《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》サロメさんからの頼み事

「実は、ティムさんにお願いがあるんですよ」

ユーゴさんたちと飲みに行った翌日、その日の冒険を終えて冒険者ギルドを訪れた俺にサロメさんは両手を合わせるとそう言った。

「はぁ……お願いですか?」

珍しい態度に困する。仕事で付き合ってまだ二カ月程だが、彼が要を口にするときは常に「できれば」という一歩引いた狀態だった。

今回の場合、俺が狩ってきたモンスターのドロップアイテムを買い取る前に頼んできたことから、よほど余裕がないことが窺がえる。

「とりあえず話してみてください」

には散々世話になっているので、話を聞く前から拒否するのは良くない。容を聞いてみて無理そうなら斷ればよいと考えた。

「実は私が付き合いのある貴族の子が今年冒険者ギルドに登録してるんですけど……」

「……なるほど」

貴族の家系では三男以降が冒険者になるのはよくある話。

長男は家を継ぐし、次男は何かあった時のための控えとして家にいて、長男が家を継ぐと騎士や兵士になることが多い。

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三男以降はそういった可能も低いので冒険者の道へ進む者も多いのだ。

「登録して半年が経つんですけどその子はあまり役に立てなくて、つい先日とうとうパーティーから追放されてしまったんです」

まるでどこかで聞いた話だと考え、自分のことだと気付く。

もっとも、俺の場合はパーティーを組んで一ヶ月もしないうちに追放されたので、半年もったというのなら隨分とましな方だろう。

「それはもうパーティーを追放された時點で話が済んでるんじゃないですか?」

半年もあれば長度合いに大きな差がでる。

思ったより長できずに周囲から置いて行かれるのは何も特別な話ではないのだ。

冒険者になる以上覚悟はするべきだし、下手に危険な依頼に首を突っ込んで死ぬ前にを引くのも選択肢の一つだ。

冒険者を諦めて別な商売を始めるのも自己責任なのだ。

「ところがその子、まだ諦めていなくて……。今度はソロで冒険者を始めようとしているんですよ」

負けん気の強い奴らしい。俺に似た行を取ろうとしている辺りに共を覚える。

心の中でそいつを応援していると、サロメさんは両手を俺の右手に添えてきた。

「そこでティムさんにお願いなんですけど、ちょっとの間その子の面倒を見ていただけないでしょうか?」

「俺が?」

予想外の提案に驚く。

「ほら、ティムさん宣言しちゃったじゃないですか『同期とも上の世代とも組まない』って」

「確かに言いましたけど……」

「今回の件はチャンスだと思うんですよ。皆から見捨てられている子と組むことで、以前ティムさんが主張した言葉に真実味を持たせられると思うんですよね」

サロメさんの提案についてし考えてみた。

「なるほど、確かにその通りですね」

俺はグロリアからパーティーを組もうとわれた時に『助けが必要だった時に手を差しべなかった連中とは組まない』と宣言している。

今回、その貴族の息子の面倒を見れば口だけではなかったと言うことになる。

俺がこの先冒険者をやっていくために、サロメさんなりに々考えてくれてた末の提案なのだろう。

「わかりました、引きけます」

「ほ、本當ですかっ! 本當に困っていたんですよ」

俺のよい返事を聞いてサロメさんはほっとでおろした。

「それで、俺はそいつが一人でもやっていけるようになるように指導すればいいんですか?」

俺とは違ってスキルを持っているみたいなのでそれほど難しくないだろう。

俺には今そいつが落ち込んでいるであろうことが理解できた。同じ立場にいた者として相談に乗ってやればいい。そう考えたのだが……。

「あっ、いえいえそんなことをしてもらわなくて結構です!」

ところが、サロメさんは両手をの前で振ると俺の言葉を否定してきた。

てっきり勵ましてしいのだとばかり思っていた俺は首を傾げると、

「今回、ティムさんにお願いしたいのは別なことなんですよ」

「と言うと?」

サロメさんは真の目的を告げた。

「一緒に冒険をしてあの子に冒険者を諦めさせてしいんですよ」

「はいっ!?」

サロメさんは真剣な表を浮かべるとじっと俺を見つめるのだった。

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