。そしてやはり、彼(・)の名前を口にした。

私は芋蟲を摑んだまま、腕を幹から引き抜く。そして、その蟲を地面に投げ捨てた。

「……世界を崩壊なんかさせないんだから! アリエル!」

「はいっ! 消滅(バニッシュ)!」

アリエルがいつもの聖魔法を唱えると、それは消滅した。

「「……これが、原因……」」

雙子の王達が呆然として呟いていた。

「はい。……今回ははっきりと『ゲルズズ』と仕込んだ者の名前を明かしていましたから……その者の仕業だと思います」

「「なんて恐ろしいこと……」」

雙子達は両手を握りしめ合って震えている。

「でもし子デイジー様。この、弱った世界樹は元に……元気になるのでしょうか?」

姉のガラレスが眉を下げて心配そうに尋ねてくる。

「それはね、こうするのよ!」

私は、彼達に向かって、アゾットロッドを掲げてみせるのだった。

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