《乙ゲームのヒロインで最強サバイバル 【書籍化&コミカライズ】》78 オーク攻略戦 ②

『ブボォ……』

オークたちの顎の下から脳に突き刺した刃を引き抜くと、ゴボッと咳をするようなを零してオーク二が同時に崩れ落ちた。

ここからは時間の勝負だ。住民が逃げる時間を稼ぐ遅延作業と、オークジェネラルが私の存在に気付くまでどれだけオークを無力化できるかの同時作業になる。

最低限の必要な荷は腰のポーチと【影収納(ストレージ)】に移した。

背負い袋の中に最後に殘った氷砂糖と干しを食い千切り、この三週間で消耗した調をしでも戻すために、力回復ポーションと魔力回復ポーションのコルク栓を抜いて一気に呷る。

「ふぅ……行くか」

ポーションの濃い魔素に酒を呑んだような熱い息を吐き、私は空になった陶瓶と背負い袋を投げ捨て、が屆かぬ薄暗い森を飛び出すように駆け出した。

森の食料調達班はあと二つ。毎回ほぼ決まったルートを通るのでしくらい行が変わっても問題なく捕捉できるはず。

「見つけた」

走り出して數分後、最初の地點より1200メートルほど移した地點で、二つ目の食料調達班を捕捉する。

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まだ魔力は全回復していないが、魔力ポーションの効果が持続しているうちに移にも強化を使う。

そのままの勢いで木の幹を蹴って斜めに飛び出すと、その瞬間、私に気づいて聲をあげようとしたオークの口に黒いダガーを貫通するまで突き刺した。

『グガァ…』

力値が下がっているくせに、延髄まで貫いて即死しないとは面倒な奴らだ。

手をばしてくるオークに、ダガーから手を放した私は【影収納(ストレージ)】から出した二本の暗を咽に突き刺して離する。

『ガァアアアッ!?』

『ブモォオオオッ!!!』

そこでようやく気づいた他の二が困と怒りのびを上げた。

こいつらからしてみれば、レベル4の隠を使っていた私は森の景から突然滲み出たように見えただろう。

すかさずペンデュラムの刃を振り回して二を牽制すると、予備のナイフと細いナイフをブーツから抜いてまだ困しているオークの首を斬り、細いナイフを顔面に突き立てた。

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『ブモォオオオオオオオオオオオオッ!!!』

最後の一が石斧を振り上げて襲いかかってくる。

だが戦闘力が下がっているせいか、きが鈍く、集中力が足りていない。

オークの顔面に細いナイフを殘してオークの石斧を避けると、私は殘ったフェルドのナイフを見せつけるように頭上に投げ捨てた。

集中力が足りないせいでオークの意識がナイフに逸れる。

すかさずペンデュラムの糸をオークの首に巻き付け、で脇をすり抜けるように背後に回ると、後頭部を蹴りながら首を糸で絞め、落ちてきたナイフを宙で摑んでオークの首に水平に突き刺した。

「……次」

最初に刺したオークもすでに死んでいる。生命力が強くても力値が下がっていたので持たなかったようだ。

死んだオークからナイフを回収して糊を拭い、次の目標を求めて走り出す。

衰弱して力値が下がっても、生命力が高いせいで急所以外の一撃死は難しい。

通常なら、まともにランク3の相手をすればもうし手こずるのだろうが、集中力を欠いて戦闘力が下がっている今の連中なら、幻や戦技を使わなくても數なら対処できそうだ。

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できれば上位種が出てくるまで魔力の消費は抑えたかった。

私にもう重があればだけでも安定して倒せるのだが、無いねだりをしても仕方ない。

同じように森で見つけた食料調達班の四と、巡回していた三のオークも先ほどと同様に不意打ちで対処して始末した。

これで十三。だけどグズグズしてはいられない。私は農園に作を奪いに行った連中が町の周囲に辿り著く前に、そちらも対処するべく走り出す。

強化を使って森の中を飛ぶように駆け抜ける。

強化をすれば、筋力は大人の男を軽く超えて、敏捷度は一般人の倍近くまで跳ね上がる。それを重の軽い十代前半ので使えば、豹よりも軽く狼よりも速く森の中を走ることが出來た。

地に降りることなく巖から巖へ跳びはねるように森を進み、回復ポーションの効果が切れた頃、森を出る前のオークたちを捕捉できた。

魔力回復ポーションはポーチの中にもう一本あるけど、上位種戦を考えれば、これでもう本當に魔力の無駄遣いはできない。

だけど……し多い? 目測だけでも十二はいるように見えるが、それでも私のやることは変わらない。

嫌な予じたが、距離的にコイツらを観察する時間の余裕はない。

私はペンデュラムを太い枝に巻き付けて上に登り、筋力と隠を強化しながら枝から枝へと飛び移り、私はそのまま飛び降りるようにして最後尾を歩くオークの一に不意打ちを仕掛けた。

『ブモォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

見つかったっ? 不意打ちをかけようとした瞬間、オークの一からあがった警戒のびが森に響く。

でも最後尾の一は警戒の聲を聴いても私を見つけることができず、黒いダガーで延髄を貫かれて、私のクッションになるように地に倒れ伏した。

――十四目。

『ブモォオオオオオオオオオオオオッ!!』

『ブォオオオオオオオオオッ!!』

周囲のオークが警戒のびをあげるが、まだ隠を持続していた私を、集中力に欠いたオークたちは一瞬で見つけることが出來なかった。

「――【診(フィール)】――」

嫌な予に出し惜しみは止めて、消費のない魔法を解する。

れたを得てれられたを與える【診(フィール)】を使って、左右にいたオークの耳に幻れると、一瞬背後に気が逸れて振り返るオーク二の首にペンデュラムの糸を巻き付けて強く引き、勢を崩して仰向けに倒れてくるオークたちの延髄から脳に、黒いダガーと細いナイフを突き刺した。

