《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》261.天空の神
私はアゾットロッドを振りかざす。
すると、ポーションが無數の球となって空へと舞い上がっていく。
高く、高く。
世界樹の上まで、もっと高く。
そして、私はその球達に命じるのだ。
「癒しの霧雨(キュアミスト)!」
天高く舞い上がった球達は、細かい霧雨狀になって世界樹に降り注ぐ。
月明かりに照らされるその霧雨は、銀に輝く靄のよう。
そして、霧雨に濡れた世界樹の葉は、月に照らされて銀に輝いていた。
やがて、しおれていた葉はぴんと張りを持ち、そして、若芽も芽吹き出す。
世界樹が、復活したのだ。
「「なんてしい……」」
雙子の王達も、その景に嘆の聲をらす。
突然の雨に気づいた月のエルフ達も家々から出てきては、その様子を口々に褒め稱え、そして、世界樹の復活を喜んでいた。
「ありがとうございます。デイジー様」
姉のガラレスが深々と頭を下げ、それに倣うようにして妹のアダエルも頭を下げた。
「私達だけでは、世界樹を救えませんでした。……緑の霊王様に世界樹の管理を託された一族だというのに……ゆるやかな衰弱を見守るしかがなかったのです。でも、あなたが救ってくださった」
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ガラレスが一歩私の方へと近寄ってきて、私の両手をとり、握りしめる。
その手には謝の心が込められているのか、溫かだった。
「これで三本の世界樹が救われました。……これで世界は崩壊を免れるでしょう。重ね重ねありがとうございます。デイジー様」
今度はアダエルが私の前にやってくる。そして、ガラレスに解放された手をすくい取って、今度は彼が優しく謝の心を込めて包み込んだのだった。
「これで、この世界も無事だな!」
リィンが明るい聲で朗らかに笑う。
「……そうね」
私は、みんなにばれないように。でも、しぎこちなく笑う。
……まだ、全部は解決していないから。
でも、この世界が壊れてしまうのは防げたのだ。
それで、ひとまずの満足と安心を得ることは出來たのだった。
◆
そして、私達は転送陣を通してまた天空の島にある神殿の転送陣へと戻ってきた。
「……デイジー様! みなさま! 世界樹は……!」
ずっとその場で待っていたのであろう。
管理人が私達の元へ駆け寄ってきて、その結果を聞かんとばかりにを乗り出す。
「……大丈夫です。元に戻りました。もう、世界樹が枯れることで世界は崩壊したりしません」
私が管理人にそう答えると、あからさまに安心した様子で彼はほうっと息をつく。
……でも、ゲルズズの野は潰えていないのだけれど。
それは、そっと私ののにめておいた。
「ありがとうございます。デイジー様。これで世界は救われます! ……ああ、嘆いて去って行かれた神様にもご報告をしないと!」
管理人がきびすを返して、神殿の一番前の中央に立っている神の像の元へ足早に歩いて行く。
私達も、なんとなく彼と共にいた方がいいような気がして、彼の後を追っていった。
私達が彼に追いつくと、一歩前に立つ彼が、片足を床に突いて跪く。
顔は神の瞳を見ているのであろう、上向いており、そして口を開いた。
「天空の神様。爭いを嘆いて去って行ってしまった神様。……あなたがお作りになった世界は、ここにいらっしゃるみなさまのおかげで、崩壊を免れました。……世界は救われたのです」
……それは違う。
その言葉が、思わずから溢れでそうになる。
まだ世界は救われていない。
ゲルズズが、魂の収集のために戦爭をしようとしている限り。
……なぜ、そのような悲しいことをするのだろう。
そう、ふと思った瞬間。
ほろり、と、私の片方の瞳から涙が零れ落ちた。
「デイジー⁉」
隣にいたリィンが私の様子に気がついて、驚いて私の肩にれる。
「……だって、まだなんだもの」
「まだってどういうことだよ!」
「だって、まだ、世界を混させようとしている人がいるんだもの!」
これはの話。國家機だ。
でも、我慢が出來なくて。
自分一人の心の中にしまっておけなくて、思わず零してしまった。
「言ってしまった」という罪の意識も私の心を苛み始める。
ぽろぽろぽろぽろとあふれ出る涙は止まらず、理不盡な行為に対しての悲しみが私を襲う。
それは不思議とゲルズズへの怒りではなかった。
単純な怒りというものではなくて。
哀れみのような。
悲しみのような。
そういった、悲哀というものが私の心を締め付ける。
「……神様も、こんな思いだったのでしょうか?」
思わず、私はその言葉を口にした。
だから、この世界を儚んで、去って行ってしまったのだろうか?
「でも、私は見捨てたりはしたくないのです。大切な人達がたくさんいるのです。……みなを……救いたい。笑っていてしいのです」
口をかし、答えるはずもない神像に向かって私は訴える。
前にいた管理者は私の方に振り向いて。そして、仲間達も、私と神像を見比べてオロオロするばかりだった。
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