《乙ゲームのヒロインで最強サバイバル 【書籍化&コミカライズ】》13 狙われる子供たち

【アリア(アーリシア)】【種族:人族♀】【ランク1】

【魔力値:54/65】13Up【力値:33/37】

【筋力:3(3.3)】【耐久:4(4.4)】【敏捷:5(5.5)】【用:6】

【隠Lv.1】【暗視Lv.1】

【生活魔法×6】【Lv.1】【無屬魔法Lv.1】

【魔力制Lv.1】【探知Lv.1】

【総合戦闘力:26(強化中:28)】

私は十日ほどかけてようやく【回復(ヒール)】を覚えて【Lv.1】を會得した。

長かったような気もするけど、十日という時間は一般的にはかなり早い部類で、これは他の呪文を習得している魔師が新たに呪文を覚える速度に匹敵する。とてもじゃないけど、子供が一から覚える速度じゃない。

けれど、その甲斐あってランクもゼロから【ランク1】になった。

ランクレベルは屬や戦闘技能のレベルがそのままランクの數字となる。これで冒険者ギルドに加できる最低條件はクリアしたけど、すぐに加するつもりはない。

それは最低でも1レベル相當の近接戦闘スキルを得なければ、私のような子供はすぐに他の冒険者に食いにされかねないからだ。

近接戦闘訓練は続けているけど、いまだにスキルは覚えない。

もっと近接戦闘の練習を続けるか、それとも、もっと【回復(ヒール)】の単語の意味を調べて魔度を上げるか。もう一つの第一階級魔である【治癒(キユア)】も覚えたいところだけど、そろそろ資が心許ないので久しぶりに町に行こうと思い立った。

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本當なら次に町に行くまでにお金になる売れるを集める予定だったけど、魔の修行にかまけてあまり集められていない。

雑貨屋のお爺さんも兎を持ってこいと言っていたけど、兎が狩れたら私が食べるし、まだ解も稚拙なので皮も売れる狀態ではなかった。

「……仕方ない」

この三週間の森生活で見つけた特殊な野草類を持っていく。

ご家庭の常備薬であるどこでも生えている解毒の薬草や、比較的見つかりやすい除蟲草は持っていってもお金にならない。タダではないけど麻袋にたっぷり詰め込んで銅貨數枚では持っていくほうが手間がかかる。

私は、あのが魔の師匠から盜んできた手書きの薬草本を読み込んでいる。

最初は辭書を引くように“知識”から単語を引き出さないと読めなかったが、今はゆっくりとだけど読めるようになっていた。

その知識を基に見つけたのが『魔香実(まこうじつ)』だった。

これは魔素のない地域に生える低木に生る果実で、果は2~3ミリで渋みがあって食用には向かないけど、この実は過酷な環境で生きるために種の部分に魔素を溜め込む習があった。

この種の部分を使って、魔力を回復する“魔力ポーション”が作られる。

薬草本には錬金の基礎も書いてあり、私自もいずれ錬金をはじめるつもりだけど、今はがないので何も出來ない。

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これを見つけたのは幸運だった。山の崖に一本だけその木が生えていて、しだけ実が採れたけど、このまま持っているより売るほうがいいだろう。

何故かと言うと、種の部分しか使わないので長期の保存は利くが、それには専門の処理をしなければいけない。それと果実の部分は魔力はないし食べられないけど、その果実の部分が魔力の拡散を押さえているらしいので、果実のある狀態なら種だけより高値で売れるから、実が傷む前に売ってしまいたい。

出掛ける前に食事を済ます。前回買った乾燥野菜も干しもほとんど殘ってなかったけど、最後の々になった乾燥野菜と干しを煮込んで塩だけで味付けしたスープを胃に流し込む。

や鍋は生活魔法の【化(ハード)】で固めた粘土のを焼いただ。売りにはならないけど、この數週間でそれなりに使えるものが出來るようになった。

出來たスープは味しいものではないけど、溫かいものを胃にれるとしだけ活力が湧いてくるような気がしたし、そもそも食には耐がある。

拠點にしている上流の小川で、服をいでを洗う。

私は浮浪児だけど、あまり浮浪児に見られるような格好は好ましくない。の売買で足下を見られるし、領主から保護されていない浮浪児は略奪の対象になりやすい。

だから服も偶に洗濯しているけど、そろそろ新しい服を買うべきだろうか?

