《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》グロリアの想い

「やっと到著した。もう疲れたわよ」

マロンはそう言うとぐったりとした顔を見せた。

「これからが本番だ、俺たちは依頼人に話を聞きに行ってくる」

ウォルターはそう言うとグロリアを連れて歩き去る。

依頼をけてから一週間が経過した。

俺たちはレッサードラゴン討伐を依頼した街に到著していた。

「さて、私たちは先に飲みにでも行きましょうか?」

現金なもので、復活したマロンがそう提案をしてくるのだが……。

「悪いけど疲れてるんだ、先に宿で休ませてもらえないか?」

「ええっ! 明日からレッサードラゴン退治になるんだから今日しか羽目を外せないわよ?」

「すまないな……」

俺はそう言うとレッドを見る。

なぜ俺がこれほど疲れているのかというと、ここに來るまで大量のモンスターと戦わされたからだ。

あの日、俺のきが悪いと見るや否や、レッドとウォルターは俺にモンスターを流すようになったのだ。

街に著くまでの間、基本的に遭遇したのはオークとリザードマンの編がほとんどだったのだが、俺の『見習い冒険者』はレベルを上げてもステータスがあまりびない。

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その上、職業補正もけられず、あらかじめ『筋力』と『敏捷度』を300まで上げていたからそれほど落差はなかったが、一時的に戦闘力を落としてしまっていた。

魔法を織りぜることでどうにか互角以上に戦えるようになったのだが、執拗な押し付けにあったせいで、ウォルターとレッドにも注意しなければならず消耗が著しかった。

「なら俺と二人っきりで飲むか!」

鼻息を荒くして、レッドがマロンをっている。一緒に冒険していてわかったのだが、レッドはマロンに好意を抱いているようだ。

「ん-、そう言えば私も疲れてるからやっぱり汚れを落として休むことにするわ」

マロンはそう言うと、ささっと立ち去っていった。

「てめぇ、何見てんだよ?」

マロンが立ち去ると俺を睨みつけてくる。完全な逆恨みなので俺はレッドを無視すると自分の部屋へと移した。

「それにしても何なんだ?」

あの日以來、明らかにレッドとウォルターの當たりが強くなった。

モンスターを押し付けるのもそうだし、俺がマロンやグロリアと話をしていると憎悪の視線を向けてくるのだ。

「だけど、お蔭でここまで到達できたぞ」

俺がマロンのいを斷った理由は他にある。

「見習い冒険者がレベル31まであがった。苦労したわりに何もなかったらどうしようかと思ったが……」

ステータス畫面には新たなスキルが出現していた。

「それでは、レッサードラゴン討伐の依頼頼みましたぞ」

「ああ、任せておけ。これまでにも討伐経験があるから問題ねえ」

「私たちが來たからには安心してください」

ウォルターとグロリアは町長にそう言うと家をでた。

現在、二人はこの街の町長に依頼の容を再度確認したばかりだった。

「ったく、やっぱり過小申告してやがったか……」

それと言うのも、冒険者ギルドへの依頼料は難易度によって決定する。

モンスターの數がなければ難易度は低く、多ければ高い。

危険度が高い方が當然ながら依頼料も跳ね上がるのだが、レッサードラゴンに家畜や穀を荒らされ、蓄えがない街ではとにかく冒険者に來てもらいたい。

そんなわけで、実際の依頼容との齟齬がないか事前に確認するのは生き殘る上で必須となっていた。

「どうしますか? 一度に倒しきるにはきつい數だと思いますけど……」

グロリアは口元に手をやると自分たちの戦力を加味して戦略を考える。

そんなグロリアの橫顔をしばらくじっと見ていたウォルターは、

「おまえ、この前の言葉本気なのか?」

グロリアは肩髪を揺らすとウォルターへと顔を向ける。

「ええ、この依頼が終わって冒険者ギルドに戻ったら。私はこのパーティーを抜けてティム君にパーティーを組んでくれるように申し込むつもりです」

あの日、ティムから言われた言葉がグロリアのにずっと突き刺さっていた。自分だけがティムを信じておらず、守だと認識していた。

事実、これまでの旅路でティムは戦力の一人として立派に戦っていた。

そんなティムに対し、ウォルターもレッドもモンスターを任せていたし、マロンも連攜をとっていたのだ。

元々、グロリアにとってティムは研修期間から気になる存在だった。

これまでのパーティーから離れるのには抵抗がないわけではない。だが、結局のところ自分がティムの傍にいたいという気持ちに気付いてしまったからには我慢ができない。

しばらくの間じっとグロリアを見ていたウォルターは聲を掛ける。

「上手くいくといいな」

「ええ、ティム君にれてもらえるように頑張ります」

頬を赤らめてそう答えるグロリア。

ウォルターが暗い笑みを浮かべていることには気付かなかった。

「いいか、確認されたレッサードラゴンの數は全部で8、依頼容の通りならこの時間に家畜を襲いに現れる」

暗闇の中、ウォルターの聲が聞こえる。

現在、俺とレッドとウォルターは町はずれにある牧場にを潛めながら打ち合わせを行なっている最中だ。

確認されているレッサードラゴンの數は依頼書に記載されていた通りらしいので、事前の取り決めでは俺とウォルターが3ずつ。レッドが2引きけることになっていた。

勝負の方法は、より早くノルマを達した方もしくは多くのレッサードラゴンを倒した方の勝利と話し合って決めている。

牧場には囮となる家畜が放たれていてのんきな鳴き聲を上げている。

街の人間に確認したところ、レッサードラゴンの群れは徐々に移しているらしく、囮による導もあってか間違いなくこちらに現れるとのこと。

「いっとくが勝負だからよぉ。あとから文句は聞かねえからな?」

珍しくウォルターが笑っている。

暗闇の中なので表までは窺えないが、聲からして機嫌が良さそうなのは間違いない。

「この依頼が終わったら互いに文句はなしだからな、まあ頑張ろうぜ」

レッドもそう言うと肩を叩く。俺は二人の態度の急変に戸いを覚えるのだが、今はレッサードラゴンを相手にしなければいけないので意識の片隅へと追いやる。

「おっ、どうやらきたようだぞ」

影がくのが見え、しばらくすると家畜の鳴き聲が響き靜寂が押し寄せる。

俺たちは武を抜くと、暗闇に紛れ音を殺しながらレッサードラゴンへと接近するのだった。

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