《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》専屬サポート

「それにしても……一年本當によく頑張ったな」

唐突に聞こえてきた労いの言葉に思わずギルドマスターの顔を見る。

「昨日までの果はお前が冒険者を諦めず努力した果なのだろう?」

さきほどまでとは違い、威圧がなりひそめている。俺がどう答えるべきか考えていると、ギルドマスターは話を続けた。

「ときおり、お前のような奴が現れるんだ。皆と同じタイミングでスキルが発現せず、ふとした拍子にスキルを得てあっという間に同世代のトップへと駆け上がる大の冒険者がな」

話を聞いてみると、これまでも同様の現象が起きたことがあるらしい。

それらの多くはAランク冒険者やSランク冒険者に上り詰めたり……、あるいはそれ以上の功を収めたとか。

「それがわかっているのなら、スキルが発現しない人間にももっと支援をしてくれても良かったのではないですか?」

実際、スキルが発現するまでの生活はギリギリだった。

もショートソードを修理して使っていたし、その日泊まる宿にも困っていたのだ。

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「そうしてやりてぇのは山々だが、大半は本當にスキルを取得すらできねえからな。全ての冒険者に支援をとなるとギルドの財布がすっからかんになってしまう」

気持ちの上では納得がいかないが言っていることは正しい。

「とにかく、ギルドとしてはこうして上がってきたお前に期待をしているってことだ。人格にも問題がないのは今しがた確認したからな」

「人格……ですか?」

「過去に後からスキルを取得してり上がったやつの話はしただろ? 中にはこれまで押さえつけられてきた反で傲慢な振る舞いをするようになった奴もいる。急に扱えるようになった力に振り回されて自滅した奴もだ」

ギルドマスターはそういった人が辿った末路を俺に聞かせてくれた。

「スキルが発現したばかりのお前は今がまさに長期だ。自分の力量を見誤って死んだりしないように気を付けろよ?」

「……肝に銘じておきます」

「今回の件で冒険者の間でお前のことが噂になっている。高ランクのクランあたりから聲が掛ってもおかしくねえと俺は思っているんだが……」

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「俺は今のところクランに所屬するつもりはありません」

これまで手を差しべてこなかった人間が掌を返す點についてはまだ割り切ることができない。

きっぱりと答えた俺をギルドマスターはじっと見つめる。

「何か困ったことがあったら相談しな。強引な勧とか俺が対処できる範囲でなら力になってやる」

それ以上は説得できないと思ったのか、ギルドマスターはそう口添えをしてきた。

「あっ、ティムさん。お疲れ様です」

ギルドマスターからようやく解放されたかと思うと、出てきた俺に付嬢が

聲を掛けてきた。

「えっと、どうしたんですか?」

何故待っていたのか俺が理由を聞いてみると彼は答えた。

「今回の件でティムさんは私が専屬で見ることになりました。改めて挨拶をさせていただけたらと」

その言葉に驚く。高ランク冒険者になるとギルド職員が専屬になると聞いたことがある。

だが、最低でもBランク以上からのはず。

「えっと……」

「私のことはサロメとお呼びください」

「サロメさん? 専屬になるとどういう違いがあるんですか?」

ひとまず話を聞くことにする。すると彼はよくぞ聞いてくれましたとばかりに答えてくれた。

「まず専屬となったことで、これまでよりも手厚いサポートをすることができます。例えば依頼についてですが、低ランク冒険者であれば掲示板の中から自分に合った依頼をけてこなしているかと思います。専屬の場合、あらかじめける條件をおっしゃっていただければ私の方でギルドにくる依頼を抜いておきティムさんに提案することができます」

掲示板にり出す前に依頼をけるかどうか確認してくれるらしい。毎朝人がごった返す掲示板で依頼の奪い合いをしないで済むのは確かに大きなメリットだ。

「他にも魔石や素材の買い取りに関してもこれまでより1割上乗せされますし、預けていただければこちらで査定しておいて後日支払いますので、この場で待つ必要がありません」

これまで待ち時間はステータス畫面を見て過ごしていたがそれも不要になるらしい。

「そんなに優遇されるんですか……」

あまりの高待遇に俺が驚いていると、サロメさんはふふふと笑った。

「まだまだそれだけではありません。ポーションなどの消耗品もおっしゃっていただければこちらで手配をしておいて、冒険者ギルドを訪れた時にお渡しします。支払いに関しては口座を作っていただければそちらから引き落とす形になりますね」

