《乙ゲームのヒロインで最強サバイバル 【書籍化&コミカライズ】》45 禮拝堂のある街

思った通りディーノは監視を置いていた。

師匠は暗殺者ギルドと敵対できない。戦い続けることができないのもあるけど、闇エルフである師匠は、この人族の國で安全な場所を手にれるだけでも、かなりの時間がかかったはずだ。逃げ出すことはできるかもしれないが、そのためにはまた裏社會に頼らないといけなくなる。

だけど私は違う。人族である私は、どこにでも逃げることができるし、集落に溶け込んで隠れることもできる。

だからこそディーノはこの場所を監視させた。私を逃がさずに仕事をさせるためではなく、師匠に対する人質として逃がさないために。

ディーノは元から、子供である私のことなど當てにしてないのだろう。

だから私が師匠の代わりをすることをディーノが認めたのは、人質である私を暗殺者ギルドに縛り付けておくためだと思った。

あの時のディーノは分かりがよすぎた。私だって、いくら魔師の弟子でも、子供が暗殺をするなど信用はしない。だからあっさり帰ったディーノは必ず監視の目を殘していると考えたが、思った通り監視員は存在していた。

監視専門だったらしく見つけるのに苦労したが、必ずいると分かっていれば、魔素をで視る私なら探すことはできるのだ。

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念の為に幻で虛像を作って油斷させながら隠で近づき、ペンデュラムの一撃で始末した。戦闘員ではないと予想はしていたけど、一撃で殺せたのは運がよかった。

外した死の裝備は土に埋め、が抜けて軽くなった死を遠くに運んで捨てておいた。放っておけば狼あたりが処理をしてくれるので、これが一番確実だ。

五ヶ月間過ごしたこの森から出るときがきた。

この五ヶ月で季節は初夏から秋の終わりとなり、八歳になった私はまた長がびて、一般的な11歳くらいにまで長した。

厚みも重も足りていないけど、速度だけは大人に近づいている。だけでなく髪もかなりびていたが、師匠が切り揃えてくれる以外で短くすることはなく、長くなった髪は編み込んで、邪魔にならないよう首に捲く。

「またね。師匠」

次はいつ戻れるか分からない。師匠との別れはもう済ませてある。

それでも最後に一言だけ呟くと、私はそのまま荷を擔いで以前作った簡易拠點の方角へ走り出した。

人里のあるほうへは向かわない。五ヶ月も経っているのでグレイブの組織の監視も緩んでいるとは思うが、まだ油斷はしないほうがいい。

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でも私には、この貴族領を離れる前に一つだけやることが殘っていた。

もうすぐ冬になるが、南にあるクレイデール王國では、雪が降るほどの寒さにはならない。火を焚かない野営はし厳しい季節になったが、強化が使えるならが不調になることもなかった。

と暗視と探知を駆使して二日ほど森を駆け抜けると、すでに懐かしくじる森の簡易拠點に到著した。

半分以上枯れ葉に埋もれかけていたが一から作り直すよりマシだ。枯れ葉を木の枝で払い、朽ちた棒を取り替え除蟲草を焚いておく。

その間に川辺に向かい粘土を採取すると、拠點に戻ってあるを作りはじめた。

***

私はショールで顔を隠して夜の街を歩く。

街の外で行商人などに噂を確認して、ちゃんと間に合ったことを確認した。

季節が本格的に乾燥する前に間に合ってよかった。半年は猶予があると師匠とも推測していたけど、外れることもあり得たのだ。

そいつは傷を癒すためにけなかったはず。存在をギリギリまで削られ、激しい飢えに苛まれながらも、そいつは生きるために仮死狀態で足掻いていたはずだ。

だが空気が乾燥しはじめ、それも限界になっているだろう。

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私は前回の経験からそいつがいるであろう場所に目星を付けていた。あいつは必ずこの近くにいる。力を取り戻すためにまた襲ってくる。

