読みにくかったので修正しました。

『グボォガァアアアッ！！』

毒矢をけた〈弓〉のオークソルジャーが、顔面を押さえながら絶を上げて崩れ落ち、矢が刺さった左目を中心に顔半分が青黒く染まると、すでにその生命は失われていた。

そのあまりの死に様に騒いでいたオークたちが靜まりかえる。この毒は一度師匠の所に戻った時に厳重注意付きで貰っただが、この威力ならそれも頷ける。

下手な使い方をすれば敵が死ぬ前に私のほうが死んでしまうかも。

『グガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ！！！』

雄びをあげて怯え始めたオークたちを正気に戻すと、オークジェネラルは屋の上に立った私と睨み合う。

の上半に鎧の代わりに無數の金屬をに付け、下半に巨大な昆蟲の殻を使った鎧を著た、３メートルを超える巨大オーク。

上位種を殺したことで“オークジェネラル”は私を“敵”と見なした。

【オークジェネラル】【ランク５】

【魔力値：173/190】【力値：347/710】

【総合戦闘力：883/1457（強化中：1234）】39％down

【狀態：衰弱】

スカートを翻してのホルダーからナイフを抜き撃ちして、まだ混しているオークを狙うと、目とを貫かれた二のオークが悲鳴を上げる。

『ガアアアアアアアアアアッ！！！』

配下を攻撃した私に、即座に反応して突っ込んできたジェネラルは、手に持つ黒い六角棒で下から薙ぎ払うように屋ごと私を吹き飛ばした。

２メートルもある真っ黒な六角棒。このじだと魔鉄製か……これだと武破壊どころかけ流すことすら不可能だが、悪いけどお前とまともに戦うつもりはない。

突っ込んできた瞬間に離を始めていた私は、砕されて宙を舞う瓦礫の上に乗るようにして廃屋の向こう側へ飛び、腳の筋力と関節をクッションにして著地する。

ドゴォオオオンッ！！！

『グォオオオオオオオオオオオオッ！！！』

そのすぐ後に、殘った壁を砕しながらジェネラルが追ってきた。

だがそこに“私”の姿はない。【幻影(シヤドー)】を囮にしてその場から離れた私は、ジェネラルとれ替わるようにオークたちが居た場所へと駆け戻り、その勢いのまま恐怖に顔を引きつらせたオークの顔面を黒いダガーで突き刺した。

――四十二目。

強力な毒は対象を殺すだけでなく、それを見た者たちを恐れさせる。私が〈弓〉を最初に狙ったのは上位種だったからだけでなく、その強い個を無慘に殺すことで恐怖した者たちを縛る“見せしめ”だ。

オークからダガーを抜き取ると同時に、側転しながら隣にいたオークの顎を蹴り飛ばして、がら空きになった顎から脳を突き刺して殺した。

そのまま最初にナイフを投げて目を刺されたオークを見つけた私は、その後頭部に黒いダガーを投擲して首に刺し、そこに飛びつくようにして深く刺してトドメを刺すと、その頭を踏み臺にしてさらに飛び上がり、首を刺されて怯えた目を向けるオークの頭頂部にダガーを元まで突き刺す。

――四十五目。

『グガアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ！！』

地響きを立て、レベル５の威圧を撒き散らしながらジェネラルが戻ってくると、その聲に混から抜けた一のオークが石斧を振り上げて襲ってきた。

距離は違うがタイミングがほぼ同時だとじて、私は隠を使いながら闇魔法を唱える。

「――【幻影(シヤドー)】――」

【幻影(シヤドー)】は相手の目を誤魔化すのではなく、暗視を騙す闇魔法だ。ジェネラルの攻撃を跳び避けると同時に後退させた“幻影(シヤドー)”を追って飛び出したオークは、ジェネラルが振り下ろした六角棒に頭を打ち砕かれた。

