《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》パーティーを追放された訳
「うーん、今日も混んでいるな」
冒険者ギルドに戻った俺は、サロメさんに初日の報告をしようと考えていたのだが……。
「またあの人か」
例のAランク冒険者のニコルさんがカウンターに座ってサロメさんと話をしている。
々と話しておきたいこともあったのだが、あれではいつになるかわからない。
「ティム先輩。半分功扱いにしてもらえました」
そう考えていると、ガーネットが戻ってきた。彼には依頼失敗の報告をしてくるように言っていたのだが、採取したハーブは必要數には足りなかったが、一応指定の半數以上あったため、冒険者ギルドにある在庫と合わせることで手心を加えてもらえたらしい。
「良かったな」
「はいっ!」
朝に怯えていた時とは態度が違う。どうやら一日一緒に行したことでしは気を許してくれたらしい。
「取り敢えず今日はここで解散だ。明日はまた別な依頼をけて外に出よう」
「今度こそ頑張ります」
俺がそう言うと、ガーネットは拳を握り気合をれるのだった。
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「ふぅ、やっぱり一日に一度はをかさないとな」
ガーネットと別れてから俺が向かったのはダンジョンだった。
基本的にダンジョンは街の中心に存在する。
それは元々ダンジョンがあったところに街ができたからだ。
ダンジョンは生活に必要な様々なアイテムを落とすので、自然と人が集まる。
生活に必要な魔導をかすための魔石であったり、ダンジョンドロップのポーションなどの消耗品。
鉄やミスリルなどの金屬から、嗜好品まで……。
そのせいもあってか、ダンジョンのアイテムを買うために商人が集まり、冒険者に裝備を売るために武屋や防屋が集まり。人が集まるので食堂や酒場などが集まるようになった。
俺は本日、ガーネットの付き添いをしただけで、まったくモンスターとも戦っていない。毎日それなりに疲れるまで戦っていたのにこれでは調子がくるってしまう。
そんなわけで、俺は晩飯を食う前に腹を空かせるため、ダンジョンを訪れていた。
「『ロックバースト』×2」
「「「「ギョヘエエエエエエ!」」」」
目の前のモンスターがまとめて吹き飛んでいく。職業は相変わらず戦士なのだが、元々上げている魔力が高いため、四層のモンスターならこうして反撃させることなく倒すことができるようになっていた。
「うん、結構一杯倒したな。それにしても腹減った……」
最近、やたらと腹が減るようになった気がする。その分食事を一杯食べられるのが嬉しかったりする。
酒場のメニューは富なのだが、一人だと食べられる量が決まっているので、普段食べている料理の他を注文する気がおきないからだ。
パーティーとかだとたくさん頼んでおいてシェアするようだが、多く食えないのがソロの欠點じゃないかと考えたりする。
それにしたって最近はよく食うので食費がかさむ。それなりに稼げるから良いが、今日のガーネットのような依頼では赤字になるだろう。
「ガーネットといえば……どうしたもんかねぇ」
魔道士としては絶的、僧としては何とかなるかもしれないが、治癒魔法の回數がないとなるとあまり危険な真似はできない。
「このまま諦めさせるべきなんだろうか?」
背負った時に彼が震えていたのがわかった。
あれはモンスターが怖かったのではなく、自分の力が足りていないことに対する悔しさだろう。
「……………………」
俺はしばらく考えると、
「まあ、本人次第か」
無慈悲に彼に通告をする前にできることについて考えるのだった。
「おはようございます。ティム先輩」
翌日。冒険者ギルドに顔を出したところ、ガーネットが既に來ていた。
懐中時計を見ると、待ち合わせの30分前。一いつから待っていたのだろう?