闇夜に紛れながら私がセイレス家近くの水路に【流水(ウォータ)】を使って水を流すと、その気配がじられ、急速に近づいてくるのが分かった。

「決著をつけにきたよ。水霊」

【水の下級霊】

【魔力値:135/503】

【総合戦闘力:148/553】

【※狀態:狂気・衰弱】

『――――――!!!』

やっぱり生きていた。グレイブの戦技に斬られて滅んだかと思われたが、霊はそんな簡単に滅んだりしない。……本當にグレイブは余計なことをしてくれた。

ぶよぶよと膨らんだ野良犬の水死に取り憑いていた水霊は、もう魔法を使う余力もないのか、犬の水死って私に襲いかかってきた。

『――――!!』

「【化(ハード)】」

を使ってその攻撃を躱し、私は【化(ハード)】をかけた弾を小さなスリングで飛ばす。

『――――!?』

今回使っているのは粘土で作った2センチほどの“玉”だ。前回の戦いで、水霊の魔力だけを削ればいいと分かったので、武に拘ることは止めた。

私は水霊の攻撃を回避しつつ、的確に弾を當てて水霊の存在を削っていく。

きが遅い。弱っている……やはり、あの時に私の手でケリを付けたかった。

でも、水霊を放置してあの姉弟を危険に曝すわけにはいかない。それに私は自分の手でお前を倒す理由もあった。

には拘らないと言ったが、それでも一本だけ粘土を焼いて小さなナイフを作っていた。

戦闘スキルは命を懸けた実戦で大きく長する。この五ヶ月間鍛錬を続けても、ジャイアントスパイダーを倒しても上がらなかったけど……

「水霊(おまえ)の命を私の“糧”にさせてもらう」

スリングを仕舞い、粘土のナイフを右手で構えて水霊を真正面から迎え撃つ。

その“技”は何度も目にした。

ヴィーロがそれを使って山賊を倒すところを見た。

盜賊が使って、その攻撃を直にけた。

瞳に焼き付いたその技を魂に焼き付けるように魔力を込め、真正面から迫りくる水霊に臆することなく、必ず使えると信じて発する。

「――【二段突き(ダブルエッジ)】――」

短剣レベル2の戦技【二段突き(ダブルエッジ)】が発し、水死の牙を砕いてその眉間を貫いた。

『――――――――!!!!』

戦技の魔力が水霊の護りを砕き、土屬の【化(ハード)】魔力がその核を貫いて、聲のない斷末魔をぶ野良犬の水死から大量の水が溢れて、その魔力が拡散していった。

【アリア(アーリシア)】【種族:人族♀】【ランク2】

【魔力値:112/165】5Up【力値:97/120】15Up

【筋力:6(7.2)】1Up【耐久:6(7.2)】【敏捷:8(9.6)】1Up【用:7】

【短剣Lv.2】1Up【Lv.2】【投擲Lv.2】【糸Lv.1】

魔法Lv.2】【闇魔法Lv.2】【無屬魔法Lv.2】

【生活魔法×6】【魔力制Lv.2】【威圧Lv.2】

【隠Lv.2】【暗視Lv.2】【探知Lv.2】【毒耐Lv.1】

【簡易鑑定】

【総合戦闘力:148(強化中:166)】20Up

霊に勝利し、私は【短剣】スキルレベル2を手にれた。

これからの戦いに2レベルの短剣は必須であり、長を待たずに會得する必要があったが、並の相手では上がらない。

だからこそ私は、霊という特殊な存在を『斬る』ことと、必死の覚悟で戦技を放つことで、無理矢理短剣をレベル2に上げたのだ。

本當なら10歳以下で近接戦スキルレベル2を得られることはまずないけど、ようやく手にれることができた。

だけど、いつまでも余韻に浸ってはいられない。し離れているとはいえ、魔力や戦技を使ったことでセイレス家の方から人の聲が聞こえてきた。

私は即座に隠を使い、暗い夜の闇にを隠す。

