《【WEB版】王都の外れの錬金師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】》265.デイジーの決意

「そうだな……、どうせなら、デイジーのアゾットロッドにつけられるように加工しとこうか? で、その上でネックレスにもブローチにも出來るようにしておいてやるよ。そのほうが、そのときの狀態によってあわせやすいだろう?」

「それもそうね」

リィンが提案してくれた案は魅力的だった。

よくあるのだ。

王冠や王錫、ティアラなどを飾る寶石って、普段は外してブローチやネックレスにも出來るように細工してあるものって。

そんなじに加工してくれるのだという。

……これから、どうゲルズズに立ち向かうのかはわからないけれど……。

どんな形狀でもにつけられるというのは、とても魅力的な提案なのだと思った。

私は、祈りの石と一緒にアゾットロッドも預け、一旦帰宅したのだった。

「ねえねえ聞いた? デイジーちゃん」

ある日店番をしていると、常連の冒険者さんに雑談を持ちかけられた。

「どうかしたんですか?」

「それがね……戦爭が始まるらしいのよ」

「え……」

どうやら、機報だった話題も、勢故か、噂になってきているのだという。

もちろん、國の機れたというわけではない。

ただ、シュヴァルツブルグからの移民が増えたとか。

その彼らが、鍬や煮炊きするための釜など、溶かして武に出來るような金屬を徴収されていて、生活もままならないとか。

そんな噂から、憶測が広まっているのだという。

「だからね、來るべき日のために、もっと強くなっておこうってみんなで言っていてね。みんなで訓練も兼ねて、冒険に行く頻度を上げようと思っているのよ。大丈夫、デイジーちゃんは後方支援をよろしくね! みんな、あなたのことは大好きだから、守ってあげるわ!」

そう言って、くしゃくしゃと私の頭をでてくれる。

「そういうわけで、デイジーちゃん特製のポーションをいくつか買っていくわ!」

「ありがとうございます」

私は、接客なので、ぎこちなくならないように気をつけながら笑顔を作ってお客さんを見送った。

チリン。

扉の呼び鈴が鳴って、お客さんが去って行く。

「……ありがとう、ございます……」

思わず、涙がこぼれてしまった。

『みんな、あなたのことは大好きだから、守ってあげるわ!』

その言葉が嬉しくて。

そして、そんなみんなが傷つくようなことは本當はしてしくなくて。

そんな複雑な中から、涙がこみ上げてきたのだった。

「デイジー! 出來たぞ!」

アゾットロッドに祈りの石を飾ってもらったものを持ってきてくれたリィン。

「リィン、ありがとう」

私はそれをありがたくけ取って、その工賃を支払った。

「じゃあ、アタシは今日は帰るけど、なんか一人でやるとか無茶するなよ? 何かするなら必ず相談すること!」

そう言い含めてから、リィンは帰途についた。

私は、アゾットロッドに飾られた祈りの石をでる。

「……私はどうしたらいいんだろう」

石に尋ねてみたものの、石の『聲』は聞こえなかった。

……私は、戦爭自が起きてしくないの。

王都に魔獣が襲ってきたときに思ったの。

優秀なポーションがあれば、怪我をしても治る。

だけど、治るまでは痛みはじるのよ。それまでなくしてあげることは出來ない。

……誰にも傷ついてしくない。

そう思い悩んでいると、ちょうどウーウェンがやってきた。

「あれ? デイジー様のロッド、ちょっと変わった?」

「うん、グエンリール様が作りたがっていた石が出來てね……それを飾ったのよ」

そう説明してから、その石をでて見せた。

「すごい! これがあれば戦爭も爭いもなくなるんだ!」

「……え?」

「グエンリール様が言ってた! あいつの心を改心させるために。あいつに心をむしばまれたものを癒やすためにこの石が必要なんだって!」

「……!」

ならば。

「……ねえ、ウーウェン。もし、もしよ? 私がウーウェンの背中に乗せてもらって、この石を使ったとしたら……」

「ひとっ飛びであの國に行って、その石を使えるんじゃないかな?」

「ウーウェン! お願い、私を連れて行って!」

「さっすが、グエンリール様のご子孫、ボクのご主人様だ! ……って、大の敵はボクが排除できるとして、デイジー様の防はどうするの?」

「私にはこの石があるから……」

そう言って、私は左手の中指につけた指れる。

……そう。きっと、緑の霊王様が守ってくださるわ。

この指を裝備していれば、魔法も武攻撃も通じない障壁が出來るから。

だから、きっと大丈夫。

……私が。

……私が、一人……いえ、ウーウェンと一緒にあの國に行ってこの指を使えば。

この世を儚んで去ってしまったいにしえの神々の思いも、きっと、かなえて差し上げることが出來るはず。

……戦爭なんて、絶対に起こさせないんだから!

私は心に決めるのだった。

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