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比較的まともな古著だったが、森の生活であちこち解れてきている。それ以上に魔力が大きくなったことでが急長して裾が短くなってきたような気がする。

膝上程度だった貫頭の裾が、の半ばくらいまで短くなっていた。別に中を見られても気にはしないけど、戦闘技能を會得する前にだとバレると厄介ごとが増えそうな気がした。

私にはよく理解できなかったけど、“知識”はそうなっているので注意はするべきだろう。

さて出発しよう。が沈みはじめた辺りで背負い袋を擔いで野営地を出る。

今の私の立場だと、街道を巡回する兵士が一番面倒だ。子供だからと保護されても困るし、悪い兵士だと逃げ切れるか自信はない。けれど夜なら私はまだレベル1だけど暗視スキルがあるので何とかなるだろう。

魔素をで見ることで會得した技能だったけど、この三週間の森生活で度は確実に上がっていた。兵士は面倒だけど、彼らが危険な狼などを排除してくれているので、私にとっては夜のほうが安全だった。

強化を使って街道を音もなく歩き出す。魔素を周囲に合わせて気配を消す鍛錬と同時に、音を消してく訓練もしている。やってみて分かったことだけど、音を消すにはただゆっくりと靜かにくだけではなくて、筋力も重要だと気がついた。

腳や全の筋力を使って衝撃を緩和すれば音は自然と小さくなる。そして周囲の魔素の流れに沿ってけば、気配はさらに周囲に紛れる。

私は強化で速度を出すのではなく、衝撃を殺すように音を消しながら町への道を普通よりも速めに進んでいった。

「……ふぅ」

あの野営場から町まで普通の馬車なら四半日で、徒歩だと早朝に出て夜に著く。

前回は朝に出て、次の日の明け方近い真夜中に到著したが、今回は魔力量が増えて強化が持続できるようになったおかげか、夜に出て前回と同じくらいの時間に到著できた。

それでもかなり疲労したので、魔力と力を回復させるために周囲の森で朝まで睡眠を取ることにする。【回復(ヒール)】を使えばすぐにけるようになると思うけど、フェルドが言っていたように魔法で回復すると力がつきにくくなるのなら、修行中は出來る限り使わないほうがいいと思う。

木の上で仮眠をとり、朝の八時である三回の鐘で目を覚ましていつもの場所から町のスラムに侵した。

周囲の魔素に合わせるように気配を消し、踵をつけない歩き方で足音も消す。

【隠スキル】と【探知スキル】を得たおかげで、スラムの住人に気づかれることもなくなってきた。でも私には“知識”があっても実際の経験はないので油斷はできない。

「…………」

何か……“気配”をじる。

なんだろう……よく分からない。フェルドのように迸るような分かりやすい気配じゃない。正確には気配とはし違うな……“違和”と言えばいいだろうか?