しだけ視線を向けたその先に、セイレス家の屋敷二階にあるテラスから、あの姉弟が不安そうに顔を出していた。

大丈夫だとは思っていても無事を確認できてよかった。

もう憂いはないと、この場所から離れる寸前にもう一度だけ振り返ると、弟のほうのロディの口が『アリア』と言ったように見えた。

***

夜のうちにセイレス男爵の街から離れて目的地へ向かう。

街道は通らない。明るい時間はできるだけ避けて夜に移する。ダンドールから來た道を逆に辿り、十日間ほどでヘーデル伯爵領に到著した。

ヘーデル伯爵領には二つの大きな街があり、その一つはヘーデル伯爵が住む商業の盛んな街で、もう一つは産業の盛んな多くの職人が住んでいる街だ。

冒険者ギルドや商業ギルドのような重要施設は伯爵の住む街にあるが、私が用があるのは職人たちが住むもう一つの街のほうだ。

この街の特徴としては、職人たちが住む住宅地がある南側と、工業地區がある北側に綺麗に二分されていた。朝と晩には職人たちの大移があり大変賑やからしいが、晝間は意外なほど穏やかな空気に満たされていた。

それというのも、住宅地區と工業地區の境目には、この北辺境區でも最大規模の禮拝堂があり、低い建ばかりが立ち並ぶこの街でその禮拝堂だけが高くそびえ立ち、ある種の異彩を放っていた。

その禮拝堂こそが私の目的地であり、『暗殺者ギルド』の北辺境地區支部の本拠地とも言える場所だった。

外から見た限りでは、本當に暗殺者ギルドと関わりがあるのかと疑いそうになるが、ディーノから渡されたメモや師匠から聞かされていた容と一致する。

師匠からは直接場所を聞いていたが、ディーノのメモには直接の場所ではなく、案人との連絡方法が記してあった。

ショールで顔を隠しても、街中では隠はあまり使わない。どこにどの組織の人間がいるのか分からない狀況で隠を使うのは、自分の正をバラしながら歩いているようなものだ。

一日かけて街を見て回り、翌日に食料品や生活雑貨を売っている地域に足を運ぶと、その裏路地にいる一人の乞いに銀貨を1枚放り投げた。

「“案”を頼む」

「……“どこ”まで?」

かなりの速度で投げた銀貨を片手でけ止めた乞いは、薄汚れた片眉をわずかに上げて、その言葉を返してきた。

「“墓場”まで」

「……ついてこい」

乞いが音もなく立ち上がり先を歩き、私は數歩離れてそれに続く。

この乞いは暗殺者ギルドの『案人』だ。ただの案人ではなくおそらくこの辺りの監視も兼ねているのか、200近い戦闘力を持っていた。

「お前のことは聞いている。本當に子供なんだな」

「……確認はしないの?」

「俺たちが、この地の領主に捕まることはない。お前が他領の諜報員だとしても、処刑臺に上がるのはお前のほうだ」

「なるほどね」

……領主もグルか。

「ここまでだ。ここからは一人で行け。八十八の六だ」

その場所は、禮拝堂の橫手にある階段から下りた巨大な地下墓地だった。

わずかなロウソクだけが照らす暗闇の中を進み、八十八と書かれた石造りの小屋にって六番の棺桶を開くと、さらに地下へ続く階段が現れた。

そこから下りて、息苦しくなるような狹い通路を通っていくと、開けた空間があり、そこにいた奇妙な黒いドレスを著た若いが、真っ赤なでニヤリと笑った。

「待っていたわよ。闇エルフの弟子」

霊と決著をつけ、短剣がレベル2になりました。ディーノのことがなくても準備ができたら倒す予定でした。

すみません、予定したところまで辿り著きませんでした。

辿り著いた暗殺者ギルド。そこに現れたは何者なのか?

次回、暗殺者ギルドの仕事。

次は土曜更新予定です。

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