《【書籍化】Fランク冒険者のり上がり、俺だけができる『ステータス作』で最強へと至る【コミカライズ】》襲撃者
「よし、今日の依頼も終わりだ。お疲れ様」
ガーネットの面倒を見るようになってから一週間が経った。
「ありがとうございます」
これまでの間、ガーネットは街の外での採取依頼をこなして、著実に実績を積み重ねていた。
「それじゃあ、明日と明後日は休みにするからゆっくりと休めよ」
サロメさんから休みはしっかり取るように言われている。そこだけは破らないように俺はガーネットへと言い聞かせる。
「そ、その……。ティム先輩。明日は休みということですので、もし良かったら……」
「うん、何か言ったか?」
俯いてぼそぼそと何か話しているようだが聞こえない。俺は聞きかえすと、
「えっと、その……」
慌てた様子を見せてきた。俺は首を傾げてみせる。
「とりあえず平気そうなら俺は行くから」
「あっ!」
後ろからガーネットの呼び止めるような聲がするが、これ以上は待っていられない。
なにせ、俺の冒険はこれからなのだ。
「夜からの方が不思議と捗るんだよな」
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時間が限られているせいか、人気がないせいでモンスターの湧きが良いからか短い時間で度がある狩りができる。
俺は裝備を見直すと、ダンジョンへと向かうのだった。
「ふぅ、今日も良いきをした」
気分よく狩りを終えた俺は一層まで戻ってきた。
「それにしても、不思議と普通にレベルも上げられているんだよな」
夕方まではガーネットの指導、その後はダンジョン籠りというメリハリがついているのが良いのだろうか?
今までとそれほど変わらずレベル上げができていた。
彼に付き添うことでダンジョンに籠るストレスをリセットできるのか、レベル上げのための狩りをあまり苦痛にじなくなっていたお蔭かもしれない?
気が付けば戦士のレベルも36まで上がっており、ここから先が辛いレベル帯なのだが今は不思議と心にも余裕がある。
「明日と明後日は休みだからゆっくりするか」
好きなだけ食べて、好きなだけ眠り、好きなだけ本を読んで過ごす。
そんな風に休日の過ごし方を考えて浮かれていると……。
「ん?」
目の前に誰かが立っていた。
視界がぼやけて相手の正がはっきりしない。
どうやら認識阻害の魔法もしくは同等の効果を持つ魔道を使っているらしい。
「そこを通してくれないか?」
そいつが立っているのはダンジョンから出るためには必ず通らなければならない通路だ。俺はそいつに道を譲るように語り掛けると……。
「むっ?」
そいつは無言で剣を抜いた。
「俺は通してくれと言った。どういうつもりなんだ?」
こうなっては爭いは避けられないだろう。俺も剣を抜き相手のきに注意を払う。
「……警告だ。手を引け」
聲の質も変わっているので別すらわからない。認識阻害に加えて聲まで変えてくるとなると、よほど正を知られたくないのだろう。
「なるほど、俺がガーネットを一人前の冒険者にしてしまうと困るわけだ?」
順調に依頼をこなす彼の様子をみて、例の貴族が人を雇ったというところだろう。
カマをかけてみたのだが、目の前の人は肯定も否定もしなかった。
ただ、さきほどまでよりも圧力がます。ともすれば圧倒されてしまいそうになる。
「やる気満々ってわけか……」
さきほど懐中時計で確認したところ、深夜を回っている。
こんな時間にダンジョンに潛っているようなのは俺を除くと極わずか、こんな低層をたまたま通りかかることは期待できないだろう。
相手との距離を保つふりをする。
もし、こいつが俺の報を持っているのなら俺の攻撃手段を魔法だと思っているはず。
現在の職業は戦士なので、接近戦でも十分に戦えるはず。
迂闊に距離をめてきたときが最後、無力化してやればいい。