――四十六目。

『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ！！！』

次々と配下を殺され、ジェネラルが怒りのびを上げた。だけど私は、その時すでに障害のある集落の家屋集地帯へと走りだしている。

オークの集団は単獨で戦ったり足止めをするような相手ではない。どんな狀況であろうと冒険者ギルドが招集をかけるか、領主の軍を待つのが正解だ。

でも単獨なら単獨の戦い方がある。捕捉されれば確実に嬲り殺しにされる恐怖を無視できるのなら、私のような隠系なら単獨ならではのやり方があるのだ。

その一つが最初から始めていた飲料に毒を流すこと。そしてもう一つがこのゲリラ戦になる。

廃屋の集地帯にると同時に自分の魔素を大気に合わせて隠を使い、私は暗闇の中に溶け込んだ。開けた場所ならともかく、視線が遮られる場所ではオークジェネラルと言えども簡単には私を見つけられないはず。

次の瞬間、隣家から轟音が聞こえて、窓から見える隣家の壁が橫に吹き飛んでいく。おそらく私の気配を追えなくなったことでジェネラルが廃屋を破壊してるのだろう。

もう一度“幻影(シヤドー)”を出して廃屋の屋を走らせ、それを追ってき出したジェネラルの背後からナイフを投擲する。

わずかな風斬り音を捉えたジェネラルが振り向きざまに六角棒で弾くと、その影を飛ばしていたもう一本のナイフがジェネラルの肩に突き刺さる。

衰弱してステータスが下がっているせいか、ナイフでも刺さることは確認できた。

『ガァアアアアアアアアアアアアアアアッ！！！』

私が隠れていた廃屋の壁をジェネラルの六角棒が砕する。

その寸前に窓の外に飛び込むように回避した私は、地面で前けをして立ち上がると、そのまま向かい側の窓へと飛び込んだ。

ドォゴンッ！！！

次の瞬間、先ほどまで居た廃屋が六角棒に砕され、道に出てきたジェネラルは私を見失って、當たり散らすように周囲の家屋を破壊する。

やはり戦闘力は下がっていても技量や覚は別か。毒でなくても、微量でも薬品を使えば、匂いですぐに位置を特定されるだろう。

私は暴れるジェネラルから離れて、単獨で私を捜していたオークの背後に忍び寄り、首を真橫に貫いて暗殺する。

四十七目……

この狀態なら無理にジェネラルを攻撃せずに他のオークを始末したほうがいい。

このまましずつオークを始末して、わずかでもジェネラルにダメージを與え続ければしでも勝機が見えてくる、と今は信じるしかない。

（っ！）

その瞬間、私は殺気と魔力をじて廃屋の窓から飛び出した。

ドォオンッ！！！

巨大な魔力の塊が伏せた頭上を通り過ぎて、私自も風に吹かれた木の葉のように吹き飛ばされる。

「……くっ」

何が起きた……？　衝撃が通り過ぎ、暗視で見えるノイズのような土埃が晴れると、十軒ほどもあった廃屋が基礎を殘してほとんどが吹き飛ばされ、まるで更地のように変わっていた。

……多分、私も知らない棒レベル５の【戦技】だと思われる。レベル４までの知っている戦技は、通常攻撃を數倍に高めるだけの威力しかなかったはずだが、レベル５になるとここまで変わるのか……

