《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》決別

「エート……」

俺は言葉に詰まるとマロンを見た。

は首を橫に振っている。どうやらこの提案はグロリアの獨斷のようだ。

「本気で言っているのか?」

「勿論です。元々私は今回の件がなくてもパーティーを抜けてティム君にこの話を持ち掛けるつもりでしたから」

グロリアは真剣な瞳で俺を見つめてくる。どうやら酔った勢いで冗談を言っているわけではなさそうだ。

「本當よ、道中でグロリアは抜ける話をしていたわ」

マロンの補足に俺は思い當たる節がある。

ある日を境にウォルターとレッドの當たりがきつくなり、グロリアが再び話し掛けてくるようになった。恐らくグロリアがウォルターに退を申し出た後なのだろう。

そう考えると、あの二人の行にも納得がいく。

単に勝負に勝つためではなく、グロリアが抜ける原因を作った俺に怒りを覚えていたということなのだろう。

「どうしてお前たちは俺とパーティーを組みたいんだ?」

俺は問いかける、さきほどから俺とパーティーを組みたがる人間は俺の力を求めて聲を掛けてきた。彼たちが俺を求める理由が知りたかった。

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「私は、教育期間からずっとティム君と組みたいと思っていました。努力家で誠実で……周囲の皆を気遣ってくれた優しいあなたと一緒に冒険したいとずっと思っていたんです」

グロリアが言葉にしたのは真実だろう。彼は俺が周囲に馬鹿にされている時もただ一人話し掛けてくれていた。

それこそウォルターやレッドだけではない、他の同期や先輩冒険者までもが「あいつは無価値だから付き合うのを止めろ」と忠告していたのだが、それらを無視して話し掛け続けてくれた。

完全に一人ではなく誰かが見ていてくれる。それを支えに頑張ってこれた事実は否定のしようもない。

「ありがとう、グロリアからそう言ってもらえて嬉しいよ」

「そんな、私こそ……ティム君と一緒に冒険できて嬉しいです」

まるでする乙のような恍惚とした表を向けてくる。酒で酔っているのか、ほんのりと朱に染まった頬が気を放ち、こんな時だというのに一瞬心臓が高鳴った。

「マロン、お前は?」

グロリアの本心はわかった、俺はマロンの方を見る。

「グロリアが勝手に私まで巻き込んだわけだけど、本心を言えば組みたいとは思うわよ? でも、これまでないがしろにしておきながら、実はあんたが優れているからってすり寄るのは図々しすぎると思っている」

はそう言うと周囲に鋭い視線を向けた。俺は思わず頬を緩める。彼のこういうさっぱりとした部分は嫌いではない。

マロンの今の言葉は本人だけではなく周囲に向けての言葉だったからだ。

周囲が注目する中、俺はグロリアを見つめる。

「グロリアが俺とパーティーを組みたいというのはわかった」

が見つめてくる中、俺は頷いて見せる。

「じゃ、じゃあ……」

期待に満ちた目を俺に向けてきた。

「だけど俺が君とパーティーを組むことはない」

「えっ?」

次の瞬間、彼は何を言われたのか理解できないのか呆然とする。

「マロンが言った通りだ。俺が実力を示したからと聲を掛けてこられても困る。俺にとっては冒険者になることは憧れだった。駆け出しのころから共に苦難を乗り越えて信頼し合って大きな依頼をけてり上がる。そんな夢をずっと見てきた」

冒険者を志す誰もが一度は見る夢だ。

「だ、だったら私と……私たちとそれをすればいいじゃないですかっ!」

グロリアはそう言って食い下がってきた。俺は首を橫に振る。

「もし本當に俺とパーティーを組みたいと思っていたのなら、俺のスキルがないころから組んでいたはずだ」

「そ……それは……」

俺の正論にグロリアは勢いを失うと顔を伏せる。

「グロリアの支援魔法と治癒魔法があれば、俺はもっと早くにスキルを発現させることができた」

本來ならもう遠回しに言うべきなのかもしれない、だが現在ここには他の冒険者たちもいる。彼らにも聞いてもらわなければならないので厳しく言うしかなかった。

「そ、そんなのわからないじゃないですか! スキルの発現は神様の気まぐれ、私と組んだからと言って早く使えるようになるなんて――」

「俺には確信がある」

俺だけに見えるステータス畫面が、これまで不明だったスキルの発現條件を明らかにしていた。

『レベル』という概念や『職業』『練度』などの存在。『スキルポイント』や『ステータスポイント』といった自分の能力を底上げできるポイントもだ。

これまでステータス作をしてきておぼろげながらその辺がわかるようになってきた。

「俺が苦しかった時に手を貸さなかった人間と組むつもりはない。ウォルターたちの例もある。利用して裏切る可能も否定できないからだ」

パーティーを組む以上、俺の能力をある程度見せることになるだろう。

『アイテムボックス』の存在や『アイテムドロップ率増加』など、一緒にダンジョンにれば嫌でも気付かれてしまう。

今まで俺を蔑んでいた連中がそうなった時にどんな対応をとるのかわからない。

周囲を見渡すと全員が気まずそうに目を逸らす。當然だ、彼らは過去に俺に向かって「冒険者を辭めろ」「ゴブリン狩り専門の雑魚」「ウロチョロと目障りだ」と吐きかけている。

言った當人は忘れているのかあえて無視しているのかわからないが、俺は覚えている。

マロンを見ると首を橫に振る。どうやら一人を除いて俺とパーティーを組むのを諦めたようだ。

「そ、それでも私は……」

拳を震わせて目に涙をためたグロリアは聲を荒らげる。そんな彼を見ていると俺も気まずい。

「あの日……君がウォルターたちとパーティーを組んで、俺が獨りになった時からこうなると決まっていた。俺たちは過去をやり直すことはできない」

「っ!?」

俺がそう言うと、彼は口元を押さえて泣き崩れるのだった。

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