《乙ゲームのヒロインで最強サバイバル 【書籍化&コミカライズ】》62 暗殺者ギルド攻略 ①
移回です。
「アリアちゃんっ、たった一ヶ月でどうしてこうなったのっ!?」
王都にあるドワーフの防屋に向かうと、いつものように他の客が居ない店で、私の裝備を見たゲルフがか弱い乙のように野太い悲鳴を上げた。
私は影使いラーダとランク4冒険者パーティー暁の傭兵を倒すことができた。
経験を積むためにランク4であるダガートと正面から戦い、ギリギリの戦いで勝利できたが、私自のダメージも大きく、その傷を癒すのに二日も費やした。
防に関しても同様で、魔系の戦技や攻撃をけた革裝備は魔力で再生しきれないほど傷つき、全が塗れになるほど浴びた大量の返りは、の臭いを取るために何度も水で洗い、【浄化(クリーン)】まで使ったせいか、表面が以前とは違ったゴワゴワとしたじになってしまっていた。
「直る?」
「本當にアリアちゃんはマイペースねっ! ここまでくると専用の薬品を使ってオーバーホールしないと無理ね。半月はかかるわよ?」
裝備の狀態を見ながらゲルフが溜息を吐く。今の裝備はゲルフに貰っただが、蕓家系のゲルフには作品に思いれがあったのかもしれない。
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「ごめん……」
「ああ、もうっ、そんな顔しないでいいわよっ。私が勝手に押し付けたんだから」
「でも、半月も時間はないから、破れた部分だけ修復できる?」
「ああ、それなら良いがあるわよっ! こっちいらっしゃいっ」
「……え?」
ゲルフに腕を引かれて、また店の奧に連れ込まれた。
どうやらゲルフは、以前自分用に作って見た目的に著られなかった作品類を何點か、私のサイズで作り直していたみたい。
「今まで著ていたのは私が預かるわ。無理に修復するより、専用に漬け込んで自然回復させたほうが良さそうだしね。だから、アリアちゃんにはこれを著てほしいの」
「……ワンピース?」
今回貰った裝備は、の半ばまで裾がある革製の半袖ミニワンピースで、下は膝上まで隠れる布製の靴下をガーターでぶら下げて裝備するらしい。
ちゃんと師匠から貰った左の手甲やブーツも裝備できるし、全沢のない黒一なので見た目も問題ない。
思ったよりもきやすく、久々のスカートと言うことでに投擲ナイフを括り付けていると、真剣な顔をしたゲルフに小さな紙包みを渡された。
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「……アリアちゃん、これ履きなさい」
「ん? わかった」
あのの“知識”があってもソレの必要が分からなかったが、ゲルフがいるというのなら必要なのだろう。
渡されたは用の下著だった。でもそれは前に見たドロワーズではなく、あのの“知識”にあった橫で縛るタイプの小さな三角形の下著だった。
なんでもあのダンドール辺境伯のお嬢様が一年前に開発して市場に出てきたらしく、年頃のご令嬢や、新しもの好きな冒険者の間で徐々に広まり、ゲルフも用していると言っていた。
それから一応自分でも出來るけど、手甲とブーツのギミック整備をお願いしておく。整備には一日ほどかかるというので、私はそれまでに王都でやるべきことをやっておくことにした。
暗殺者ギルドの仕事の流れは、依頼者が裏社會を通じて暗殺を依頼し、特に貴族絡みで問題がなければ金後に暗殺者を送る。
暗殺期間は、金後半年から一年程度で、それ以上経過すると依頼未達で依頼料は違約金込みで返金される。
意外と真面目に思えるが、こういう業界は貴族が多く絡むので、表社會よりも信用が重視されるそうだ。
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暗殺者は依頼達後に証拠となるをギルドに提出する。
近場の案件なら暗殺者自がギルドまで持って帰るのだが、今回の場合は北辺境地區支部の擔當ではない王都周辺と言うことで、先に連絡員に証拠を渡して依頼の完了だけを伝えてもらうことになっていた。
ラーダからの資料にあった商業ギルドの貸金庫に、暁の傭兵から奪った冒険者タグをいれておく。
適當な時間になればもう一人の連絡員が回収し、何らかの手段で依頼が完了されたことを暗殺者ギルドに伝えた後、報告を兼ねてタグをギルドまで持ち帰るはずだ。
ここで見張っていれば連絡員の顔を見ることが出來るかもしれないが、私はあまり意味はないと考える。
回収に來るのが連絡員とは限らず、何も知らない一般人である可能があること。そして、暗殺者ギルドを油斷させるためにも、依頼完了の報は必ず送ってもらわないと困るからだ。
報が屆けば油斷する。それでも連絡員が戻ったタイミングで“監視役”であるラーダが戻らなければ警戒する者も出始めるだろう。
連絡員は通常ルートで戻るはずなので、一ヶ月半はかかるはず。私が近道である渓谷を通れば半月は短できる。
その半月間に、私は現地で暗殺者ギルドを倒す算段を立てなければいけない。
……やはり移時間がかかりすぎるのは問題だな。
馬を飼うことも考えたが、馬では馬車より速くても、渓谷のような魔が出る場所や森の中は通れない。
一般スキルで【調教(テイム)】スキルというものがあり、馬車の者や騎士などが持っているそうで、それがあればもうし速くなるとは思うが、今はそれを取得する暇もない。
そこら辺はこれからの課題だな。でも馬は止めておこう。私みたいな子供が乗っていればそれなりに目立つし、そもそも専用の駿馬はかなり高額なはず。前金は貰っているがそんなに余裕があるわけじゃない。
ちなみに暁の傭兵からはタグと品のネックレスしか奪っていない。
使えそうな魔法のカバンや金銭もあったが、相手が盜賊や山賊ならともかく犯罪者とはいえ冒険者から奪うのは気分的に好きじゃない。
それに暁の傭兵は、疑われてはいるけど犯罪の証拠もない、一般的には普通の冒険者パーティーだ。なので今回はダンジョンの事故死とするため、私がカバンなどを使うわけにもいかなかった。
それでも誰かが見つけて著服するかもしれないけど、その時はその人たちが第一容疑者になるだけだ。
あのダンジョンのある街を離れる前に、念の為、私が疑われてないことを確認するため冒険者ギルドにも顔を出したが、あの奇妙な――カルラと再び出會うことはなかった。
……本當にまたアレと會うことになるのだろうか?
