《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》ガーネット真の実力
「ふぅ、だいぶ集まってきました」
背負っていた袋を持ちながらガーネットはそう言った。
袋の中には既に十數個のハーブがっている。
街から歩き通しで森にり、そのずっとハーブを探して歩き回っている。
そろそろ森にって數時間が経つのだが、目が良いのか中々ハーブを発見するのが上手い。
この調子ならあと一時間もあれば必要數を採取して戻れると考えていると……。
「ゴブブブッ!」
野生のゴブリンが現れた。
「テ、ティムさん……」
先程まで黙々とハーブを摘んでいたガーネットが振り返り不安そうな顔で俺を見る。
俺はふと考えると……。
「アイスアロー使えるんだったよな? ちょっと使ってみてくれ」
せっかくの機會だ。彼の魔法を見ておくことにした。
「えっ……でも……」
おろおろとしている。
「いいからやるんだ」
俺が強く言うと、彼はハーブがったずだ袋を地面へとおろすと杖を構えた。
「さて、どれほどのものかな?」
ゴブリンとの距離は遠い。森の中ということもあって障害も多いので、よほど用さが高くなければ當てるのは無理だろう。
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俺が今回確認したかったのは魔法の威力についてだ。
ハーブの採取依頼ではこの通りモンスターと遭遇してしまう。
さきほど、彼はゴブリンが出た瞬間に振り返って俺を頼ろうとした。
サロメさんから面倒を見る約束をしたので當然守るつもりだが、守ってもらえる前提で冒険者をやっているのなら諦めさせた方が良い。
怖かろうが命を奪うのが嫌だろうが、ガーネットは自分の意志でモンスターを攻撃しなければならないのだ。
「い、いきますっ!」
魔法を発するまでの魔力の収束に意外と時間が掛かった。ゴブリンは迷うことなくガーネットを目指していたため、距離がんでいた。
「ああ、撃て!」
これなら流石に當てられるだろう。そう考えたのは俺だけではなかった、表がはっきり見えるようになったゴブリンもガーネットが魔法を用意していたことに気付き焦りを浮かべていた。
「『アイスアロー』」
杖をかかげるとガーネットの前に氷矢ができる。彼はそれをゴブリンめがけて放つと…………。
「えっ?」
「ゴブッ?」
「はぁはぁ……や、やりましたか?」
両手を膝に當て息を切らせたガーネットが聞いてくる。
「えーと……」
「ゴブブブ……」
俺とゴブリンは気まずそうに顔を見合わせるとそんなガーネットを見るのだが……。
彼が放った『アイスアロー』はゴブリンのに當たった瞬間に砕け散っていたのだ。
「あわあわわわ……どうしてですか。あれだけ全力を込めたのに無事だなんて……」
気を取り直して襲い掛かるゴブリンと力がらずに倒れるガーネット。
「た、助け……たすけて……」
ゴブリンに覆いかぶさられ、恐怖で聲が出なくなっているガーネット。
「ゴブッ!」
俺は剣を一閃してゴブリンの首を落とすのだった。
「も、申し訳ありません」
背中からガーネットの聲がする。
あれから、ガーネットはに力がらなくなってきが取れなくなってしまったのだ。
こうなるとハーブの採取どころではないので、今回の依頼は失敗となり、こうして俺は彼をおぶって街へと戻ってきた。
「いつもは2発くらい撃っても何とかけるんですけど、今日は調子が悪かったみたいで……」
魔法の中でもっとも簡単なアロー系で2発までというのなら大差はない。彼は本當に『アイスアロー』が使える”だけ”だった。
「まさか『ヒーリング』も2回で終わりとか言わないよな?」
「そ、そっちはちゃんとできますっ!」
「何回だ?」
言い返してきたガーネットに俺は質問する。
「……回です」
自信なさげに呟くせいか、至近距離にいるはずの俺にも聞き取れない。
「聞こえなかった。もう一度言ってくれ」
「…………ううう。5回って言ってるじゃないですか。意地悪」
泣き言が聞こえた。恐らくこのことは彼にとってのコンプレックスになっているのだろう。
戦力として數えられない魔法に、多用できない治癒魔法。
これまでどのような言葉を浴びせかけられてきたか想像がつく。
「ティム先輩も呆れましたよね? もう、指導する気も失せてしまったんじゃあ……?」
背中からガーネットのが離れていく。不安そうな聲が聞こえ、自的な笑いがれていた。
「そんなことはない。言っておくがガーネット、世の中にはもっともっと駄目な奴だっているからな?」
「そ、そうなのですか?」
ところが、俺が別な話を持ち出すと、ガーネットはを寄せて聞いてきた。
俺はここぞとばかりにその駄目な奴の失敗験を面白おかしく話してやると……。
「ぷっ、本當にそんなドジってあるんですか。あはは」
背中からガーネットの明るい笑い聲が聞こえてきた。この様子なら大丈夫そうだな。
「どうして、ティム先輩はここまでしてくださるんですか?」
正直なところ、俺はガーネットがまったく使えない奴だとは思っていないからだ。
ハーブ採取に対する丁寧なケアや、一言も音を上げずに黙々と依頼に取り組む姿勢。
俺がこれまで見てきた先輩や同期、冒険に慣れたころの後輩に比べれば付き合っていて気持ちよさすらじる。
「そんなのは決まっているだろ?」
俺は振り返ると今思っている気持ちを……、かつてんでいて、手にれることができなかったものを思い浮かべる。
「先輩は後輩の面倒を見るもんだからな」
そう笑って見せると再び歩き出した。
しばらくの間、無言でいたかと思うとガーネットはを俺に預けてきた。溫が高くなっていて心臓の音が背中越しに伝わってくる。
彼は俺の耳に顔を寄せると。
「……ありがとうございます」
そう囁いた。
お禮を言われた俺はそんな彼に対し、
「明日からまた頑張ろうな」
背中から回していた手に力がる。これが彼の返事のようだった。
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