何かが“ある”んじゃなくて、いつもあるが“無い”ような、そんな違和だ。

……気のせいかな? そう思いながらもし早足になってスラムを抜ける。あまりじがよくないので、買いをしたらすぐに町を離れよう。

「また來たか……“灰かぶり”」

「…………」

雑貨屋の扉をくぐると、店主の爺さんがジロリとした視線を向けてきた。

「また保存食料か?」

「うん、何か……日持ちして栄養価の高いものってない?」

「栄養価? ガキのくせに変な言葉を知ってんな。そんなものは知らねぇが、腹持ちするものなら木の実があるぞ」

店主が面倒そうに顔を顰めながらも奧から小ぶりの麻袋を持ってくる。

「適當なナッツを詰め込んである。小銀貨1枚だ」

「……焦げてるよ?」

日持ちさせるためにすでに炒ってあるが、妙に焦げたや割れたが多い。

「ここはそういう店だって言っただろ。まともなモノがほしかったら、まともな店に行きな」

たぶん、屋臺や店で売っているの、売れない部分を集めた余りだろう。

見栄えも悪く味も悪い。だから“表”では売れないが、捨てるくらいなら捨て値で売る。そして私のように安ければそれでも買う人もいる。

「……しオマケつけて」

「もうし買えばつけてやる。他にはあるか?」

「こういうは買い取れる?」

持ってきた魔香実の実を背負い袋から取り出すと、店主の爺さんが軽く目を見開いてから、またジロリと見つめてきた。

「……どこから持ってきた?」

「森の奧。目印がないから説明はできない」

「……そうか」

私の何を見て納得したのか、盜品ではないと理解してくれた店主は、ジッと睨むように魔香実を見てからしだけ考えるような素振りを見せた。

「これが何だか知ってるのか?」

「もちろん」

「……は悪くないが不揃いだ。し時間が経っているようだから痛みはじめている。買い手を捜す時間を考慮すると……定価では買えねぇぞ?」

「問題ない。ここは“そういう店”だから」

私がそう言うと、店主の爺さんが微かに笑う。

「全部で6個か。ならまとめて銀貨2枚だ。いやなら他に行け」

「それでいいよ」

おそらくは通常の半額以下といったところか。たぶん、まともなお店に持っていっても足下を見られてもっと値引かれる可能も高い。

それにこの店主の爺さんは、目付きが悪いし想もないし、子供に対しても甘くはないけど、商売に関しては誠実だとじていた。

他にも豆や干しし高かったけど塩と氷砂糖を量買って、それでも余った銀貨一枚を店主からけ取った。

干し野菜は店で買ったほうが安そうだけど、どうしようかと考えていると、背後の店の扉が開いて小さな影が飛び込んできた。

「ガキ共、靜かにってこいっ!」

店主が怒鳴ると飛び込んできた二つの影がを竦めるのが分かった。子供? と思って振り返ると、その子供たちを確認する前に子供の一人が聲をあげた。

「あっ! アリアっ!」

二人はこのスラムで出會った浮浪児の兄妹で、妹のシュリが私の名をぶと先ほど怒られたことなど忘れて抱きついてきた。

兄のほうのジルは、私とシュリと店主の爺さんに狼狽えたように視線をかして、爺さんの鋭い視線から逃れるように私に視線を定めた。

「あ、アリアっ、お前、どこ行ってたんだよっ」

「外だけど?」

彼らとは別に仲間でもないし友人でもない。そもそも町の住民でもない。私がシュリを引き剝がしながら素っ気なく答えると、ジルは怯んだように口を閉じてから、ふと思い出したようにズタ袋から何かを取りだした。

「俺だって外くらい行けるさっ。今日は外で狩った兎を売りにきたんだぜっ」

「……自分たちで食べたほうがいいんじゃない?」

町の外で兎を狩ったみたいだけど、捕まえるのに手間取ったのか兎の表面がボロボロで、しかも抜きをしていない。何気なく店主のほうに視線を向けると、爺さんは兎を見て面倒くさそうに溜息をついていた。

「アリア、背がびた?」

私とジルのやり取りをジッと見ていたシュリが口を挾む。

魔力が増えたことによる『長痛』がしていたのでそんな気はしていたけど、出會った時はほとんど同じだったシュリの目線がわずかに下がっていた。

「ところで、さっきは何で慌てていたの?」

あまり魔力のこととか説明するつもりもなかったので話題を変えると、それを思い出したようにジルが食いついてきた。

「そうだっ! 何か変なおっさんがいたんだよっ。俺とシュリのことジロジロ見てから顔を顰めてさ。なんか気持ち悪いから逃げてきたんだ」

「へぇ……」

変なおじさん? フェルドかな? そんな失禮なことを考えていると、その話を聞いていたのか店主の爺さんが聲をらす。

「最近、この辺りでは見なれない男を見かけるらしい。背格好やのこなしが盜賊系じゃないかって噂だ。ガキ共、攫(さら)われないようにしろよ」

「…………(こくん)」

盜賊か……面倒だな。今の私だと下手な戦士崩れより數段厄介だ。

盜賊はただの盜人やチンピラではなく、盜みのための技(スキル)を持っている。戦闘手段もたぶんあるだろう。彼らは『盜賊ギルド』と呼ばれるマフィアのような犯罪団に管理されていて、國がくような派手な真似はしないけど、所詮は金のためにしかかない連中なので何をしでかすか予想ができない。

來るときにじた“気配”のような覚はその男かも。

もしあれが気のせいではなく、本當にその場にいたのだとしたら、今の私なんて足下にも及ばないほどの手練れだとじた。

……さっさと町の外に出よう。

まだ買いは半端だけど危険を冒すわけにはいかないので、店を出るとそのまま町を囲む壁際のへと向かった。

また後をついてこようとする兄妹を隠で撒きつつ移していると、出口に辿り著く手前で、來るときにじた“気配”に気がついた。

正確に言えば気配は何もない。ただあまりにもなさ過ぎて逆に違和じ、そこに『手練れの盜賊』がいるのだと理解していれば、それが【隠スキル】ではないかという考えに結びついた。

靜かに視線を巡らすと、不自然な魔素の『』に気がつく。

眼だけで見ていたら見逃していた。魔素だけをじても周囲に紛れて気がつかなかった。

だけど、その魔素のが“人の形”のように見えてそこで視線を止めると、突然その人型の魔素が膨れあがった。

強化っ!?)

フェルドの強化を直にじていなければ分からなかった。いや、そう思えたのもほとんど偶然だ。そう思いついた瞬間、ほぼ無意識に私が橫に飛ぶと、その一瞬後に私がいた地面に鉄の刃が突き刺さっていた。

「ほぉ……」

を解いたのか、人間の気配を見せて一人の男が現れ、男の投げナイフを躱した私にニヤリと男臭い笑みを向けてきた。

しは愉しめそうだな」

突然襲ってきた盜賊の男は誰なのか?

次回、盜賊との戦い。

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