《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》『虹の妖亭』

「お疲れ様でした。報酬の銀貨十枚になります」

「ありがとうございます」

お禮を言いながら銀貨をけ取り袋へとしまう。

何気にこれまで冒険者をしてきて最大の収だったりするので嬉しい。

だけどそれを表に出すと笑われそうなので平靜を取り繕った。

「あの、何か?」

気が付けば付嬢と目が合った。渡し終えた後も俺のことを見ていたようだ。

「いえ、本當にコボルトを倒してきたんだなと思いまして……」

萬年ゴブリン狩り専門の俺がコボルトまで倒したことに驚いていただけらしい。

「最近ちょっとコツを摑んだみたいなんですよ」

スキルを得ることができたので噓は言っていない。稼ぎの差を考えるならこれからはコボルト討伐依頼をメインにしても良いかもしれない。

そんなことを考えていると付嬢が話を続けてきた。

「そうだ、こちらをお渡ししておきますね」

「なんですかこれは?」

に輝くプレートが付いた鎖だった。

「冒険者はコボルトを討伐してようやく戦力として認められます。こちらはその証でして、ギルドと提攜している宿や酒場で見せると支払い時に値引きをけることができます」

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どうやら俺は今までギルドの戦力としても見られていなかったらしい。ゴブリンしか討伐していなかったので知らなかった……。

「ありがとうございます、それで提攜している店というのは?」

「ここをでて左手に行った數軒先の『虹の妖亭』ですね。店の際に初めてコボルトを討伐したことを伝えていただければサービスしてもらえるはずですよ」

それはとてもお得な報だ。今まではその日を生きるのに必死だったので安宿で出される食事しか食べられなかった。

銀貨十枚も手にったのだから多は使っても構わないか……。俺はし考えた末付嬢にお禮を言う。

「ありがとうございます。それじゃあせっかくなんで立ち寄ることにします」

「いらっしゃいませーー!」

は活気にあふれていた。

ぼちぼちも傾いてきていたので、依頼を終えた冒険者たちが店をにぎわせている。

酒がっているのか大聲でその日の冒険の反省會やら功話をしているのが聞こえてくる。

「お客さんは初めてですよね?」

店員さんが現れ、俺の顔を見てきた。

「わかるんですか?」

「ここは新人を卒業した冒険者しかこられませんからね、見たことない顔がくればわかりますから」

そう言われて付嬢からけ取ったプレートのことを思い出す。

「実は今日初めてコボルトを討伐したんです」

「おっ! おめでとうございますっ! それじゃあ、特別席に案するので當店自慢の料理と酒を楽しんでください」

俺は店員さんに祝福されるとそのまま階段を上がって二階へと連れていかれた。

「二階の席は本來はゴールド以上のプレートを持っていないとれないんですけど、初めてコボルトを討伐した冒険者はここに通すことになっています」

二階は下と違って落ち著いた雰囲気で酒を楽しむ冒険者がいる。店員さんの話だと彼らはゴールドプレートを持つ、つまり高ランク冒険者ということになる。

「それじゃあ、早速スペシャルコースを持ってきますので座ってお待ちくださいね」

待っている間、俺は落ち著かない。同じ階には明らかに自分より上位ランクの冒険者がいるのだ。

萬が一目を合わせて不興を買ったらどうなるか……。

しばらくの間、下で飲んでいる人たちを見ていると恰幅の良いが料理を運んできた。

「はいよっ! 當店自慢の料理盛り合わせとエールだ。おかわりが必要なら聲をかけておくんな」

四人掛けのテーブルにこれでもかというほど並べられた料理と並々に注がれたエール。

「こんなにたくさん……いいんですか?」

思わず聞き返してしまう。

「この街で育った冒険者たちはうちの子も當然だからね。今日だけは無料で振る舞うけど次からは有料だから。早く強くなってこうして食べられるようになりなさいってことだよ」

そう言って笑ってみせる。

確かにこんな贅沢を覚えてしまえばまた味わいたくなるに違いない。

「ありがとうございます。またこられるように頑張ります!」

俺はそう言うと料理へと取り掛かるのだった。

味いっ! こっちも味いっ! これも最高だっ!」

手に付ける料理のどれをとっても今まで食べたことがない味しさだった。

揚げは嚙みしめるたびが口いっぱいに広がるし、串焼きも塩が利いていて病みつきになる。程よく茹でた枝豆はほくほくしている。

それらを食べたあとに飲むエールのほろ苦さが口に殘った余計な脂を洗い流してくれる。

酒を呑むのは十五歳で人となり冒険者になる前の一度だけ。その時とは比べものにならないくらいごしが良く、下で楽しそうに騒いでいる人たちの気分が理解できた。

料理を堪能し、エールを數杯呑んで初めて験する酔いを楽しんでいると……。

「ティムじゃねえか、どうしてお前がここにいる?」

振り返ると、ウォルターとレッドとマロン……そしてグロリアがいた。

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