それから王都で使い捨てできる投擲ナイフや食料などを補充し、一部は【影収納(ストレージ)】にも仕舞って、翌日裝備をけ取った私はゲルフに禮を言ってから王都を出立した。
品のネックレスの持ち主はダンドール辺境伯領の隣にあるノルフ男爵だと聞いている。本來ならすぐに品を返してあげたいけど、もうしだけ待ってもらおう。
その地に寄れば余計な時間がかかるのもあるが、品が男爵の手に戻れば私が近くまで戻っていることがギルドにバレる可能があるからだ。
今回、暗殺者ギルドに戻る時、私は自分が戻っていることをギルドに悟られてはいけない。暗殺者ギルドの全員を相手にして罠に掛けるためには、私は自分の存在を完璧に隠す必要があった。
暗殺者ギルドは冒険者ギルドや盜賊ギルドと違って人員はないが、それでも市井に紛れた監視の目は存在する。
でも彼らはギルドの息がかかっているだけでギルドのメンバーですらなく、市民として普通に暮らしている人間もいるはずだ。
なので彼ら全員の暗殺は出來ないけど、私はギルドがあるヘーデル伯爵領にる前からレベル3になった隠スキルを駆使して、誰にも見つからずに禮拝堂のある街へと舞い戻った。
晝間は森の中で仮眠をとり、夜に紛れてしずつ街に近づいていく。
街にった後は、晝間は廃屋に隠れて息を潛めて、徐々に目的地へと向かう。
ここからは孤獨な戦いだ。姿を消して息を潛め、闇の中で牙を研ぎ、ひたすら時が來るのを待つ。
生活魔法の【流水(ウォータ)】があれば渇きを覚えることはない。レベル2の【暗視】があれば完全な闇でも問題はない。
食事はここに來る前に錬金で作っておいた丸薬で済ませる。
これはポーションを作る材料を、煮出してにするのではなく末にして魔力で練り合わせただ。ポーションほどの回復量はないけど持続があり、一日に1センチほどの玉を10粒も食べれば、一週間くらいなら力と調を維持できる。
それに、食と空腹はあの孤児院にいた頃から慣れている。
普通なら街にって一日で到著できる場所に三日掛けて侵した。
レベル3の【隠】スキルでも、を視る暗視と合わせて人のいない場所を選べば、レベル4以上の効果を発揮する。
実際にレベル3の隠系スキルを持つであろう『監視の乞い』の橫を通っても気づかれもしなかった。
今回もレベル4のスキルがあればだいぶ楽は出來るのだろうが、私は將來的に自分がレベル4になれるとは限らないと考えている。
時間さえ掛ければ誰でも取得できる『一般人の限界』であるレベル3と違って、レベル4は本當に才能のある者しか取得できない、大きな壁が存在している。
それでも私はランク4のダガートを倒した。
ランクや戦闘力は強さの目安でしかなく、本當の強さとはその『使い方』なのだと私は理解した。
向かっている目的地はギルドがある禮拝堂の地下墓地だが、馬鹿正直にり口から侵するわけじゃない。
前回ギルドに戻ったとき、私は地下の隅々まで見て回った。
あのギルドは廃坑を利用しているので、奧に広く、り組んでいて、何カ所か通気口が設けてある。
私は探知を使った方向覚と歩數で距離を調べて通気口の場所を記憶した。地下墓地にある該當箇所を闇に紛れて細かく調べていくと、丸二日かかったが全ての通気口を見つけることができた。
私はそのうちの一つ、『二十一』と書かれた石の部屋に忍び込み、拳大の通気口の周りにある石を外し、ダガーを使って土を掘る。
武をこういうことに使いたくないが、あまり時間は掛けられない。この街にってからすでに五日が経過し、連絡員がギルドに到著するまであと十日しかない。それでも意外と土はらかく、私はさらに三日ほど掛けて暗殺者ギルドの部に侵することに功した。
ゴソッと天井の石が落ちて通路に転がる。
他の場所ならその音で見つかっていたかもしれないけど、この場所だけはそんな心配はなく、私はここにソイツ以外誰もいないことを知っていた。
「……グアアアア」
通気口のある細い通路からその部屋にると、腕ほどの太い鉄格子に阻まれたその奧にいた異形の影が、警戒するように唸りをあげて濁った瞳を私へ向け、私は彼に向けてしだけ微笑んだ。
「ゴード……あなたを自由にしてあげる」
いよいよ攻略開始です。
いただいているご想の容は、プロットとメインストーリーに影響がないかぎり、その一部を反映させていただいております。
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