――十六目。

『ブォオオオオオオオオオッ!!!!』

そこでようやく気づいた近くのオークが、著地して膝を付いたままの私に振り上げた棒を振り下ろす。

やはりこいつらもきが鈍い。私はわずかに腰を浮かせて歩法を使い棒を躱すと、そのまま引き抜いた両手のダガーとナイフをオークの両目に突き刺した。

『ブモォオオオオオオオッ!!!?』

勢が悪かったので脳まで貫通できず、オークが悲鳴を上げて両手で顔を押さえる。

『ボォオオオオオオオオオオオッ!!!』

その隙を突くように大柄なオークが錆びた大剣を構えて、とんでもない勢いで襲いかかってきた。

オークソルジャーかっ! ランク4の強敵。さすがに速いがそれでも対処できない速度じゃない。

跳び避けると同時に顔を押さえていたオークをそちらに蹴り飛ばすと、オークソルジャーの大剣がそのオークのを半ばまで斬り裂いた。

――十七目。

オークソルジャーの大剣がオークに食い込んでいるのを見て、私はすかさずスカートのスリットからナイフを抜いて投擲する。

『ブモオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』

それに対してオークソルジャーは雄びを上げ、大剣ごとオークの死骸を持ち上げてナイフの盾にした。

『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

大剣持ちのオークソルジャーを飛び越えるようにして、槍を持った革鎧のオークが襲ってくる。

オークソルジャー二目っ!?

即座にギミックからクロスボウの矢を撃ち、私も橫に飛ぶと、槍を回転させて矢を弾いたオークソルジャーは、著地すると同時に地面を蹴って私を追ってきた。

「――【幻痛(ペイン)】――」

魔法を全て解して【幻痛(ペイン)】を放つ。でもそれは槍のオークソルジャーを狙ったものじゃない。

『ブォオッ!!?』

戦いに割り込めずに棒立ちするオークに【幻痛(ペイン)】を使い、直するそいつの首に糸を巻き付けながら再び盾にするべく飛び越えると、オークソルジャーの槍がオークのを容赦なく貫通してきた。

「っ!」

とっさに仰け反り、肩にられながらも塗れの穂先をギリギリ躱す。

さらに私が下がると同時に槍のオークソルジャーが槍を橫に振るい、ゴミのようにオークの死骸を投げ捨てた。

だが、これで十八目――

「っ!?」

魔力の高まりと殺気をじて跳び避けると、それまで私がいた地面と背後の大木が衝撃波に斬り裂かれた。

そちらに目を向けると、錆びた鉄鎧に錆びた両手斧を持ったオークが、振り下ろした斧を再び構えて私を睨め付ける。

またオークソルジャーっ! 三目かっ!

今のは私も初めて見るが、たぶん両手斧の戦技、【鉄(アイアン)砕(ブレイク)】だと思う。

相手がスキルを持っていてもあまり戦技を使う魔がいなかったので、その危険を失念していた。

『ブモォオオオオオオオオオオオオッ!!』

そのオークソルジャーは雄びを上げて殘った四の通常オークに指示を出す。おそらくこの個が私の接近を見破った奴だろう。

大剣のオークソルジャー。

槍のオークソルジャー。

両手斧のオークソルジャー。

集落の大半が衰弱して切羽詰まっていたと言っても、人里での食料調達にランク4である三ものオークソルジャーを護衛に付けていたとは思わなかった。

この戦力なら町を直接襲って人間を攫うくらい考えていたと思う。

これが私が恐れていた想定外の事態だ。初期狀態でこれにならないように私の存在がバレないように注意してきたが、ままならないな……

一旦仕切り直すように槍オークソルジャーがわずかに下がって、大剣と両手斧が前に出てその橫に並ぶ。

時間がなくても最初に監視をするべきだったか……。時と場合によるし、それでも最初に不意打ちをかけるのがオークソルジャーの一になるだけだったけど、これは今後の教訓としよう。

私にとっては想定外だが、それを襲撃する私が居たのだから、それを指示したオークジェネラルの判斷は正しかったと言える。

だが、その判斷は正しくても、それが“正解”かどうかは結果が出るまでわからない。

「…………」

オークソルジャーたちと睨み合うように対峙しながら、私も火照りを冷ますように息を吐いて、靜かに黒いダガーを構えた。

想定外だが私にとっては運が良かった(・・・・・・)。

オークソルジャー三が町に向かうのを止めることが出來た。

なくとも、オークソルジャー四とオークジェネラルを同時に相手することは避けられた。

お前たちを先には行かせない。あの拠點に帰らせもしない。人のために戦うなんて言うつもりはないが、お前たちは私の“敵”になった。

お前たちを倒して、私はまたしだけ強くなる。

直接の足止めを開始したアリア。

その前に立ち塞がるランク4――三のオークソルジャーたち。

次回、対オークソルジャー戦

次はたぶん火曜日あたりの更新になります。

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