「おはよう、すっかり元気そうだな」
顔を覗いてみるが、昨日の失敗を引きずる様子はない。
俺が見ていることに気付いたのか、彼は顔を上げる。
「今日は『ミスティカの苔』の採取依頼をけてきました」
『ミスティカの苔』は解熱作用があるので薬の材料になるアイテムだ。水辺周辺の巖に付著しており、採取が面倒なのでハーブと共によく依頼が掲示板にられている。
「となると川まで行く必要があるな」
森の次は川ということで、俺はガーネットを連れて今日も街の外に出掛けるのだった。
「きゃっ、水が冷たいです」
ガーネットはローブをまくりあげて腰で縛ると素足で川へとっていく。
『ミスティカの苔』は巖に付著しているので、採取するにはこうしてを水に濡らす必要がある。
「苔が生えている巖はりやすい。間違って足をらせて転ばないようにな」
俺は彼の方を見ないようにしながら忠告をする。それと言うのもローブをたくし上げてしまうと見えてはいけない部分が出しているからだ。
その間に何もしないということはない。俺は河原で火を起こしながら竿を振る。ガーネットが上がってきた時に乾かすために必要だし、魚が釣れたら焼いて食べるつもりだからだ。
「わかりました、がんばります」
ガーネットは素直に俺の注意を聞くと、真剣な顔をして水面を見つめる。
そして苔がある巖を持ち上げると、
「うんしょっと」
そのまま河原まで持ってきた。
「やっぱり地面がある場所の方が採りやすいですね」
ナイフを取り出すと巖から苔を剝がして瓶に詰めていく。今日の依頼はこの瓶一杯の苔を集めることなのだ。
普通なら瓶を腰につけて削いだ苔をれるのだが、巖ごと運ぶとはなかなか大膽な採取方法だ。
「今日は流石にモンスターもいないとおもうので、安心して苔を採取できますね」
ガーネットはそう言うと、張り切って苔を剝がし続けるのだった。
「んー、ティム先輩が釣って下さったお魚味しいです」
頬に手を當てて幸せそうに魚を食べるガーネット。貴族の娘ということもあってか、こういった食事は苦手だと思っていたが、どうやら先観があったようだ。
曲がりなりにも冒険者を半年続けていたのだから、釣って焼いた魚をその場で食べるということにも忌避がないらしい。
小さな口ではむはむと魚をついばんでいる。
あれから、あっという間に目標の苔を手にれた彼は、濡れたローブを乾かすために火の前に陣取った。
その時には俺も自分が釣った魚を枝に刺して焼いていたので、ちょうど良いとばかりに飯にすることにしたのだ。
「そういえば、言い辛かったら答えなくてもいいんだが」
「なんでしょうか?」
ガーネットが首を傾げる。
「前のパーティーで半年やってこれたんだよな? どうして外されたんだ?」
曲がりなりにも治癒魔法は使えるようなのだ。どうしてこのタイミングで追放されたのかが気になった。
すると、ガーネットは食べかけていた魚を下し、火を見つめる。
「嫌なことを思い出させたようだな、忘れてくれ」
これはよほどの目に合ったのだと察する俺は、ガーネットにそう言う。
「いいんです。ティム先輩には聞く権利がありますから」
そう言って俺を見たガーネットの瞳は潤んでいて悲しそうだった。
「私のいたパーティは男3人2人の5人組だったんです」
靜かな聲で語り始める。
「私は治癒魔法が使えたので回復役としてっていたんですけど、一向に上達せず仲間の足を引っ張っていたんです」
火が揺れて彼の瞳の中でいた。
「それでも一生懸命に働いていたんですけど、ある日パーティーメンバーの男の人たちから告白されたんです」
「人たちってことは一人じゃないんだな?」
俺の問いにガーネットは頷く。
「パーティーにいる三人に同時に告白されました」
「そりゃまた……」
気まずいことこの上ない。
「私はその告白を斷り、それからもパーティー行をしていたのですが、次第に彼らの態度が変化したのです」
魚を持つ手がギュッと閉まる。
「最初は個別に食事にうようになってきて、次第にエスカレートしていきました」
俺は黙って続きを促す。
「そして、つい最近になって『もしパーティーに殘りたいのなら俺と人になれ』と言われたのです。それを私は拒否しました」
なるほど、戦力としていまいちだったが、男連中はガーネットに好意を抱いていたからこそ追放しなかったということか。
彼の瞳が揺れているのは焚火の揺れのせいではないだろう。不安そうな目で俺をじっと見る。ガーネットからすると俺も男なので信用できない可能もある。
ガーネットの告白を聞いた後、俺はどう答えて良いかわからず沈黙するしかなかった。
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