『ブモォオオオオオオオオオオオオッ！！！』

土臺のみが殘された場所で膝を付く私を、殘り五のオークが警戒するように間合いを取りながら、逃がさないように取り囲んだ。

そんな私に六角棒を肩に擔いだジェネラルが悠然と近づいてくる。

これがランク５か……。グレイブ戦では逃げ回ることしか出來なかったが、衰弱してさえ、まだこれほどの差があるとは思わなかった。

『ガァアアアアアア！！』

強者の余裕か、仲間を殺された恨みを晴らそうとしているのか、ジェネラルが配下のオークたちに攻撃の指示を出した。

『ブモォオオオオオオオオオオオオッ！！』

『ブォオオオオオオオオオッ！！』

オークたちが一斉に襲いかかってくる。毒の恐怖も彼らの支配者であるジェネラルが間近に居ればほとんど意味をなさない。

突き出される錆びた穂先を黒いダガーで逸らし、背後から襲ってくる石斧を前転するように回避する。

「っ！？」

投擲ナイフを抜いた私に金屬の塊が飛來して、ギリギリ避けた地面にめり込むように突き刺さり、その隙に背後から迫っていたオークの棒が私を弾き飛ばした。

「ぐっ！」

とっさに左手の手甲でガード出來たが力が１割ほども減っていた。

飛んできたは……ジェネラルが著けていた金屬の腕か。どうやらジェネラルは、私に攻撃をさせないつもりらしい。

闇魔法を使うか？　でも、五を騙す幻を観察されている狀態で使って、本當に騙すことが出來るの？

たとえ“幻影(シヤドー)”を數出せても、れ替われない狀態では攻撃を全て躱しきれるか分からないだけでなく、ない魔力を無駄に消費することになる。

再び襲ってくるオークたち。振り下ろされる棒を躱してダガーを向けると、その瞬間にジェネラルの腕が飛んでくる。

「っ！」

集中力が分散され、どちらも半端な避け方をしたせいで腕が脇腹を掠めて、背後から繰り出された槍が私の肩を掠めた。

「――【幻影(シヤドー)…」

無駄になるとしても使うしかない。だが、魔法を使おうとした瞬間にジェネラルから腕が飛んでくると、それを躱した先で別のオークに蹴られて魔法の構が霧散する。

さらに襲ってくる錆びた槍に地面を転がり、私は貓のように地を這って避け続けるしか出來なかった。

オークたちが殘酷な笑みを浮かべながらまた私を取り囲む。すでに攻撃どころか、立ち上がることさえ許されていない。

……そういえば、ヴィーロと最初に會った時も追い詰められて、四つん這いで大地を爪で摑んでいた。それは何のためだっけ……？

そうか……

「……二足に拘る必要もないか」

『ブモォオオオオオオオオオオオオッ！』

私が聲を出したことで、警戒した一のオークが槍で突いてくる。

でも、無理に立ち上がることはもう止めだ。

伏せた狀態から片足で地面を蹴って、腰の重みで位置を変え、片手を中心に地面をるように回転して槍の穂先を躱した私は、貓が爪で裂くようにペンデュラムの糸をオークの足に巻き付けた。

『ボオオオオオオオッ！！』

私が見せた異様なきに、一瞬きを止めたオークの槍が繰り出され、ジェネラルから腕が飛んでくる。だけどもう遅い。

「――【重過(ウエイト)】――」

わずかな一瞬の隙に魔法を使い、糸を足に巻かれて混したオークが足を引く、その勢いで飛び上がるように起き上がった私は、そのまま糸を巻かれたオークの眉間に黒いダガーを突き立てた。

――四十八目。

以前戦った盜賊はを使って意表を突く回避と攻撃をしてきた。破壊力の乏しい斥候職では、敵を混させることは重要な意味を持つ。

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアッ！！』

を乗り出したジェネラルが私に腕を投げ放つ。それと同時繰り出されたオークの棒も伏せるように回避する。

その勢のまま、蹴り足と腰の重みで回転するように位置を変えると、加重方向を変えた【重過(ウエイト)】の効果でるようにオークの腳の間を潛り抜け、その腳に糸を巻き付けながらブーツに仕込んだ刃でオークの間を蹴り上げた。

『ガァアアアアアアアアアアアッ！！』

ついにジェネラルが六角棒を持って飛び出してきた。

鋭い六角棒の攻撃に後ろに倒れるようにして糸を強く引くと、蹴られたオークがよろめいて六角棒に頭を貫かれた。

――四十九目。

地に匍う私を踏み潰そうとするジェネラルの足を、私は二のオークに絡ませたままの糸を引いてるように躱す。

【重過(ウエイト)】の効果と張り詰めた糸を使って全の筋を弓のように引き絞り、一本の矢の如く高速で解き放たれた私のはジェネラルの視力を超えて、そのままジェネラルの顔面を斬り裂いた。

次回、オーク編決著。

顔とプライドを傷つけられたジェネラルの猛攻がアリアを襲う。