俺が相手の出方を窺っていると、次の瞬間剣先が下がった。
――ギイイイイインッ!!――
「うっ!」
咄嗟に剣を上げた判斷は正しかった。剣先が下がったかと思った瞬間、流れるように剣がくと左側の死角から首元を狙って斬りつけてきた。
「は、速い!?」
油斷していたわけではない。それどころかいつ仕掛けてくるかをずっと見ていたはずだ。
それにも拘わらず、この襲撃者は目にも止まらぬ速度で攻撃してきた。
「もう一度だけ言う、手を引け」
同じ言葉だというのに、さきほどよりも恐ろしく冷たい聲に聞こえる。
「斷る。俺はガーネットをお前たちに渡すつもりはない」
目の前の人ではなく、雇い主に伝わるように意志を表明した。
それが最終通告だったのだろう、襲撃者の気配が変わった。
「おっと、簡単にはやらせないからな……『ファイアーウォール』」
「なにっ!」
通路を塞いでいたことが災いしたな。俺は炎の壁を奴の目の前に出すと足止めをする。
「小癪な……『インパクト』」
次の瞬間、発が起こり俺が張った炎の壁がかき消えた。
「『スピードアップ』『スタミナアップ』『パワーアップ』」
だが、元々時間稼ぎの足止めなので問題ない。
襲撃者を止めている間に、俺は魔法とスクロールを使って能力を強化しておいた。
「これで奴ともやり合える」
炎の壁を取り払いこちらに迫ってくる。
「『ウインドアロー』」
牽制として風の矢を放つ。
風の矢は炎や氷と違って見辛い。
流石の襲撃者もすべてを見極めることができなかったのか矢がを掠めた。
「さらに『アースウォール』」
間髪れずに土壁を生み出す。あくまで主は魔法という印象を與え、距離を取りたがっていると認識させているのだ。
「『インパクト』」
だが、俺が張った土壁は奴のスキルの前に一瞬しかもたせることができず砕け散った。
次の瞬間、奴が懐へとり込む。
「終わりだ」
至近距離で目が合うと、
「それはこっちのセリフだ! 『バッシュ』」
「なにっ!」
まさか俺が戦士のスキルまで使えるとは思っていなかったのだろう。
「くっ!」
ステータス強化された後の『バッシュ』をまともにくらい後ろに下がると膝を突いた。
「とりあえず、冒険者ギルドに引き渡すか」
サロメさんに引き渡せば上手く処理してくれるだろう。俺が襲撃者の顔を見ようと近付くと……。
――ズブリッ――
『…………バックスタブ』
背中に痛みが走り、足元がふらつき倒れてしまう。
「なん……だ……と……?」
通路側をずっと見ていたので敵はこいつ一人だと思いこんでいた。だが、最初から別な場所にも潛んでいたらしい。
「まったく、ざまぁないっすね」
愉快そうな聲が聞こえる。
「俺一人で十分だと言うから控えていたのにまさか返り討ちに合うなんて」
「……黙っていろ」
表は見えないがその聲で憎悪が伝わってくる。
に力がらない、攻撃と同時に毒でも盛られたのかもしれない。
「しかし、ここまで剣も使えるとか……聞いてた話と違うじゃないっすか」
背後からの襲撃者はおどけてみせる。
「それでもまあ、こうなっちゃお終いっすけどね」
視界に短剣が輝くのが見えた。止めを刺すつもりだろう……。
これが振り下ろされる時、俺の命が刈り取られる。
そんなことを考えながら見ていると……。
「何をしているんですかっ!」
「ちっ! まだダンジョンに人がいたんすか……」
「致命傷だ、どの道助からない」
二人の襲撃者は素早く判斷を下すと引き上げていく。
「ティム君、しっかり! しっかりしてっ!」
「ティムさんっ! 死なないでくださいっ! お願いですっ!」
誰かが俺の名前を呼んでいる。
俺はそれに答えることなく、何とか手をかすと……………………。
そのまま意識を失うのだった。
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