「それはとても助かりますね」

消耗品各種を買いまわるには錬金の店から雑貨店まで々足を運ばなければならない。

普段はその日の依頼を終えた後に回ってその辺を補充しているのだが、それをやらなくてよいというのは使える時間が増えるということだ。

そうなるとこれまで以上にダンジョンでの狩りに時間を使うことができるようになる。

「あとは健康面の管理とアドバイスですね……。ティムさん今日これから時間はありますか?」

は俺のを見回すとそう言ってきた。

「それでは早速アドバイスをさせていただきますね」

目の前にはサロメさんが立っていてその周りには高そうな防が並んでいる。

ここは先日マジックダガーを買いに來た武を取り扱っている店の、試著室前だ。

「ティムさんが現在使えるスキルというのは、剣関連に魔法関連だと報がっています。間違いありませんか?」

「ええ、それで合ってますけど……」

め事の証言を集めている時に聞いたのだろう。今の時點ではその通りなので肯定しておく。

「剣と魔法を同時に扱うスタイルは過去に幾つか聞いたことがあります。武も防も魔力の通りが良いものが使いやすいらしいですよ」

「そうなんですか?」

「ええ、鉄のプレートメイルとかだと重い上、魔力の通りが悪くて魔法の威力が落ちるんです」

は指をピッと立てると俺に教えてくれる。

「なので、防はこのミスリル製が良いかと思います」

照明を浴びて輝く白銀の防當てに篭手と急所を護るようにできているが、つなぎの部分は皮らしくきを阻害しなそうだ。

「早速に著けてもらえますか?」

俺は試著室にると著替える。このような高級品を手に取ることがなかったのでわくわくして顔がほころんだ。

「どうですかね?」

著替えを終えて試著室のカーテンを開ける。

これまでに著けていたレザーアーマーに比べて隨分と軽い。

「よくお似合いですよ、サイズは問題ありませんか?」

そう言われて鎧の関節部分をってみる。きが阻害されることはなく、だぼつくようなこともない。

「特に問題ないですね」

「なるほど、ではそちらはいでいただき次はこちらのタイプのミスリル鎧をお願いします」

「えっ?」

問題ないと答えたのでこれで終わると思っていたが、サロメさんはそう告げる。

「デザインとかを守る範囲の広さにも違いがありますから。最適な防を選ぶには全部試著していただかないと」

いつの間にか、試著室の前には両手で數えきれないほどの鎧が運び込まれていた。

「防が終わったら武もですね。お任せください。ティムさんにピッタリな最高品質の武を用意させますから」

のやる気に満ちた顔を見ると俺は何も言えなくなるのだった。

「ふぅ、これでひとまずティムさんの裝備は完璧ですね」

右腕そでで額の汗を拭って満足そうに笑う。

「…………ありがとうございます」

俺はサロメさんにお禮を言う。

あれから武に関して『杖との持ち替えが面倒ですよね』とアドバイスをされた。

結果としてマジックダガーを店で買った時と同じ値段で下取り渉してもらい、杖と剣両方の役割をこなせるショートソードを別に用意してもらった。

「それにしても隨分と見違えて……隨分格好よくなりましたよ?」

剣に鎧とマントまで。裝備だけなら冒険者ギルドにいる高ランクにも負けていない。

サロメさんは満足そうに頷いていた。

『お支払いは金貨250枚になります』

「はっ? えっ? ちょっと?」

あまりにも飛びぬけた金額を聞かされ焦る。

「そんな金ないですよ!?」

金屬の鎧にダンジョンドロップのショートソードなので高くなるとは思っていたが、まさかそこまでするとは思っていなかった。

「一応ギルドマスターからは金貨500枚までの貸し付けはOKだと言われています」

「ごひゃ……」

あまりの金額に言葉を失う。

「いや、そんな高額な裝備じゃなくてもこれまでやってこれたし……」

選んでもらって申し訳ないが斷りの言葉を口にしようとすると、

「ギルドマスターからはティムさんが死なないように萬全の裝備を選ぶように言われています。この意味がわかりますか?」

サロメさんは真剣な表で俺を見てきた。

「冒険者ギルドはそれだけ今のあなたに期待をしているということです」

金貨500枚を貸し付けるあたりから本気なのが伝わってくる。

「もちろん、ティムさん次第ですがこれまで持ち帰った買い取り品から考えても決して無理な金額ではないかと思います」

サロメさんは月々の支払金額に関して丁寧に説明をしてくれる。確かに話を聞く限り問題なく支払えそうな上、もし怪我などで長期間収がなくなった場合でも相談してもらえれば対応できるらしい。

金を貯めて將來はこのくらいの武を買っていたと考えると、先に裝備を手にれられるこの提案は決して悪いものではない。

効率的に安全に狩りをするなら裝備の質はどうしたって無視できないからだ。

「いかがなさいますか?」

そう問いかけるサロメさんに俺は……。

「よろしくお願いします」

頭を下げて頼むのだった。

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